閑話 三歳のとある日

 ◆クロウティア3歳のとある話①◆


 今日は俺の3歳の誕生日だった。


 この世界では誕生日はあまり祝ったりはしないが、5歳と10歳と15歳の誕生日は盛大に祝うという。


 5歳の誕生日はその人の人生が決まると言われている職能開花する日だからだ。


 3歳になった俺はお母さんより「せっかくのクロウくんの3歳の誕生日だからみんなで祝いましょう!」の一言で、ちょっとしたパーティーになった。


 最近分かったんだけど、俺の食べる量は大分多いみたいだ。


 前世では碌にご飯が食べれなかったからかな…………。



 目の前にたくさんの食べ物が並ぶ。


 屋敷では専属料理人が作っており、どの料理も美味しくて幸せになる。


 前世ではご飯って腹一杯食べれなかったから、この世界では腹一杯食べて幸せになる。とてもありがたかった。


「おかあさん、おとうさん、おにいさん、おねえさん、ありがとうございます!」


 そこからはテーブルの上に上がっている料理を片っ端から食べていった。


 以前はみんな「そんなに食べれるの!?」と驚いていたけど、今ではすっかり慣れて言われなくなった。


「おかあさま? くろうからおかあさんっていわれるのはどうしてなの?」


「うん? セレナちゃん、どういうこと?」


「おかあさまとおとうさまは、とてもえらいひとだから、おかあさまのことはみんなおかあさまっていうけど、くろうだけおかあさまのことおかあさんってよぶから」


「あぁ、私をお母さんと呼ぶか、お母様と呼ぶかね? でも私は正直どちらで呼んでくれてもいいわよ? クロウくんもセレナちゃんもライくんもデイくんもみんな好きな呼び方でいいのよ?」


「うん! わかりました! でもわたしはおかあさまのこと、そんけーしてるからおかあさまはおかあさま!」


「ふふふっ」


 お母さんが優しく微笑む。


 呼び方は…………考えた事もなかった。


 俺はお姉さんの事、お姉ちゃんと呼んでみたいな。


「ぼくは…………おねえちゃんがいいな…………」


 何となくお姉ちゃんの方が身近に感じる気がした。


「えっ、くろう? いまおねえちゃんっていった?」


「あっ、ごめんなさい、なんでもないよ!」


 顔をじーっと見てくるお姉さん。


「うん、やっぱりうそをいってるくろうのかおだ! わたしもおねえさんよりおねえちゃんってよんでほしいな!」


「えっ! それなら僕の事もお兄ちゃんって呼んでよ!」


 とライ兄さんが話すと、続けてデイ兄さんまで「僕も!」と話した。


 これからお姉さんお兄さん達の事はお姉ちゃん、お兄ちゃんと呼ぶ事になった。


 今までは前世の事を引きずっていたから、ずっと自分を俺と言いそうになるけど、3歳児だし、これからはちゃんとクロウティアとしての自分になろうと思う。




 ◇




 ◆クロウティア3歳のとある話②◆


 僕の3歳の誕生日から一か月程過ぎた。


 来年、お姉ちゃんの5歳の誕生日がある。


 その時、僕としてはお姉ちゃんに何かしら贈りたいなと思った。


 何か良い方法がないかと色んな本を読むことにしている。


 その中で気になる物があった。


 とある魔法使いの本で、『ゴーレムを作る』というものだ。


 ゴーレム! 色んな形状があるらしく色んな形のゴーレムの絵が載っていた。


 それを見たときに閃いた!


 お姉ちゃんの誕生日はこれだ! と。


 


 まず土属性魔法で土を作る。


 そのまま土を人形の形へ変形させていく。


 あんまり上手くはいかないけど、作れるようにたくさん練習しよう。


 土属性魔法で練習をしていると後ろから声が聞こえてくる。


「クロウ様、土遊びでございますか?」


「リーナさん! 遊びじゃないよ、お姉ちゃんのお誕生日の贈り物を作る練習だよ!」


「あら、それは大変失礼しました。それにしても上手いですね」


「う~ん、ここの服の部分とかまだ難しくて。何か絵とか見れたらいいんだけど…………」


 そう言うとリーナさんが少し考え込む。


 何かを思い出したかのように部屋から駆け足で出掛けた。


 数分が経ち、リーナさんが帰って来る。


「クロウ様、こちらはいかがですか?」


 リーナさんが持ってきたのは、お姉ちゃんも大好きな女英傑の物語の本だ。


 その表紙には女英傑さんの姿が描かれている。


「その本! お姉ちゃんの好きな本だ!」


「そうです。せっかく贈り物を作るのでしたらセレナ様にこの衣装がとてもお似合いと思いまして」


「うん! 凄く良いかも! リーナさんありがとう!」


「いいえ、何かございましたら何でも相談くださいませ」


 その日から僕は毎日のように土人形作りに没頭するのだった。



 







※能力等の設定


 ◆能力値


 力 = 物理攻撃力

 素早さ = 身のこなし速度、反応力も一緒に上がる

 器用さ = 操作、作成系統の行為全般に影響する

 耐性 = 物理防御力

 魔力 = 魔法攻撃力

 精神 = 魔法防御力及び回復魔法力


 ◆能力値の補正値


 各種族ごとに基本ステータスが決まっており、レベルが上がる度に基本ステータスの分増えていく。


 例)人間種族は全基本ステータスが10である、レベル45になった人間は全ステータスが450になる


 そして基本ステータスに職能補正値が掛け算になる。


 例)人間種族レベル45の魔法使いと剣士の場合


 力 450*0.5

 素早さ 450*1

 器用さ 450*1

 耐性 450*0.5

 魔力 450*2

 精神 450*1


 力 450*1.5

 素早さ 450*1.5

 器用さ 450*1

 耐性 450*1

 魔力 450*0.5

 精神 450*0.5


 下級と中級で二倍、中級と上級で三倍程差が広がるという。

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