第12話 セレナディア・エクシア

 色んな魔法や『エアコン』を試行錯誤しながら、二年が経った。


 そして、遂にこの日がやってきた。


 セレナディアお姉ちゃんの5歳の誕生日だ。――――つまり職能開花する日なのだ。




 本日の屋敷内は、ここまで一番バタバタしている。


 職能開花の5歳の誕生日と言うのは、この世界で最も大事にされている行事なのだ。


 平民であってもこの日は家族全員が休み、子供や兄弟を祝うのが習わしだ。


 僕の家はエクシア家でグランセイル王国の三大辺境伯の一角なので、それはもう大きい行事となる。


 特に本日のお姉ちゃんこと、セレナディア・エクシアはその美貌から国内外に非常に有名人なのだ。まだ5歳なのに。


 そんなお姉ちゃんの誕生日の事もあり、それはもう祝い品が引っ切り無し届くのだ。


 実はこの職能開花の日と言うのは、家族だけで祝うのが基本となっている。


 何故なら、職能開花で開花した職能によっては、国を揺るがしかねない職能も存在するからだ。


 例えば、魔法使い系列の最上級職能は、かの有名な『賢者』だ。


 もし『賢者』が生まれたりしたら、他国のスパイ等に命を狙われたりもする。


 だから職能開花の日は家族だけで職能の秘密を抱え込むのが一般的だ。


 それに貴族ともなると味方や敵も多いから尚の事、秘密主義なのだ。


 では、いつ公開するのか。


 それは10歳の誕生日会に公開する。


 その理由は職能開花は5歳の時に開花するのだが、その時の開花はまだ完全ではないらしい。


 10歳の誕生日の日に、二度目の開花をする。この時は一回目程の開花はしないが、場合によっては大きく開花するそうだ。


 職能開花でもう一つ大きな事は、職能だけでなく、知性も関わる。


 この世界の人間は15歳から大人と見られるようになる。


 それは5歳、10歳、15歳の誕生日ごとに知性が成熟するからだ。


 特に5歳と10歳の誕生日は大きく知性が上がるから、この世界の子供は前世の日本よりも早熟だ。






 夕方前にお姉ちゃんの誕生日会が始まった。


「セレナ! お誕生日おめでとう!」


 お父さんの掛け声から、みんなで「おめでとう」を伝える。


 職能開花の日との事で少し心配そうな顔をしているお姉ちゃんだけど、みんなからの祝いですぐに笑顔になった。


 うん、うちのお姉ちゃん、世界一可愛い。


「もう少しでセレナちゃんの生まれた時刻だわ。そろそろ職能開花だから気を引き締めなさい」


 お母さんの言葉で笑顔だったお姉ちゃんの顔が引き締まる。


 そして、少しして職能開花は始まった。


 目を瞑っているお姉ちゃんの身体が少しずつ光り始める。


 数秒程光った後、光が無くなり、お姉ちゃんが目を開ける。




「ちゃんと職能開花しました。お父様、お母様、お兄様、クロウティア、ありがとうございます」




 何処か凛々しくなったお姉ちゃんがみんなに感謝を伝える。


「おめでとう! セレナちゃん!」


 お母さんの祝いと共に、再度みんなが祝う。


 一通り、祝いが終わった。


 そしてここが本番が始まる。


 お父さんが重い気持ちで口を開く。


「それで、セレナディア。どんな職能が開花したのかい?」


「はい、お父様。私の職能は――――――」


 みんなが緊張感を感じながら、お姉ちゃんの言葉を待つ。


 お兄さん達二人は『剣士』の職能を授かった。


 この世界の大半の人は、貴族も含み『ノービス』という職能を授かる。


 この『ノービス』という職能は、普通を現しているとのこと。


 つまり、逆に言えば『ノービス』以外の職能は全て当たり職能という事になる。


 『ノービス』率は九割以上との研究もされている。


 そして剣士系統上級の『上級剣士』の職能を持つお父さんと、その息子二人が『剣士』。


 まだ発表はしていないが、これを発表すると奇跡と言われかねないほどに恵まれた結果だそうだ。


 そんな三人が剣のセンスがあると話すお姉ちゃんは、職能が開花する前から剣術を勉強している。


 《天の声》さん曰く、幼い頃から剣術を練習したとしても『剣士』にはなれないらしいが…………全ての職能は生まれつき決まっているから、そのあと何かを開花して、稽古を続けたとしても職能が変わる事はない。


 それほど重要な職能開花結果の重い空気の中、遂にお姉ちゃんが口にした。


「私が開花したのは――――――















 『剣聖の証』です」




 お姉ちゃんの言葉にお父さんお母さんお兄さん達は驚き、その場で立ち上がる。


 四人とも驚き過ぎて目が点になっている。


「お姉ちゃん! おめでとう! 職能開花おめでとう!」


 僕がそう話したのを皮切りに、お父さんお母さんが涙を流しながらお姉ちゃんを抱きしめ祝ってあげた。



 『剣聖の証』

 職能『剣聖』の前段階職能。

 剣聖の職能が強大な力の持つ為、その力を半分にし、成熟させる職能。

 五年後、必ず『剣聖』に開花する。



 《天の声》さんの情報によると、もう『剣聖』は確定らしい。


 剣士系統の職能は全部で四種類あり、下級『剣士』中級『中級剣士』上級『上級剣士』最上級『剣聖』の順だ。


 中級剣士から進化し、上級剣士になる場合もあれば、違う進化をし、魔法剣士に進化する場合もあるが、そもそも進化を成しどけた人は殆どいない。


 上級剣士から剣聖に進化出来た人は歴史上、片手で数える程しかいないという。


 つまり、うちのお姉ちゃんは世界一可愛いのに、職能も最高峰の剣聖、もう世界一お姉ちゃんなのだ!




 ◇




 ◆セレナディア・エクシア◆


 たった今、私は職能開花を果たした。


 あの日、最愛の弟を守りたい、そう願い剣術稽古も懸命に取り組んできた。


 それが功を奏したかは定かではないが、職能開花した私の職能は『剣聖の証』という職能だった。


 剣士系統職能では最高峰の職能だ。


 これで弟を守れると思うと、とても嬉しい。


 あの弟は私から見ても、既に規格外な存在だ。


 2歳にして魔法を使い、魔法も一つや二つではなく、魔法使いの中でも最高峰と言われている氷属性魔法まで使える。


 私の知っているだけで回復魔法、氷属性魔法、風属性魔法、水属性魔法、土属性魔法、空間魔法が使える。しかも、高水準で。


 だから、そんな弟に負けないように守れるような力が欲しかった。


 その願いが叶い、私は無事『剣聖の証』として生まれ変われた。


 でもこれで安心するのはまだ早い。


 来年はあの弟の職能開花がある。


 それに私はまだ『証』で、まだ『剣聖』になれていない。


 だから明日からも稽古を頑張らなくちゃ、守る為に、私はそう誓ったのだから。




 両親が涙を流しながら抱き締め祝ってくれたのはとても嬉しい。


 お兄様達も心の底から祝ってくれて嬉しかった。


 そんな両親からプレゼントとして、ミスリルで作った剣を贈ってくださった。


 剣にはエクシア家の紋章が入っており、握った感触と直ぐ馴染む程の名剣だ。


 今日この日の為に、去年から一級鍛冶師に頼んで作って貰ったみたい。


 これから大事なものを守る為に大事にします。


 そして弟が恐る恐るとあるものを手渡した。


「お姉ちゃん! お誕生日おめでとう! これは僕からのプレゼントだよ!」


 そう言って渡されたのは、私の姿をしたお人形だ。


 先日から弟が土魔法で土人形を作っていたのを見かけている。その出来栄えは一級職人にも等しい出来栄えだった。


 今日貰ったその土人形は、細かい部分まで全て再現されており、私が大好きな英傑物語の本の絵と同じ格好をしている。


 出来栄えは勿論最高峰なのだけれど、出来栄えを置いといても弟からのプレゼントがとても嬉しい。


 この人形は私の宝物にすると決めた。



 名前 クロウティア・エクシア

 年齢 4歳

 性別 男

 種族 人族(幼)

 職能 未開花

 レベル 1

 HP 35/35

 MP 850/850

 力 10×0.1=1

 速 10×0.1=1

 器用さ 10×0.1=1

 耐 10×0.1=1

 魔力 10×0.1=1

 精神 10×0.1=1


 『レジェンドスキル』

  #&$% 、#!$&


 『魔法系統スキル』

  下級回復魔法、火属性魔法、水属性魔法、風属性魔法、土属性魔法、氷属性魔法、雷属性魔法、空間魔法


 『スキル』

 痛覚軽減レベル10、睡眠耐性レベル9、感情無効、言語能力、魔法強化レベル3、多重魔法発動、魔法調整

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