第119話 狂い燃える炎、相対すは正義の心 その壱
「いひ、ひひひっ!ははは!!!」
暗がりの中で燃える炎は、その勢いをまして更に強く燃え上がる。
「きた…、きたぜぇ…!」
「はい、現在街中に入ったと門番から知らせがありました」
銀の聖杯の上で燃え盛る炎にそう伝える人間が1人。
その視線の先には人物は居ないはずなのだが、声は炎そのものから響いてくる。
「あぁ、分かってる…。そいつの人柄を今すぐ黒づくめたちに報告させろ。俺が世界一楽しいSHOWにしてやるからよぉ…。ひひっ」
燃える炎は今までにないほどに力を増して、燃え盛る。
その炎を止める術はもう、どこにもない。
―――
白色の塔、それは神聖国内で1番巨大な建物で、この建物を中心として神聖結界が張られているようで神聖力がますます力を増している。
「ふっ、まるで完全要塞だな。魔なる者を全てを寄せ付けないという意思が感じられる」
確かに、この神聖力は異常な力を発している。
こんな神聖魔法を扱うのは俺でさえ無理だ。
それをこんな継続して張るなんて…。
ついに、俺より強い魔法使いが現れるのか…。
「気配隠蔽を使うんじゃ、さっさと乗り込んで一番偉い奴に会いに行こう」
俺たちは白色の塔へと向かった。
白色の塔の目の前についたが、入るには入口の門番をどうにかしなきゃ行けないな。
俺たちは視線を合わせて頷く。
その数瞬後、フェルが石を投げつけて門番の意識を逸らす。
その瞬間に、ダーグが手刀で気絶させて早急に塔内へと侵入した。
中に入ると階段だけがそこにはあり、ほかは何も無く真っ白な空間が広がっていた。
俺たちはそこを駆け上がり、上へ上へと目指す。
そして、数十分階段をあがり続けたとおろで、大広間に出た。
「おや、もう来ましたか。お早いですね」
そこには神官のような服を着た高身長の男が立っていた。
「あんたは?」
「私はちょっとした神聖魔法を扱う魔法使いですよ」
ドンッ!!
意識外から鈍い音がして、後ろを振り返る。
そこには神聖魔法で縛られているフェルとジェンドマザーが苦しげな表情をしていた。
「まずは、2人を始末させてもらいますね」
穏やかだが、その奥に殺気を隠しているような、どこか不気味な声でそう言い放つ神官。
「
直径2メートル程の聖なる光に包まれた槍が2人の上空に生成される。
その槍は心臓を貫くように加速度を増して突進する。
「させると思うのか?」
この半年、使う機会はなかったが使用する魔法の強化は全て一律にしてある!
今なら八源厄災の攻撃だって受け止めきれるだろう。
金剛石の要塞に弾かれた聖なる槍は光の粒子となってその場から消える。
「ほう?流石は
弾かれたというのにその男からは余裕綽々とった様子で俺の魔法を観察する。
「………」
「ふふっ、意外と小賢しいのですね。ですが、こんな小さな水玉で私は殺せませんよ」
チッ、
水玉を魔法の結界で防いだ神官は不敵な笑みを浮かべる。
「こんなのはどうでしょうか」
そう言うと、神官は突然北東の方角へと体を回れ右させるととてつもない魔力を収束し始めた。
「何をやっている」
「ふふっ、この方角には何がありましたっけ」
北東…、まさか王国か…?
だが、これだけの距離が離れている王国を潰す魔法なんて撃てるのか?
「なにやってる!早く攻撃だ!」
ダーグはそう叫ぶと
…そうだ、2人の八源厄災を同時に沈めようとした男だぞ?
そんなことが出来ても不思議じゃない。
「20連アクアストーム!」
ダーグが引いた瞬間に、20個の上級魔法全てが神官に向かって殺到する。
だが…。
「凄いですね、まさか20個の上級魔法を同時に放つなんて。間違いなく魔力量は世界一位ですね」
そう言う神官だが、体には一切の傷が着いておらず、未だに魔力を溜めている。
あれだけの魔力を集めているというのに、上級魔法20個を軽々と打ち払う力まであるのか…!
「では、サヨウナラ…」
「クソッ!まて!!」
「――王国よ、大陸から姿を消しなさい」
途方もない魔力の塊が神官から放たれる。
その途端、神官は姿を消した。
「ノア、あれはかなり不味いぞ。我たちが全力で止めようとしても止めれるか怪しい」
いつの間にか神聖魔法が解けたのか、体が自由になったフェルたちが集まる。
「…やるしかないだろ」
「…ふっ、王国が無くなったら悲しいしな」
「うん!アルトルとか死んじゃうし!」
「いっちょ、王国を救うか」
俺たちは途方も無い魔力の塊を追いかけて、空に駆け出した。
―――
「やりすぎでは無いか?俺の楽しみがあれで消えたらどうするんだ」
「いえ、消えませんよ。恐らく止めるでしょう」
再び暗がりにて話を進める炎と神官の男。
「基本的にはノアという悪魔王を祓った少年が指示を出しているようですが、それを補助するように銀髪の少女、そして後のふたりはそれに従う、といったところでしょうか。ノアは仲間思いのようで、神罰の槍からも億さず仲間を守っていました。そして、王国に放たれた私の魔法、それを追いかけて行ったところを見るに、彼はそうとうお人好しのようです」
「ふっ、そうか。それは使えそうだなぁ」
聖杯に燃える炎は一瞬人間の口を模した模様になり不敵な笑みを浮かべたのだった。
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