14話 勇者との戦い
「ありがとう」
了承したことでオリバーが礼を言う。そこでオリバーの意識がなくなったのが分かる。俺が言ったことについてルビアが驚きながら聞いてくる。
「ノアどう言うこと! オリバー様を殺すって」
「今すぐ殺すわけじゃない。でも最終的には殺すことも考えた方がいいってこと。オリバーの意識があるうちに了承しなかったらあいつはどう思う? 安心していられるか?」
俺がオリバーの立場で仲間を殺す可能性がある状況であったとして、殺すことはできないなんて言われたら安心できない。もし意識を取り戻した時仲間が死んでいたら? 絶望しかないと思う。その後の人生が生き地獄になるのは明白だ。だったら殺すと言ってあげた方がいい。そして助けられるなら助ける方針にした方がいい。まずはオリバーのことを考えるのが最優先だと思う。
「...。じゃあまずはオリバー様を助けることが最優先ってことだよね?」
「あぁ。でも最優先は違う。全員が生き残ってローリライ王国に戻ること。それが最優先事項だ」
「それにオリバー様は含まれてる?」
「...」
オリバーのことだって含めたい。でも今の状況で一番脅威になっているのはオリバーである。その時点で一緒に戻ることを最優先事項に含めるわけにはいかない。
「まずは戦うフォーメーションを決めよう。俺とアレックスが前衛。マリアが中衛。ルビアが後衛ってことでいいか?」
全員が頷いて納得してくれるが、心の中ではまだ納得していないようだった。
(俺だってそうさ)
でもできることとできないことを明確にしていかなくちゃいけない。そこにかもしれないは含まれない。含んでしまったらできることすらできなくなってしまうかもしれない。それだけは一番やってはいけないことだから。
俺とアレックスがオリバー相手に戦い始めようとした時、マリアが俺たちに身体強化をかけてくれる。
「これで戦いやすくなったと思うわ」
「「ありがとう」」
身体強化をしてもらったおかげで体が軽くなった。実感している時オリバーが俺たちに攻撃を仕掛けてくる。
「アレックスは正面から頼む。俺はアレックスのカバーとオリバーの背後をとる」
「わかった」
俺の合図と同時にアレックスがオリバーと戦い始める。アレックスがさばききれない攻撃は俺がうまく対処する。それでもギリギリの攻防だった。
(クソ)
一撃一撃が重く、剣を振る速度も速い。俺たち全員体力面、身体面がギリギリの状況。そんな中で戦っているため、アレックスが防戦一方になっていくのが明白だった。
今のところアレックスのカバーを俺とマリアで行って、ルビアがオリバーを観察する方法で戦っている。三対一ですら防戦一方になっていた。
(考えろ)
どうすればいい。現状を打開する方法を考えろ! 後数分経ってしまったらこの状況が崩れるのは明白だ。そしたらもう最終手段に出るしかない。
オリバーが俺を嫌っているように俺だって嫌いだ。追放されて、侮辱されて。それでもあいつには感謝している面だってある。だったら生きて文句の一つでも言ってやりたい。
そんな時、アレックスが膝をつく。そこを突くようにオリバーがアレックスを狙って攻撃をしてくる。俺は自分の身を挺しながら守る。
「サンキュー...」
「あぁ」
クソ。もう殺るしかないのか? もうこれしか方法がないのか? そう思った時、ルビアが
「オリバー様がつけている指輪は何なんですか? 先ほどからずっと紫色に光っていますけど」
言われるまで気づけなかった。言われてみればそうだ。この前決闘したときは指輪なんてつけていなかった。するとマリアがエリア魔法---鉄壁を使って時間を稼ぐ。
「確かギルドでおばあさんに話しかけられて渡されていた」
「あぁ。確か気持ちが力になるとか言ってた気がするな」
二人の言葉で少しばかしわかる。多分俺を嫌う気持ちが力になっているのかもしれない。だったら...。
「あの指輪を壊そう。最悪指を切り落としてもいい」
「でも指を切り落としたら...」
ルビアが言いたいことはわかる。でもそんな状況じゃない。
「もうそんなこと考えていられる状況じゃない。それに聖女の魔法---
「まだ私は使えないわよ」
「そんなのその時になったらでいいだろ! 今は目の前のことを考えろ。最悪指一本とあいつの命。どっちが大切か」
すると全員が決心がついたような顔つきになるのが分かった。
「じゃあ始めるぞ」
俺の言葉と同時に攻め始めようとした時指輪が光出してオリバーが話し始めた。
「あらら。指輪ってバレちゃったわね。あなたたちがいないときにでも渡せばよかったわ」
誰が話しているんだ? オリバーじゃないのだけはわかる。
「まあバレちゃったのはしょうがないわね。じゃあ一人でも多く殺そうかしら」
先程とは違い、ものすごい速さでこちらにやってきて攻撃を仕掛けてくる。対応できるのが俺だけだったため、オリバーの攻撃を対処する。
(重い...)
比べ物にならないほどの重さ。そして動く速さ。
(クソ)
このままじゃ5分もたたずに全滅する。だったら...。いや、まだだ。まだやれることはあるはずだ。
「アレックス、マリア、ルビア! 一分でいい。時間を稼いでくれ」
「「「わかった」」」」
そして魔法を詠唱し始めた。
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