13話 洗脳
ルビアと屋敷内でアレックスたちを探すが見つからない。
「いないけど...」
「なんでだろう」
屋敷入り口に着くと戦いの痕跡が残っていた。あたり一面崩壊寸前であった。衝撃で床に穴が開いていたり、焼け焦げた跡。
(無事であってくれ)
俺の中でアレックスとマリアに対する気持ちが変わりかけていた。俺を認めてくれて、率先的に助けてくれたアレックス。最初こそ嫌そうにしていたが、結局は助けてくれるマリア。二人が居なかったらルビアを助けることはできなかったと思う。だからこそ二人を助けたいと思った。
ルビアとともに屋敷を出ようとした時、二人の声が聞こえた。
「オリバー! 目を覚ませ」
「私たちが分かりませんか?」
「...」
どういう状況かわからない。でも早く向かわなくちゃいけないのはわかる。ルビアと急いで屋敷を出る。するとアレックスとマリアはボロボロになりながら立っていた。二人に叫びながら問いかける。
「二人とも大丈夫か!」
「あぁ。ノアの方こそルビア様は...。無事そうだな」
「良かった..」
二人とも安堵した表情でこちらを見てくる。
「オリバーはまだ...」
「一言も話してくれねー。なんでなんだ?」
「ええ。いつものオリバー様じゃない」
オリバーの方を見るが、ただただこちらを見ながら立っていた。
(なんなんだ?)
二人が言うようにオリバーがオリバーじゃないことが分かる。いつものオリバーならここで俺に一つでも文句を言ってくるはず。なのに何も言ってこないでこっちを見てくる。そして俺たちに向かって光の太刀を放ってくる。
ルビアを守りながら衝撃波を受け流す。
「オリバー。目を覚ませ!」
「...」
普通話しかけたら少しだけでも反応するはずなのに反応がない。
(??)
頭に二つのことが思い浮かぶ。オリバーが洗脳されているのか、オリバーがオリバーでなくなってしまったのか。もし前者なら助けようがある。だけど後者なら...。もしかしたら俺と同じ状況になっているかもしれない。人を人だと考えられない。誰でもいいから殺したい。そこまで来てしまったら助けるのは難しい。
俺はルビアが居たからギリギリのところで助けられた。でもオリバーはどうなんだ? そううまく行くのか?
「オリバーと戦っていて二人ともどう思った?」
「強いとしか...」
「違う。あいつ自身をだ」
「オリバーがオリバーじゃない気しかしない」
「うん」
「それはオリバーの感情が無くなっている感じか? それともオリバーじゃなくて他の誰かになってしまった感じか?」
するとオリバーは俺たちに攻撃を仕掛けてくるのでアレックスが対処する。その間にマリアと話す。
「誰かに操られていると思う。オリバー様の魔力じゃないのが流れていると思う」
「...。なんでそんなことわかるんだ?」
マリアと俺の実力が離れているとは思えない。だったら実力差でわかるとは考えれない。だとしたら俺が知りえない魔法があるのかもしれない。
「聖女の
「そんな魔法があるのか...。1種類だけって他属性の魔法ってことはありえないのか?」
「それはないわ。生きている生物には基盤となる魔力がある。そこから属性の変化を行って魔法を繰り出すわ。だから他属性とかで判別できないことはないわ」
「そうか」
その時、アレックスが倒れる。
「!」
すぐさまアレックスのもとに行って助けに入る。オリバーの攻撃がこの前戦った時より重くなっているのが分かる。こんな短期間でここまで強くなれるはずはないと思う。実力が開花する時はある。だけどこれは違う。一撃一撃の攻撃が強くなるって言うのは一朝一夕で身につくわけではない。時間をかけて徐々に強くなる。それなのに今のオリバーは剣の振る速度、威力が今までとは違う。
そこで一つ思いつく。
「ルビア! 俺に使った魔法をオリバーにも使えないか?」
「え? でもあれは偶然できたことで...」
「頼む。時間は稼ぐから!」
もうこれしかないと思った。俺があの時助けられたならオリバーだって助けられるかもしれない。このままじゃオリバーを助けることはできない。最終的には全員死ぬか、オリバーを殺すしかない。でもそんなこと状況になりたくはなかった。
「わかった...。やってみるわ」
10分程度オリバーと戦うが防戦一方であった。フェイントが効かない。魔法も避けられる。そして影魔法ですら対処される。
(どうすればいいんだ!)
そう思った時、ルビアとマリアがオリバーに向かって魔法を繰り出す。するとオリバーが苦しそうにしながら言う。
「...。逃げてくれ。頭の中で問いかけてくるんだ! ノアを殺せ。お前は悪くないって」
「...」
その言葉に全員が棒立ちしていた。そしてオリバーが言った言葉...。俺を殺せ...。ここまで憎まれていたなんて...。オリバーが今の状況になったのが自業自得と言えばそうだろうけど俺のせいでもあると思う。俺がもっとうまくオリバーとやっていれば...。そう思っているとオリバーが
「殺せ。俺が俺であるときに...。アレックス、ノア頼む」
オリバーから初めて言われた頼みであった。
「わかった」
するとみんな驚きながらこちらを見てきた。
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