第4章 発展! 薬草園のオーナー兼龍狩りのセレスト
第31話 薬草園のオーナー
ミミとフィー、二人との出会い。
そしてサブマノゲロス討伐報酬として金貨110枚を手に入れてから数週間。
季節は8月。
もう随分と暑さを感じるようになった新大陸だが、我が開拓地は順調に変化を遂げていた。
あの日からのことを少しだけ振り返ろう。
俺はまず報酬のおよそ半分をギルドに預けることにした。
これは拠点に家を建てる為に職人と資材を確保して貰うための手付金だ。
110枚の金貨があれば2~3人で暮らす程度の小さな平屋なら建てられるらしいのだが、俺を含めて仲間は既に6人。
慌てて小さな家を建てるのではなく、しっかり準備をしてそれなりの家を建てて貰うことにした。
残りの金貨の行方だが、まずミミとノルにそれぞれ武器と防具を購入した。
ミミには短剣を二本と耳と尻尾を隠せる薄手――夏仕様の――フード付きの外套。
ノルには訓練用の革鎧と木剣だ。
フィーは自前の弓があり、矢も羽根があれば自作できると言うので新調したのは衣類くらい。
フィーの耳は長髪で隠すこともできるので問題ない。
それらとアイシャ、ノル、ルビィの衣類と俺の服や日用品に金貨を数枚使用。
その後、ギルドから正式に馬を買い取り、追加でもう二頭を購入した。
拠点には今、合計3頭の馬が居る。
どれも値がそう高くない若い馬を選んだので少しずつ慣れさせていく予定。
それからおんぼろ馬車は返却して馬車は魔物を運搬できる大きな物を購入した。
これが一番高価だったかな。
そして――
「うにゃー! やっぱりテントがあると違うにゃー! 日陰最高にゃー!」
「エスティアではもっと良い家に住んでいた私が、この私がテントごときがあることに感動するなんて……!!」
――我が開拓地には家が出来上がるまでの仮暮らしの拠点として大きなテントが三つ設置された。
野宿に慣れ切った俺と違い、エスティアの街で暮らしていたミミとフィーは地面に葉を敷いただけのベッドで眠ることが相当堪えていたらしい。
フィーに到っては喜びすぎて涙を……喜んでいるのかな……?
このテントの中はミミとフィーが暮らすための寝具と家具も用意してあるので、二人にはこれからはここで暮らして貰っている。
ちなみに俺はもう一つのテントに居を移し、そのテントは寝床件物置になっている。
そして最後のひとつのテントは――
「アイシャ、この葉っぱさんちょっと元気がなーい」
「あらあら。この薬草は室内だとやっぱり育ちが悪いのかしら。外の畑の方は元気なのに」
「外の水やり、終わった」
「ありがとうノル。それじゃあ次は今ルビィが見ている鉢植えの薬草を外に移してあげて貰えるかしら」
「わかった。任せて」
――正式にギルドから犯罪奴隷ではなく農奴として俺に雇用されることが決まったアイシャさんとノル、ルビィが薬草の植生について研究している。
はじめに三人に犯罪奴隷からの解放の話をしてから随分待たせてしまったけれど、俺が魔物狩りに出られることになってようやく三人の生活を少しだけ変えることが出来た。
拠点で育てた薬草だけで生計を立てられるようになるのはずっと先だろうけれど、三人のオーナーとして俺もこの拠点をしっかり守っていこうと思う。
最後に、新しく加わった仲間である馬の様子を確認して鬣を撫でてやり、拠点の見回りを終える。
「さて、アイシャさんたちも頑張っているんだ。俺も冒険者として仕事を頑張らないとね。おーい! ミミー! フィー! 仕事に行くよー!」
「今日は暑いからダメにゃー!」
「私はここでこどもたちを護衛しているので貴様だけで行ってくるといい」
面倒臭そうに返答するミミと、いつの間にかルビィとノルのことまで護衛対象として認識している風なよくわからないフィーから億劫そうな返事が返ってくる。
「そんなこと言ってると二人のテントの周りに
「にゃっ! にゃんてことを言うにゃ! 外道にゃ!」
「くっ……この私にシールドの外で暮らせと言うのか……ひ、卑劣なやつめっ!」
それは虫などの生き物も該当するので、俺が
エスティアという謎の街でそこそこいい暮らしをしていたらしい二人には耐え難いことだろう。
「はいはい。それじゃあさっさと支度して。戦闘は俺も参加するから獲物は俺が決めるからね。龍種を見かけても馬車に乗せられないんだから勝手に喧嘩売らないでね」
この拠点はもう四方をアースウォールに覆われているし、出入り口にも頑丈な門を取り付けたので少しの間俺がシールドを解除しても問題ない。
ここからは冒険者の仕事の時間だ。
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