君のために用意する家

武州青嵐(さくら青嵐)

第1話 金木犀の会とは

 西暦2X73年に発足した「金木犀きんもくせいの会」とは、戦地で夫を亡くした女性が集う会だ。


 当事者同士で悩みの解決を図ったり、時には各種専門家の意見を取り入れながら、自立した生活を送ることを目的に設立された。


 年間行事としては、法律家による相続手続き相談や、精神医によるメンタルヘルス相談会。子どもがいる家庭のための、一日リフレッシュ会など、「突然夫を亡くした妻」に配慮し、寄り添う内容が準備されている。


 入会は任意とされているが、戦死通知と同時に会への入会案内が送付され、手続きは不要のまま入会となる。


 あくまで自主的に会は発足され、各種補助金と寄付金によって運営されているが、背後に軍と国の関与があることは公然とした秘密だ。


 軍人である夫を任務中に亡くした妻には、遺族年金が支給される。


 夫がいなくても生活できるほどの支給額。子どもがいれば、その子が最高学府を卒業するまでの学費が保証されている。


 この支給は妻が再婚するまで続く。


 つまり。

 妻が、新たな伴侶を迎えれば、国庫からの支給はなくなる。


 入会者の元には結婚を希望する現役軍人から定期的にマッチング希望の案内が届き、入会者は必ず一度はその軍人と会わなければならない。


 もちろん、見合いの専門職であるコーディネーターが立ち会い、互いの要望を細部にまで擦り合わせての「見合い」だ。


 結果。

 軍人が「諾」と言えば、再婚が決定される。


 そうして。

 軍人を支える伴侶が新たに生み出される。


 夫を亡くした女性は。

 新たな家庭を創出され、衣食住が保証されるのだ。

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