第22話ㅤボスと老婆


 ◇◆原初ノ迷宮第十層◆◇


 扉を開き入った先には、一体の巨人が佇んでいるシルエットが見えた。

 前のボス部屋の時はボスと取り巻きが居たので、少しだけ拍子抜けな気持ちはある。


 だが今までの事を考えると、厄介な敵である事は容易に想像できる。


 警戒しながら歩みを進めると、部屋の中が明るくなりボスの姿の全容が見えてくる。

 やはり一筋縄ではいかなそうな相手......それも血液には期待出来なそうな相手だ。


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 スケイルゴーレム

 レベル:60

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 鈍色の鱗に全身が覆われた巨大な人型のモンスター。名前からすると......まぁそうなんだろう。

 ゴーレムと言えば岩や石、砂などから造られたモノというイメージだったけど......初めてのゴーレムが鱗の造られたモノだとは思わなかった。


 書かれた文字のeを消すか、核となる部分を破壊する事が勝利条件となるのがファンタジー小説等で語られているが、多分今目の前にいるこのゴーレムはそんな事は関係ないんだろう。


 だけど、そんな事は関係ない。今までとやる事は変わらない。

 こちらの血液の貯蔵が切れる前に、目の前の鱗の生えたゴーレムを殴り殺す。ただそれだけ。


 じゃあ行こう。




 ◆◆◆




 巨体の割に素早い攻撃が飛んでくる。


 自分の胴体程の太さのスケイルゴーレムの腕や足による攻撃に加え、周囲の岩や石も使って攻撃してくる。


 飛んでくる攻撃を躱して懐に潜り込み、金砕棒による重い一撃を繰り出していく。


 一撃を与える毎に飛び散る鱗と石片。


 これまでの攻防でわかった事は鱗の下はこちらのよく知るゴーレムであり、鱗は即時復活するが削られた石片の部分は回復しないという事。


 鱗もこちらの血液と同じで無限ではないだろうし、削った分の体は復活しない。それだけわかれば十分。現時点での戦い方でも時間さえあれば倒すことができる。


 嬉々として襲いかかり、一撃を入れて離脱。飛ばしてくる岩や石にも慣れ、金砕棒を使ってそれらを打ち返す。


 有効な攻撃手段が増え、相手の攻撃にも慣れる。序盤に投擲の直撃を二度、相手の拳と足に掠ること数度、それ以降の攻撃は全て回避し着実に削っていく。




 どれくらい戦っていただろうか......


 再生持ち同士の戦いが、ようやく最終局面へと向かい動き出していった――


 先ずはスケイルゴーレムの体のサイズが自分より小さくなり、鱗の生えるスピードが追いつかなくなった。見るからにスケイルゴーレムの回復力が限界に達した様子。


 ただ、小刻みに震えているのが少し気掛かりなので、戦いを終わらせようと全力で動いて距離を詰める。そして......



 小刻みに震えていた動きが止まり、噛み付こうとする動きを見せるスケイルゴーレムだったが、既に振り下ろしに差し掛かっていた情け容赦の無い金砕棒の一撃がスケイルゴーレムの頭から足先まで全てを潰し、戦闘終了を告げるアナウンスが聞こえてきた。


『レベルが4上がりました』


 呼吸を整えながら地面に突き刺さった金砕棒を抜き、担ぎあげようと動くと腹部に痛みを感じた。攻撃を受けた感じも、刺さった痛みも、何も感じなかったので驚く。


 痛みの元へと目を向けると、そこには鋭く尖ったナイフ状の鱗が数本突き刺さっており、腹に突き刺さった鱗ナイフはスケイルゴーレムの最期の悪足掻きだろう。


 普通なら貫通してそうだけど、最後の最後に自分が全力で動いた事によって、射出する為の時間が確保できずに威力が出なかったんだろう。そしてこれは、普通のステ振りをしていたならば刺さっていないと思われる。


 最後にケチはついたが、このナイフ状の鱗は投擲用として有効活用させてもらおう。


 それでは本命のスケイルゴーレムの死体は......




 ゴーレムを潰した所を見ると死体は転がっておらず、代わりに魔法を覚えた時に見たような水晶が転がっていたので簡易鑑定を使って確認。


〈ゴーレムコア〉


 鑑定してみると案の定と言うか、スケイルゴーレムからドロップしたモノだからそうだろうなと思っていたので、妥当だなと思える結果だった。


 削りすぎたのが悪かったのか、それとも潰したのが悪かったのか......死体は残らなかったのが少しだけ残念である。

 これは自分ではどうにもならない部分なので諦めてソレを広い、落ちている鱗の中で無事な部類のモノを選別して拾っていった。



 粗方目ぼしいモノを拾い終えると、ボス部屋を後にする。


 前回はこの先には安全なエリアがあったのを思い出し、気持ち早足になりながら先へと進む。長時間動きっぱなしだったので、流石に疲労が溜まっている。



 さぁ休むぞ! と意気込みながら扉を開けると、そこに広がっていたのは全く想像もしていなかったモノだった。




『イラッシャイ。ユックリミテイクトイイヨ』


 怪しげな格好の老婆が布の上にアイテムを広げながらこちらを振り向き、歓迎の意を示してくる。

 ダンジョンには似合わない......さながら露天商のような光景が目に飛び込んできた。




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 吉持ㅤ匠


 Lv:49→53


 HP:100%

 MP:100%


 物攻:40

 物防:1

 魔攻:10

 魔防:1

 敏捷:40

 幸運:10


 残SP:10


 魔法適性:炎


 スキル:

 ステータスチェック

 血液貯蓄ㅤ残41.9L

 不死血鳥

 状態異常耐性Lv2

 拳闘Lv4

 鈍器Lv4

 簡易鑑定

 ■■■■■■


 装備:

 魔鉄の金砕棒

 肉食ナイフ

 ボロボロな腰蓑

 再生獣革のブーツ

 魔鉱のブレスレット


 獣皮の鞄

 ㅤ鱗皮のナイフホルダー


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