第21話ㅤ進撃準備

 ◇◆原初ノ迷宮第七層◆◇


 新しい階層に到着したが、いつ休みを取るべきか迷っている。スマホを捨ててしまった所為で時間や日付けが全くわからない事に気付いた。


 ダンジョンに挑むようになってから飲食に気を回す必要がほとんど無くなったとはいえ、睡眠や休息は前と変わらず必要なままである。


 当たり前の事だがソロで挑んでいるのでフォローしてくれる存在は居ない。

 どうしても避けられない状態で戦いに臨まなければならない場合ならまだしも、普段は万全に近い体調でいないといけない。


「疲れてきたと感じた時は躊躇しないで休憩を選択しないと......連戦、連戦で興奮状態になるのも考えモノだ」


 頭に血が上りやすいのか、戦いを重ねているとどうにも冷静さを保てなくなるのは自覚している。


「改善しないといけない事がいっぱいだ......とりあえず安全が確保できる場所を見つけたら一度休んで、そこでまた考えよう......ウォーリアーを倒した後のような場所を探さないと。気を張りながらだと無理だ」


 この階層での目標に休憩できそうな場所の発見を加え、歩き出した。





 この階層は最初はスケルトンのみ、進むとゾンビ、グールがメインとなってとにかく臭いがキツかった。


 戦闘終了してもレベルが上がらない事が増えた事、それに伴い敵が完全に死んだタイミングがわかりずらいのが悩み所。

 だが、グールは今出てきている相手以上と戦った事があり、ゾンビはグールよりも動きが遅く、スケルトンは相手にする事に慣れたので無効化しやすかった。


 休めそうな雰囲気の場所はこの階層では見つからず、グールやゾンビの放つ腐臭がかなりキツかったのでこの階層で休むのは諦めて、次へと進む事に。


 この階層ではかなりの数のアンデッド達を倒したが、レベルは2しか上がらなかったが、いつの間にか生えていた鈍器と、拳闘のスキルレベルが一つ上がっていた。SPは貯めておく事にした。苦戦するようなモンスターに遭った時に使おうと思っている。


 血液の貯蓄は微減していた。ゾンビやグールは腐っているから、ソイツらから得られる物はアシッドスライムとほぼ同じ程度。ヤツらの腐肉は食肉ナイフも食わない肉だった。




 ◇◆原初ノ迷宮第八層◆◇


 別に態々モンスターが湧き出る場所で休もうとしなくてもいいのではないか。


 その事に気付けたので、階段内で休憩をとる事に決める。


 モンスターがこの中に侵入してまで襲ってくるとは思えないが、徘徊して階層も移動する特殊なモンスターがいるような話がファンタジー小説であった気がするので、油断はしないように注意はしておこうと思う。




 すぐには眠れそうにないので、壁に寄りかかりながら倒したリザードマンの皮を弄る。食肉ナイフを装備できる帯のような物を作っていたのだが、ここまでの疲れと慣れない作業をしていた所為か、作業途中でいつの間にか寝てしまった。




 ◆◆◆




 どれくらい寝たのかわからないけど、無事に目を覚ます事が出来た。

 普段は何時でも何処でもほぼ確認出来る時間。いざそれがわからない状況に陥ってみると、とても不便なんだとわかる。


 外ならまだしも、朝、昼、夜が全くわからないダンジョンという特殊な空間なので、時間という概念が無いと常人なら正気を保つのが難しいかもしれない。


「ある程度時間の目安になる物が欲しいけど、そんな複雑で高度な機械類なんて手に入る訳でもないよな。それなら体内時計をどうにかするしか無いか......

 すぐには無理だろうけど、何日か過ごせば勝手に適応していくよね。ここは自分の身体に頑張ってもらおう。体調は問題ないから進もうかな」


 人間の適応力に任せておけばいいと結論付け、先に進む為の準備に取り掛かる。

 その最中、独り言が増えてきた事に気付いて溜め息が出る。


「外に居る時は喋らなくても大丈夫だったのに......自分の気持ちに何か変化があったのかな? まぁあった所でどうにもならないよな。多分これが必要な事なんだろ」


 カウンセリングやメンタルケアに明るいのなら何かわかったかもしれないけど、生憎そんなものは習っていなかった。だから、きっとこの変化がダンジョンで過ごすのに必要だと思って、この変化を放置する事にした。




 後は勝手に適応していくだけと決めて八階層を進んでいく、レベルが上がった恩恵によって振るいやすくなった金砕棒や拳。どうすれば効率よく相手を壊せるのかを意識しながら繰り出していく。


 冷静さを保つ事も忘れず、多対一ではない状況に持ち込んだら相手の動きを見極めながら動く事に費した。肉弾戦に加え、少しづつだが魔法も使い始める。


 慣れない行動をした所為で血液を無駄に使ってしまったが、慣れていくにつれて怪我をする事が減っていく。

 時間と血液を浪費したが、それらを使うに見合った成長を実感して喜んだ。


 そうやって戦い方の改善をしながら八階層、九階層と順調に攻略していき、ようやくボス部屋のある十階層へと到着した。



 これまでの戦いによって所々欠けた金砕棒を肩に担いだ少年は、アハハと笑いながらボス部屋の扉を開いた。


 ──────────────────────────────


 吉持ㅤ匠


 Lv:43→49


 HP:100%

 MP:100%


 物攻:40

 物防:1

 魔攻:5→10

 魔防:1

 敏捷:38→40

 幸運:7→10


 残SP:2


 魔法適性:炎


 スキル:

 ステータスチェック

 血液貯蓄ㅤ残45.5L

 不死血鳥

 状態異常耐性Lv2

 拳闘Lv4

 鈍器Lv3

 簡易鑑定

 ■■■■■■


 装備:

 魔鉄の金砕棒

 肉食ナイフ

 ボロボロな腰蓑

 再生獣革のブーツ

 魔鉱のブレスレット


 獣皮の鞄

 ㅤ鱗皮のナイフホルダー


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