54.
”2番”。それは結陽と対峙していた男が何度か口にしていた
……それだけじゃない。モンスターハウスにいた怪人たちも口にしていた。彼らは結陽のことを”2番”と呼んだ。
そして戦闘時、結陽は男のことを”4番”と呼んでいた。
なぜ結陽と男だけが番号で呼ばれていたのか。なぜ、他の怪人は番号で呼ばれないのか。
「ただの改造番号……いや、強さのランキングって言ったほうが分かりやすいかもしれないな。改造の時期が早ければ早いほど私たちは強いから」
「改造番号……?」
「私は二番目に改造された怪人だから”2番”と。アジトを出る時に戦ったあいつは四番目に改造されたから”4番”と呼ばれていたんだよ。……ああ、性格には改造が成功した怪人か」
「……失敗した人もいるの?」
「人間社会に溶け込ませるために改造されてるんだ、見た目が人間らしくない奴は失敗作だよ。この髪色と目の色以外は人間らしく作られるはずだったから」
自分の前髪を触りながら、なんでもないように結陽は言う。
それはつまり、私たちが今まで街で戦ってきた怪人は全て失敗作だったということだ。
毒を出したり、熱を放出したり。厄介な敵ばかりだったのに。あれが結社にとっては失敗作だったなんて。
「……失敗作と言ってもいろいろあるから」
私の苦い表情を見て、結陽はさらに詳しく語りだす。
「まず、そもそも怪人になれなかったモノ。人間でも怪人でもない、本当の失敗作。そいつらは改造手術が終わった時点で処分される」
「人間でも怪人でもない……?」
「喋れないし、戦えない。知能もない。見た目は怪人よりだけど、その身体は脆く、放っておいても数日で死ぬだろうね」
「……」
「次。ちゃんと手術が成功して戦えるヤツ。見た目は完全に怪人。でも知能がないから喋れない。私たちはこいつらを
見た目は怪人、知能はない。きっとトリガブドがそうだ。あいつは毒をまき散らすし、強かったけどほとんど言葉が話せなかった。
「で、この次が見た目が怪人で知能もあって戦えるヤツ。そいつらは
前に学校で戦った、ジャミゼン。あいつは強かったし、ベラベラ喋っていた。初めて
「で、見た目はほぼ人間。知能も高くて強い。それでようやく改造手術の成功例と認められる。私たちのことだね。
「るーく……?」
「戦車の如く、大人数を相手にしても余裕で蹴散らせるって意味。ちなみ兵隊は二人、騎士は三人。それ以上の人数を相手にすると勝率が著しく下がるみたい。まあ、相性とかもあるから正確じゃないだろうけど」
結陽が語った結社内での階級を
その頂点に戦車と書き足そうとしたところで、結陽は待ったをかけた。
「私たちが頂点じゃないよ」
「まだ上があるの……?」
「戦車より上位の存在。……
今まで何一つ掴めなかった結社の内情が次々と明らかになる。あまりの情報量に頭がパンクしそうだ。
さっきからずっと静かにノートを取っている透子だって平静を装っているだけに過ぎない。……だって、ペンを握る右手が震えているから。
「女王は一人だけ。兵隊、騎士はたくさんいる。きっとこれからも増え続けるだろうね」
「……戦車は?」
「戦車は五人。これ以上増えることはない。”5”で打ち止めだよ」
「それは、なんで?」
もしも私が結社の女王だったら戦車をたくさん生み出すために改造を繰り返す。だって兵隊、騎士よりも強い駒だ。たくさんいたほうが安心するだろう。
「女王は戦車を恐れているのさ。知能がある分、反逆される可能性だってある。だから生み出すのは五人だと、ずっと昔から決められていたそうだよ」
「……戦車が女王にとっての脅威?」
「ほら。現に私は結社を裏切っているしね。ナンバー持ちは何を考えているか分からない。残りの三人だって怖いぐらい賢くて、残忍だよ」
「残りって言うと……”1番”、”3番”、”5番”だね」
「そう。きっとこれから私たちが戦うことになる相手。コウセイジャーは戦車を敵に回した。今まで兵隊や騎士程度しか街に現れなかったけど、これからは違う。戦車が……街で暴れるだろうね。……覚悟は良い?」
……今までの私とは違う。私は憎しみだけでは戦わない。
まだ何も言っていないのに透子は察しているようだ。結陽も……確かめるためではなく、覚悟を固めるために私に投げかけた。
もちろん私は————
「誰が来ても同じ。私は……私の守りたいもののために戦うよ」
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