33.
続々と帰ってきた凛華さんの兄妹たちと食卓を囲んでいる。今日はせっかくだからたこ焼き、と
大きなローテーブルにたこ焼き器を設置し、キッチンで凛華さんが準備している具材を今か今かと待っている。
「たこ焼きー!」
「お姉ちゃん、まだぁ!」
小学二年生の双子の
「今、姉貴が準備してるから。ほら。お皿とお箸、準備しよう?」
元気な妹二人に優しく話しかける弟の
妹が三人と弟が一人。学校が終わってからずっとお邪魔しているけれど、ご両親の姿はない。
「理亜ちゃん、それなぁに?」
「これね! 凛華お姉ちゃんに作ってもらったの! 毎日これで結んでもらうのー!」
「そっかぁ、良いね。理亜ちゃんに似合ってるね」
「理央もー!」
「理央ちゃんもお揃いで作ってもらったのかな? 可愛いね!」
透子はさっきからデレデレと双子に話しかけたり、年上のお姉さんに緊張している琳太郎くんにちょっかいをかけたりと忙しそうだ。
「春、タコ切るの手伝って」
「ん」
キッチンから声がかかり、立ち上がる。
洋室の扉を閉め、腕まくりをしながら二人に近づく。
「タコが二パック買ってあるから。なるべく小さめに切ってくれる?」
「了解」
包丁とまな板を借り、ザクザクと切っていく。
たこ焼きなんていつぶりだろう。
家では作ったことがないし、外で食べる機会もほとんどない。夏祭りの屋台で食べるくらいだろうか。
「切れたよ。あとは何すれば良い?」
「じゃあタコは一旦トレイに乗せておいて——」
「あっ」
冷蔵庫を開いた凛華さんが素っ頓狂な声を上げた。
「お姉どうしたの?」
「あー……たこ焼きソースがないや……」
「えっ、それはマズくない?」
「だね。買ってくるよ」
今しかないと思った。
「私も行く」
今、一緒に行けば二人きりになれる。話をするには都合が良いと思ったんだ。
「えー、いいよ。一人で行けるよ?」
「外、暗いから。ついてく。いいよね、莉々」
「いいよ、もうちょっとで生地出来るから。正直、ソース待ちになりそう」
行こう、と凛華さんの腕を掴んで玄関の扉を開けた。既に日が沈み、辺りは真っ暗になっていた。
「この近くだと100均あったよね? 確か、坂を下った先に」
「あったね。八時まで開いてるから今から行けば余裕だね」
二人で坂を下りる。
車も自転車も、歩行者もいない。誰もいない道を歩く。
「春ちゃん、優しいね。ついて来てくれて嬉しかったよ」
何も知らない凛華さんが無邪気な笑顔を見せる。
でも、ごめんね。ちゃんと理由があってついてきたんだ、私。
「…………話がしたくて」
「コウセイジャーのこと?」
「……うん」
さっきまで足取り軽く歩いていた凛華さんが止まった。私もそれに
「いろいろ考えたんだけど、ちゃんと話そうと思って」
「うん」
ゆっくり、私の本心がちゃんと伝わるように話す。
「私は怪人が憎い。殺したくて仕方がない」
「……それはなんでって聞くのはルール違反、なのかな」
「ううん、これから話す……つもり」
深く息を吸う。これから話すことは透子以外知らない、私の事情。人に話すのは初めてだ。緊張のせいか、唇が渇いて仕方ない。
ゴクリ。
生唾を飲み込み、覚悟を決めた。
「凛華さん。私は————」
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