28.
「——貴女は一体、何者なの?」
そう問いかけ、
「…………」
「まだ、教えてくれないの?」
ここまで来て答えない透子にイライラする。そっちがその気ならこちらにも考えがあるというものだ。
「……もういい。答えてくれないなら家、出てくから」
「は?」
「透子と暮らすのを止める」
「ちょ、ちょっと待ってよ。急に出て行くなんて。それに住むところはどうするの?」
「そんなの何とかなるでしょ、支部に頭下げてアパートでもなんでも用意してもらう。コウセイジャーとしてお給料貰ってるんだから何とかなるよ。それに私は透子と違って家事も出来るしね」
言い切って、部屋を出ようと立ち上がる。
「待って、待って!」
焦ったように透子が私の腕を掴んだ。
「なに。隠し事する人とは一緒に住みたくないんだけど」
「隠し事というか、なんというか……。いろいろ事情があって話せてなかったというか……」
「言い訳する人も嫌い」
「ごめん! 言うから! 言うから出て行かないで!」
必死に私に
「ちゃんと最初から説明して」
「はい……」
もう一度透子の隣に座り直す。不安なのか透子の左手は閉じたり開いたり、落ち着きがなかった。
「……何から話そうか考えたんだけど見てもらった方が早いと思う」
そう言っていつも身に着けている腕時計を外した。
「……ッ!」
左手首に”3”という文字が浮かんでいる。
「……どういう、こと?」
「見ての通り。私も同じ呪いを受けているんだよ」
「な、なんで。この呪いは使用者にしか発動しないって言ってたよね?」
透子が呪いを受けている理由が分からない。私はあの
なのに、なんで————。
「この腕時計、見覚えない?」
さっき外した腕時計を手渡される。いつも透子が愛用しているヤツだ。見覚えも何も、毎日身に着けているんだから私も毎日見てるし……。
「…………私の腕時計と似てる?」
「これ、旧型だからね」
「旧型……?」
「そう。春のは今年開発されたばかりの新型だよ」
私の腕時計は支部から支給された変身するための専用腕時計。間違っても趣味で買ったものじゃない。
そんな代物と同じ、旧型を透子は持っている。それってつまり。
「私、元レッドだから」
「……え」
「春の前にコウセイジャーレッドとして戦っていたのは私だから」
衝撃な告白を受けて思考が止まる。
透子が元コウセイジャーレッド? つまり私の先代ってこと?
理解が追い付かず、必死に頭を動かす。
そんな私を見て透子は笑う。
「先輩なんだよ、私。もっと敬ってくれてもいいよ?」
「いや、先輩なら疑わしい素振りしないでくれる? 味方じゃないのかもって悩んだじゃん、私」
「すみませんでした……」
このまま調子に乗りそうだったから釘を刺しておく。
そんなの、もっと早く言ってくれれば私は悩まずに済んだのに。
「はぁ……言ってくれたから良いけど」
「じゃあ家、出て行かない?」
「……今のところは」
透子はほっと胸をなでおろす。そんなに出て行って欲しくなかったのかな……。ああ、そうか。全く家事が出来ないからか。
「それで、その左手首の数字、私と全く同じ呪いってことで良いんだよね?」
「うん、そうだよ」
「なんで私は”10”で透子は”3”なの? 年齢の差?」
「違うから。元は私も”10”だったんだよ」
「減ってる……?」
「あの籠手は普段は封印されてるって言ったよね? それを解放すると呪いが進行するって。もちろん一回も使わなければこんな数字浮かび上がらなかったんだけど」
「……使ったの?」
「使った。使うしかなかったよ」
ポツリポツリと透子は語り始める。
レッドとして戦っていたあの頃のことを。
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