18.
早く終われ。いつもそう思うのに今日は逆だった。
まだ終わるな。放課後くるな。
願えば願うほど早く時間が過ぎていく。
「じゃあ私、部活行くね。さっきお
「……分かってるよ」
待ち合わせ場所にいなかったので帰りました。後で文句を言われた時に言い返すセリフも用意していた。
その作戦は
「おー、
「はい……。さようなら」
「おう、さようならー」
廊下にいた知らない先生に声をかけられたが上手く返せなかった。
あの先生からしたら私は授業も終わって部活もないし、ただ帰るだけの生徒に見えるだろう。でもそれは違う。これから私が立ち向かうのは間違いなく今日の
教室を出て、左手の階段を下りた。ゆっくりと、一歩一歩踏み締めて歩く。
私の教室は三階だから、昇降口に行くために二回降りなくてはならない。
普段は上るのも下りるのも
この短くて長い階段が永遠に続けば良いのに。
でもそんな魔法みたいなことは起きなくて。三階の教室を出て二分弱で下駄箱に着いてしまった。ゆっくり歩いたつもりだったんだけどな。
下駄箱で靴を履き替えて外を歩く。校門へ向かってゆっくりと。もはや校門が地獄の門に見えてならない。
ああ、嫌だ。根掘り葉掘り聞かれるのも、怒られるのも。何もかも嫌だ。
嫌だ嫌だと言っても、もう校門は目の前に迫っている。ここをくぐったら凛華さんが待っているはずだ。
「学校お疲れさま。昨日ぶりだね、春ちゃん」
「お疲れ様です……」
昨日と変わらず作業着姿で凛華さんは立っていた。
「いろいろ言いたいこと、聞きたいことがお互いあるだろうけど……」
「……」
そんなこと、ない。私は何もない。聞きたい事も言いたい事も。だから早く帰らせて——。
「ごめん」
「え?」
「昨日は、ごめん」
凛華さんに謝罪されるとは、思ってもみなかった。
「春ちゃん……レッドの言い分も聞かずに勝手に怒ってごめん」
「……な、なんで」
「みんなそれぞれ事情がある。コウセイジャーになった時にそう聞いて理解していたつもりだったの。でも昨日はつい、口論になっちゃった」
「……私だって事情はあります、よ」
きっと凛華さんにも。イエローもグリーンも、ブルーもきっとそうだ。みんな何か事情を抱えながら戦っている。
私たちは結社を倒す。街の平和を守る。
その目的は一致している。でもきっと考え方は一致していない。
私は結社を倒したいんじゃない。結社を、怪人を殺したい——。
「分かってる。だからごめんね。昨日は私が悪かった」
そう言って深々と頭を下げる。
分かってると言っても私の心の奥底のドス黒い感情までは理解できないだろうし、知る由もない。だからこの謝罪は凛華さんの自己満足だと思う。
それでも謝罪は謝罪だ。これを私が受け入れれば昨日の口論は決着する。
「でもね」
これで話は終わりか、と胸をなでおろしていると凛華さんは真っ直ぐに私を見つめて言う。
「私は春ちゃんと……レッドや他の仲間たちと協力したい。もっとお互いのことを知りたいと思ってるよ」
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