16.
「何がって……」
「……答えてよ。なんでそんなに怪人を、結社を憎んでいるの?そりゃ、怪人を倒すのが私たちの仕事だけど。あそこまで
「良いでしょ、別に。怪人は相容れない敵なんだから」
「そうだけど……。でも、理由が知りたい」
「……ピンクに話す必要は、ない」
言い切って背を向ける。嫌だ、早く立ち去ってしまいたい。
「何かあるんでしょ、理由」
「…………うるさい」
「私たち同じ戦隊の仲間じゃん」
「…………黙って」
「前から思ってたけど、全然私たちに心を開いてないよね。いくらレッドでも一人で結社を倒すのは無理があるんじゃない? 五人で協力しないと——」
「黙って!」
叫び、ピンクの言い分を遮った。
「心を開いてない? それが何? 私は結社を潰すために戦う。それ以外の気持ちなんてないよ。支部の人間がそれを良しとしたならあなたが口を出す権利なんて無いんじゃない?」
「でも!」
「協力したいなら勝手に——」
「そこまで」
いつの間にか近くに来ていた
「透子さん、今レッドと大事な話をしてるんです」
「もう話すことなんてない。透子、そこどいて」
「さっきまで良い連携して戦ってたのに……。まあ、いいけどさ。二人ともまだ仕事終わってないでしょう? 怪人を倒すのがコウセイジャーの仕事? 違うよね、怪人から街のみんなを守るのが君たちの仕事でしょう。目的を間違えないで」
「す、すみません。そうですよね、私たちは守るために戦う……それが目的だった。結社を倒すのは手段、ですよね?」
「その通り。なら、今何をやるべきか分かるね?」
「怪我人の確認と救助、ですね。行ってきます!」
言ってピンクは駆けだした。きっと彼女は愚直に学校中を回るだろう。
怪我人の確認と救助なんて実際のところもう既に行われている。さっき救急車と救助隊の車が到着したから。
それを知りながら透子は急かすようにピンクを向かわせた。一体何を考えているのだろう。
「……春」
「なに。どういうつもり?」
「先に謝っとく」
「はぁ?」
「ピンク……凛華にレッドの正体バレたと思う」
「はぁ⁉」
「だって私と住んでるって時点で……」
聞き取れないくらいの声でぼそりとつぶやく。
「なに、聞こえないんだけど。もっとはっきり言ってよ」
「いやぁ、ピンクは察しが良いんだなぁ」
「
「はっはっは」
「笑いごとじゃないって!」
冗談じゃない。これから現場で一緒に戦う時どんな顔をすれば良いんだ。ピンクとしてじゃなく赤羽 春として凛華さんと会う時もどんな顔をしたら良いのか分からない。
何より喧嘩別れになってしまったし。
いつもみたく聞き流せば良かった。あんなに真正面から反論しなければ。
それに途中で間に入った透子の話。いつも私はそのままで良い、狂気がないと結社は倒せないって言ってるのに、ピンクにはあんなふうに
「……怒ってる?」
「別に。ただ、一つだけ」
「なに? あ、今日の夜ご飯は私が作ろうか?」
「いや透子が作ったら食材が無駄になるでしょ。そうじゃなくて」
深く息を吸う。真剣に、透子の目を見る。
「……私、このままで良いんだよね?」
「もちろん」
「私は私のために、結社を潰すためだけに戦うよ? それで良いんだよね?」
「春はそれで良い。そのままで良いよ」
透子は薄く笑う。前まではそのままで良いと言われる度に安心して私は私でいられた。でも今は落ち着かない。そのままで良いと透子に言われたのに。
知っていた。私がヒーローなんてきれいなものじゃないことを。私はただ自分の復讐のために戦っているだけ。みんなを守る。そんな大それた信念なんて、ない。
その在り方を肯定したのは透子だ。なのに目の前でピンクにはみんなを守ることが目的だと言う。
分からない。透子が分からない。
もしピンクに言ったことが透子の本心だとしたら?
私の在り方を実は誰よりも認めていないのが透子だったら?
分からない。分からない——。
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