遅れてきた約束
勝利だギューちゃん
第1話
「ごめん。待った?」
部屋にいきなり、女の子がやってきた。
「だれだっけ?」
女の子はきょとんとしている。
でも、すぐに我に返る。
「あっ、私はアカシア。魔法使いよ。思い出した?」
「知らない」
「何よ。君が呼んだんじゃない」
「いつ?」
「ほんの20年前じゃない」
20年前という事は、僕はまだ4歳。
記憶は殆どない。
「もう、これ見たら思い出すでしょ」
アカシアと名乗る少女は、一枚のハガキを見せた。
そこには、こう書かれていた。
『まほうつかいの、あかしあというおねえちゃんのてはいをおねがいします。
どうしても、かなえてほしいねがいがあります。
みつばようちえん たんぽぽぐみ。 いがらしかつあき』
・・・
「あっ、思い出した。確か、おもしろい幼稚園という雑誌の懸賞に応募したんだ。
そしたら、カードが届いて、当選おめでとうと、書かれていたんだ」
普通なら捨てる所だが、なぜか残してあった。
「あっ、このカードだ」
「そう、それそれ。」
「てっきり、これが景品だと」
「思い出してくれて、良かった」
アカシアさんは、笑っている。
「で、叶えてほしい願いは何?」
「・・・忘れた・・・」
「無責任ね」
そんな小さいころの願いなんて、たいした事でもないが・・・
何で書かなかったのだろう?
それにしても、なぜ今になって?
「全プレで、ひとりひとり叶えてたから遅くなった」
「何人叶えたの?」
「一千万人」
多い!
「今の願いでも、いいわよ」
「本当に?」
「うん。でも、私が欲しいはだめよ」
「いらん」
しかし、ずいぶんと若く見えるな。
いくつなんだ?」
「君、女性に歳を訊くと嫌われるぞ」
「体重はいいの?」
「それも、だめ」
「スリーサイズ」
「それも、だめ」
わがままだな。
「で、願いは・・・」
僕は迷った挙句告げた。
「わかった。叶えてあげる」
「本当に?」
「ただ、準備に時間がかかるから、少し待っててね」
「どのくらい?」
「50年」
待てるか!
行ってしまった・・・
さすがに難しかったかな・・・
そして、50年後。
再び、彼女は来た。
「どう、叶ったでしょ?あなたの願い」
「全然、変わらないね」
「あなたは、すっかりおじいさんだね」
「そりゃあ、74歳だからな」
アカシアさんは、笑う。
「満足した?」
「ああ、上出来だ」
「でも、本当は私は何もしていないんだ」
「どういうこと?」
「あなたが、全て自分の力で叶えたの。」
僕の力?
「魔法なんていうのは、存在しないの。
魔法使いというのは、魔法を使うのではなく、その人を歩き出させるためにいるの。
魔法に頼らなくても、人は強くなれるんだから」
してやらてた気がする。
「でも、ご褒美として、ひとつだけ魔法をかけてあげる。
私が本物だという証明にね」
僕は、心にとどめておいた願いを告げた。
「それはもう、叶ってるよ」
そうだな・・・
「じゃあ、宇宙から地球を見たい」
「了解。捕まって」
こうして宇宙へと出た。
魔法の力か・・・
息もできるし、体も重くない。
「どう?地球は」
「もうじき帰るんだね。あの青い海に」
「あなたは、もう少し先だけどね」
遅れてきた約束 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu
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