第9話……エピソード18……地中海制圧……続き

★ロドス島制圧

 聖ヨハネ騎士団は14世紀初頭にビザンツ帝国領のロドス島を占領した。この島はエーゲ海交易の要衝であり、騎士団はイスラーム諸国相手に活発な海賊活動を行って東地中海を支配した。

1373年9月上旬日曜日朝7時……カイロ宮殿

 アレクサンドリアの造船所で強化ガレオン船300艘が新たに建造された。すでにもっている200艘をチュニス攻撃に向かわせ、新しいガレオン船でロドス島に向かった。

 アドリアンの命令は聞かなくとも分かっている。ロドス島の聖ヨハネ騎士団による海賊行為でジョチ・ウルスの交易商人が襲われ甚大な人的物的被害を被っているのは話に聞いている。ロドス島を占拠せよという命令に決まっている。

 アドルフが断ったのには理由がある。キプロス島攻撃でさえ3分の1の兵を失ったのにロドス島は十字軍の頃から有名な堅固な要塞だ。10万の部隊を送っても全滅してしまうだろう。ここは上陸作戦よりも時間を掛けて海上封鎖を行うべきだ。

 アドルフの考えは「ロドス島の海上を全面封鎖して軍艦は全て沈める。住民の小型補給船はすべて拿捕し、キプロス島に一旦移動する。捕らえた住民はイスケンデルン港に集め、交易労働に従事させる」であった。半年、1年かかっても行う必要がある。

 その旨アドリアンに連絡した。命令を無視されたアドリアンは怒り狂っていたようだが「分かった。二度と命令を無視するな。俺に逆らうとひどい目に合わせるぞ」と脅してきた。

 アドルファは鼻で笑い「その気があれば問答無用で100万人の軍隊を送ってくるだろう。そうしないのは出来ないからだ。まだ俺に利用価値があるからな」と思った。

 アドルフ「まあこれ以上怒らせるのは得策じゃない。ほんとに怒らせてもこちらに準備が出来ていない。もう少し準備してからだ」

 アドルフは強化ガレオン船300艘を率いてロドス島に向かい海上を封鎖した。すぐに軍艦300艘が島を出てきてアドルフ隊に砲撃を仕掛けた。キャロネード砲は射程距離が長いので敵の砲弾は当たらず一方的に攻撃できる。全艦撃沈し、敵兵を1,000名捕らえてイスケンデルン港に送った。住民の小型補給船を150隻捕らえ、住民ごと全てイスケンデルン港に送った。そのすきに半数6万の軍勢を上陸させ、砦を砲撃させた。

 8時間の交代制で3ヶ月持久戦を行った結果、聖ヨハネ騎士団は物資が尽きた。白旗を掲げてきたので、島民のうち離島を望むものはその自由と3年の猶予を与えられ、残留を望むものはアドルフ王国の支配下に入っても5年の間納税を免除された。キリスト教の教会が汚辱をうけたりモスクに改められたりすることもなかった。

 最後に残っていた騎士が市街を発った。彼らは騎士団旗をはためかせ、ドラムを鳴らし、軍装に身を固めて行進するという名誉の撤退ぶりであった。彼らは離島する住民数千人とともに50隻の船に乗り、ヴェネツィア領クレタ島へ退去した。

 イスケンデルン港にて港湾労働に従事していた島民にも同様な処置が取られた。アドルフはアドリアンに直ちに報告し、お褒めの言葉と次の命令を頂戴した。

 アドリアン「インド攻略のためお前の3兄アルファードを一度お前のところに派遣する。実戦経験が少ないのでお前の下で経験を積ませてやってくれ」

アドルフ「私の部下として使う。その認識でよろしいか」

アドリアン「勿論だ。ただあくまでもお前の実の兄だ。最低限の礼は尽くすんだぞ。失礼なことはいうな」

アドルフ「それは勿論です。チュニス攻撃に同行します」

1374年1月上旬日曜日朝7時……カイロ宮殿

 アドリアン24歳、アルファード22歳、アドルフ16歳になった。3兄弟が集まり、朝食というより大宴会が開かれた。宴会後アドリアンが口火を切った。

 アドリアン「先に悪いニュースを伝える。ヘレネーが回復せず年末に息を引き取った。お前には戦争中なので知らせなかった。許してくれ。葬式は盛大に行った。お前の息子はカザンで大切に育てているから心配するな。良いニュースはイランとカスピ海で油田が発見されたことだ。ジョチ・ウルスも大分潤ってくる。住民の懐も豊かになってくるぞ」

 アドルフはある程度予知していたことなので驚かなかった。良くなれば知らせてくるはずなのに一向にヘレネーからは連絡がなかった。人の命は儚いものだ。覚悟はしていたがこんなにつらいとは。

 アドリアンが連れてきたビアンカ23歳が内政会議の司会を努めた。

ビアンカ……カスピ海で油田が発見されました。今はバクーの周辺だけですが埋蔵量はかなり多いと見込まれます。バクーに原油精製工場と液化ガス精製工場及び石油化学製品製造工場・貯油施設を建設したいのですがどうでしょう。

全員賛成した。

 ペルシャ湾岸で多数の油田と天然ガス田が発見されました。ホルムズ海峡近くのバンダル・アッバス港とバルハシ、アテネ、アレキサンドリア、バスラは戦略的に重要拠点です。バンダル・シャープール港とカーグ島を開発します。全員賛成した。

 カスピ海のバクー油田からアナトリア全体へ供給するパイプラインを考える必要があります。

バクーからトビリシ、エルズルムからジェイハンへ運ぶ原油パイプラインを建設します。

 天然ガスはカスピ海のシャーデニーズガス田からトビリシ、エルズルム、サルズ、アンカラを経由してカラジャベイまでのパイプラインを建設します。原油と天然ガスはバクー、トビリシ、エルズルムまで平行に走っています。

 ネカ港からバンダル・シャープール港「今はバンダル・ホメイニ」までとバンダル・シャープール港からバンダル・アッバス港「元のホームズ港」までの原油パイプラインを建設します。

全員賛成し、ここまでの実行をビアンカに指示した。

 またアラル海の水源を守るために上流での綿花栽培を禁止した。中国からの輸入で賄うつもりだ。

 ビアンカ……イスタンブール、アンカラ、エルズルム、トビリシ、タブリーズ、エスファハーン、テヘラン、カブール及びバンダル・シャープール港、カーグ島、バンダル・アッバス港に原油精製工場と液化ガス精製工場及び石油化学製品製造工場・貯油施設を建設したいのですがどうでしょう。全員賛成した。

 内政会議を終わり、チュニス攻撃の話題に移ったがアドルフに一任された。アドリアンとビアンカ及びアルファードも同行する。

 チュニス攻撃は次回に持ち越された。

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