第7話…内政の充実…エピソードⅡ

★アレクサンドロス大王に抵抗したソグド人の夫スピタメネスと


裏切った妻ザーラの物語


紀元前334年、アレクサンドロス大王は父の意思を継いで東方の大遠征に出掛けた。


僅か10年ほどの遠征だがその成果は素晴らしかった。


後世のチンギス・カンも顔負けの活躍ぶりである。


アジアとヨーロッパにまたがる人類史始まって以来の大帝国が


出来上がったのである。


古典古代の世界ははるか東方に広がり、東と西の文化的伝統を総合した


ヘレニズム時代が始まった。


アレクサンドロス大王の最初で最大の戦闘はガウガメラで始まり、


アレクサンドロス大王はアケメネス朝のダリウス3世を打ち破り敗走させた。


ダリウスは再起を期してミディアに逃走した。アレクサンドロスは深追いせず、


バビロンに向かい、ダリウスの王宮のあるペルセポリスを占領して、住民を殺戮し、


略奪をほしいままにした。奪った財宝は2頭立ての馬車1万台、


ラクダ5,000頭がそれを運ぶために動員されたと云う。


アレクサンドロスは全て近親や部下に分け与えた。


これ以降は、アレキサンドロスはマケドニアの王としてではなく、


アケメネス朝の合法的な王として遠征を続けた。


ダリウスの息の根を止めるべくアレクサンドロスはダリウス3世のいる


ミディアの首都エクバタナに向かった。アレクサンドロス来るの報を聞いた


ダリウスは勝ち目が無いことを悟りバルティア方面に逃亡を図った。


しかしダリウスの遠い親戚に当たるバクトリア総督ベッソスが反乱し、


ダリウスは捕らえられた。


アレクサンドロスが到着した時にはダリウスの息は絶えていた。


反乱者ベッソスは反ギリシャの軍勢を集めたが、


ギリシャ軍の半数にも満たない7,000名しか集まらなかった。


ベッソスは勝算の無いことを悟り、オクス川…今のアムダリア川


を渡り北に逃げようとした。これを知った部下の将兵は散り散りに去ってしまった。


ベッソスは部下のソグド人の武将スピタメネスらと共にオクス川を渡り、


ソグディアナのナウタカ「今のケシュ地方」に向かった。


一方アレクサンドロスはヒンドゥ・クシュ山脈を越えてドラブサク


「今のクンドゥズ」を占領、


やがてベッソスの退去した後のアオルン「今のタシュ・クルガン」と


バクトラ「今のバルフ」を無血で支配した。


こうして中央アジア侵入の拠点を築いたのである。


アレクサンドロスはベッソスを追跡してオクス川を渡った。


渡河点はケリフ付近であった。オクス川は当時川幅1kもあり、大変深かった。


後年アドリアンもここを渡ったが川幅は当時よりも狭くなっており、


300mほどであった。


アレクサンドロスの軍勢は船の代わりに革袋を作り、


中に葦をつめた浮き袋を利用した。全軍の渡河には、数日を要した。


一方スピタメネスらは、ベッソスを指導者のままにしておけば


反アレクサンドロス抵抗運動が出来ないと判断してダリウス3世


からベッソスが奪って身に付けていた王冠と衣服を剥ぎ取り縛り上げた。


アレクサンドロスに使者を送り、ベッソスを引き渡すと告げさせた。


プトレマイオスを長とするベッソス捕縛部隊が到着した時には


少数の部下に守られたベッソスだけがいてスピタメネスらは


ソグディアナの奥地に消えていた。アレクサンドロスはベッソスの身柄


をダリウス3世の親戚に引き渡した。


彼らはバクトラでベッソスを八つ裂きにした。


アレクサンドロスはナウタカを占領し、マラカンダ「今のサマルカンド」


に入城した。更に北方のタナイス川「今のシルダリア川」


方面へ軍を進め、アレクサンドリア・エスハータ


「今のホージェント付近」と云う都市を建設した。


ここからスピタメネスらは激しい抵抗を見せ始めた。


アレクサンドロスの本隊が北方で攻撃している間に


マラカンダのギリシャ守備隊を攻撃し、


シルダリア川流域にいた遊牧のサカ人やマッサゲタイ人の部隊も


反ギリシャ勢力として立ち上がり、スピタメネスらと協力してアレクサンドロス


を悩ませた。キロポロスと云う街では住民の激しい抵抗に会い、


アレクサンドロス自身、頭に石が当たって傷を受け、


クラテロスら数人の司令官達も矢傷を負った。


特にスピタメネスらはポリティメト川「今のゼラフシャン川」


の岸辺でメネデメス指揮下の約2,000名のギリシャ兵を倒した。


これは東方遠征を通じてギリシャ軍の最大の損害であった。


これを契機にアレクサンドロスは最大の敵としてスピタメネス


を徹底的に追跡するようになり、2万名のソグド人を殺して


スピタメネスを追跡した。スピタメネスは決戦を避けて北方の草原に逃げた。


アレクサンドロスは西方の援軍を得て追撃した。


スピタメネスはゲリラ的にケノスの指揮するギリシャ軍を襲撃したが、


800人の部下を失って敗退した。


この失敗が致命傷になり、協力関係にあったマッサゲタイ人にまで


輸送隊を略奪される有様だった。


スピタメネスの妻ザーラは夫とともに苦難に満ちた逃亡生活を続けていたが、


遂に疲れ果て、夫に対してこれ以上アレクサンドロスに抵抗しても無駄だから、


家族のためにも、降伏してくれるよう懇願した。


3人の成人した息子達にも父親に降伏してくれるよう頼んで欲しいと云った。


スピタメネスは彼女の真意を誤解し、ザーラが裏切るつもりだと思い込み、


口論の末に剣を抜いてザーラを殺そうとした。


ザーラの兄弟達に引き止められ、その場は納まった。


しかし夫婦の心はともに深く傷ついた。


スピタメネスはザーラにもう顔も見たくないと言い放ちその晩は


あてつけのように娼婦と寝た。ザーラは更に傷ついた。


一夜明けてスピタメネスは、自分がどんなに深くザーラを愛しているかを悟り、


ザーラに向かってどうかアレクサンドロスに降伏することなど考えずに


今までと同じ様に自分と一緒に居てくれるように頼んだ。


ザーラはいかにも納得したような素振りをしたが、心中では夫を憎んでいた。


スピタメネスはザーラと和解できたことを喜び昼間から酒宴を始めた。


ザーラは、彼がすっかり酔いつぶれ、寝込んだのを見届けてから、


スピタメネスの脇にあった剣を引き抜いて刺し殺し、


その首を刎ねて腹心の奴隷に持たせアレクサンドロスの陣営を訪れ、


アレクサンドロスに首を見せた。


アレクサンドロスは宿敵のスピタメネスを殺してくれたことを感謝する反面、


彼女が3人の子の父親である自分の夫を殺したことを不愉快に思った。


アレクサンドロスは少し考えて


「その首を置いて、即刻この場を立ち去れ」と命じた。


ここまではアリアノスの「アレクサンドロス遠征記」による物である。


作家イリヤソフの小説「ソグディアナ」によると


美貌のザーラが幾度か結婚を繰り返す内に、はるか西方のシシリー島


まで流れ着き、「なかばつぶされたミミズのような」


惨めな姿で物乞いをしながら98歳まで生き延びたことになっている。


その間、若くして死んだアレクサンドロスをはじめ、


彼女と同時代の多くの英雄や武将達がこの世から消えていた。


彼女は時折、ギリシャの詩人エウリピデスの詩句を口ずさむ。


「死を望むものは愚かだ。栄光の中で死ぬよりも、


悲運の中で生き長らえる方がましだ。」


また、故郷ソグディアナの方から吹いてくる東風のときには、海辺に出て、


打ち寄せる波の音に、何十年も前に彼女の手で殺されたスピタメネスの、


「ザーラ、ザーラ…」という断末魔の叫びを聞いたことになっている。


この書物は多くの国々で訳され、無数の人に読まれてきたが、


読む人達の殆どはアレクサンドロスと同じような不快感を抱いたことだろう。


1370年4月上旬の日曜日午後11時…アストラハン宮殿


レオノーラ17歳がやって来た。快活な女で母親と同じ様に読書好きだった。


アリアノスの「アレクサンドロス遠征記」とは少し違う伝承の物語


を聞かせてくれた。


数ヶ月の逃避と戦闘に耐えられなくなったザーラの裏切りによって、


スピタメネスが寝首をかかれる話は「アレクサンドロス遠征記」に描かれているが、


伝承では「当時18歳のザーラが、アレクサンドロス側についた実父オロベスの


意思に従って、夫に投降をすすめる。しかし、スピタメネスはこれを拒否する。


ザーラはついに、実父の差し向けた刺客に間接的に手を貸し、


夫の首級はアレクサンドロスの前に届けられる。」


最後の結末は同じであるが、これなら少し救われるような気もする。


何れにしてもこの親子はアドリアンが知っている遊牧民の女達とは毛色が違う。


アドリアンは思考を打ち切り、まぐわいをする気になった。


女達はアドリアンが陰毛を嫌うことを熟知し、


定期的にシャボンと剃刀で下の毛を処理するようになった。


牛乳風呂にも毎日浸かり、肌の色もツヤツヤになり見違えるほど綺麗になった。


アドリアンも朝夕の訓練を欠かさず行いペニスは完璧に鍛えられ、


以前にも増して女達の欲求は十二分に満たされた。


体位についても工夫し、毎回異なる体位を試みた。


若いレオノーラには素股からクンニリングスを多用した。


またペニスの味を覚えるため出来るだけペニスが膣内に留まるように心掛けた。


射精は一度しか行わない代わりに硬く勃起した一物を朝まで入れておき、


抜かないのである。


レオノーラは快楽を貪った挙げ句に疲れ果ててぐっすりと眠りに着いた。

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