第6話…イスファハーンなど攻略…エピソードⅢ

1370年1月上旬の水曜日午前5時…バグダッド城


何時もの時間に目覚めたアドリアンは遠征の準備を整えた。


ヤロスラフにクーファとモースルの残敵を掃討するように指示した。


またムカリにはガズヴィーン、ハマダーン、スルターニーヤ、


クルディスタン全域の残敵を掃討し、タブリーズからカラ・バーグに


向かうように指示した。アドリアンは2万名の騎馬弓兵と5,000名の


騎馬銃部隊を残してタブリーズへと向かった。


アドリアンはデヴシルメ徴兵制を採用した時、部隊の編成を少し変えた。


今まで軍隊の主力は騎馬遊牧民だったが、非征服地の定住民が増えるにつれて、


定住民の比重が騎馬遊牧民と同じ位に大きな役割を果たすようになったのである。


定住民やアドリアンの妻妾達は歩兵の他当時の砲兵と云うべき投石機、


城壁・城塞破壊機、大砲ラダンドズ、カービン銃等の扱いに従事した。


妻妾達にはカービン銃や照準器付きのライフル銃を持たせた。


アドリアンは一定数の騎兵と歩兵が必要な場合、自分の命令を遂行する


徴募官タワチーを各地に派遣した。


徴募された兵士は自分で1年分の食糧と4種の武器、弓、矢30本、矢筒、


盾等を用意した。また騎兵の兵士2名に付き1頭の予備の馬、1張りのテント、


シャベル2丁、鍬1丁、鎌1丁、斧1丁、錐1本、針100本、


半マン…マンは重量の単位…の縄、毛皮1枚、釜1個を携行することになっていた。


前衛マンキラは数万人からなり、先頭に尖兵せんぺいが進んだ。


★尖兵…前進部隊の前方、退却部隊の最後尾または前方を移動し、敵状を探り、


敵の攻撃を警戒する小部隊。その役目の兵。


斥候ハバルギリは極めて重要であった。これは選り抜きの勇敢な兵士であった。


遠征に於いては先導兵カチャルチが特に重要な役目を果たした。


アドリアンは自ら各部隊に先導兵を割り振った。アドリアンは出発した。


タブリーズでテムジンと合流した。


テムジンにはムカリと共に西のアナトリアを征服し、


ブルサに拠点を建設して駐屯せよと命令した。


テムジンには金塊1万トンを支給した。


アドリアンは直ちに冬営地のカラ・バーグに向かった。


カラ・バーグ地方のバイラカーンと云う小さな街で冬営するのである。


1370年2月上旬の日曜日午前5時…バイラカーンの街


軍隊5万名を残してトビリシに向かった。


5万の軍はバイラカーンの街を復興させるためである。


タブリーズ位の地方都市にする積もりだ。


この街から南のアラス川に運河を引き灌漑施設を作り、農耕を発展させるのだ。


冬営すると見せかけて、トビリシ、デルベントの2つの都市を占領する。


その後は一路アストラハンから草原の道を通って大都に行くのだ。


★当時の西アジア情勢…オグズと呼ばれていた中央アジアのチュルク系遊牧民族


が10世紀以降になるとトゥルクメーン…チュルクに似た者と云う意味という名で


呼ばれるようになり、その一部はセルジューク朝などのイスラーム王朝を建てた。


此れが第一波である。


第2波はチンギス・ハーンのホラズム遠征に触発されて起こった。


彼らは程度の差こそあれイスラーム教徒になったが遊牧民としての


生活を守っていた。彼らの移住地は、遊牧地の豊富な北西イラン、


イラク、トルコのチグリス川、ユーフラテス川流域だったが、


フラグはイランからあらゆる遊牧民の移動を命じたので、


イル・ハン国の時代トゥルクマーン人の殆どはシリア、イラク、


トルコに集中し、イル・ハン国やマムルーク朝のスルタンに従っていた。


14世紀に入ると、トゥルクマーンは各地で地方国家を形成し始める。


チグリス・ユーフラテス流域ではカラ・コユンル、アク・コユンルの2集団が


出来上がる。


もっと西のほうではオスマン朝の元となるカユ族の集団も出来上がる。


イル・ハン国アブー・サイドがイラン土着の領主を政権に登用する政策


をとった時、トゥルクマーンもイル・ハン国の国家体制に統合された。


イル・ハン国がジャライル朝に替わるとジャライル朝に服属した。


★説明終わり


カラ・コユンルの中心となったバハルル族を率いたバイラム・ホジャ


とその息子カラ・ムハンマドはヴァン湖北岸を夏営地、モースルを冬営地


とする遊牧生活を送り、ジャライル朝に服属していた。


アドリアンがジャライル朝を滅ぼした時、彼らはアドリアンに降伏した。


アドリアンは彼らを組み入れモースルの軍政長官に任命した。


アドリアン軍はトビリシを簡単に占領し、トレビゾンドに攻め込んだ。


トレビゾンドは簡単には落ちなかった。


かなり抵抗されたが1ヶ月の攻城戦の結果降伏した。


トレビゾンド皇帝のアレクシオス3世と息子達を処刑し、


配偶者のテオドラ・カンタクゼネ30歳を側室にした。


1万戸長の1人アレクス21歳を軍政長官に任命して駐屯させた。


年俸として金のインゴット100枚を支給し、軍政資金として金塊10トンを渡した。


ここでテムジンから早馬が届いた。


ディヤルバクルを落とし、アク・コユンルのカラ・ユルク・オスマン以下


を処刑した。后のアレクシオスの娘をそちらに送ると報告があった。


ムカリを駐屯させてテムジンはオスマン帝国を打倒せよと指示した。


1万戸長の1人バヤジット16歳をディヤルバクルの軍政長官に任命した。


年俸として金のインゴット100枚を支給し、軍政資金として金塊10トンを渡した。


ムカリはシリアに向かった。アドリアンは安心してデルベント砦を攻略し、


アストラハン…元のハジ・タルハンに向かった。


★アドリアン20歳

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