第48話 家に帰るまでが遠足

俺たちは――まだバスの中に居た。


確か俺は平和に1人で寝ていたはずだったのだが……。


なんか静かというか。うん。バスがあまり動いてないというか。変な感じが多分したんだろうな。集合場所を出発してからしばらくは快調に走っていたとか思っていたのだが。いつの間にか寝て……うん。今ちょっとした違和感というのか。まあバスがのろのろということに気が付きふと目を覚まし外を見てみたら……まだ高速道路上だった。


周りを見てみると。寝ている奴もいればなんか楽しそうにしている人も……と、まあ車内は普通なのだが。俺が気になったのは現在の時間だった。


スマホで現在の時刻を確認すると。


「—―17時45分」


この時間は予定ではすでに学校に到着しており。もしかしたら部屋でくつろいでいてもおかしくない時間だったが。まだバスは高速道路上。


ってスマホを見て気が付いたが。メッセージが30分くらい前からいくつか来ていた。


「……古市に……吉野か」


メッセージを確認してみると……。


「葛先輩のクラスは今どこ走ってますか?」

「寝てますか?」

「ちなみにこっちはまだ高速道路です」

「起きたら返事くださいね。暇です」


と、言うのが古市からだった。


で、吉野からは――。


「バス動かない」

「早く帰りたい」

「先輩の馬鹿ー」


だったが……。


おい、吉野のこれは何だ。最後なんて意味わからんぞ。馬鹿って。なんで俺が言われないとなんだよ。であった。


とまあ一応見たので返事を2人に送った。


「寝てた。でこっちもまだ高速道路上。なんかトロトロ走っている感じだ。渋滞か?」


というのを古市に。


「吉野。八つ当たりをしないで大人しくしてろ」


と、言うのを吉野に送ると……。


♪♪


「やっと起きましたか。なんか事故渋滞みたいですね。予定より2時間くらい遅れるってこっちは今さっき先生が言っていました」


と、古市からすぐに返事があり。それを読んでいると……。


♪♪


「先輩、私に対してのメッセージが冷たいです。古市さんには普通に返事してるのに……」


と、返事が来た。ってそうかあの2人隣同士か。と、俺は気が付いて……。


「古市。このメッセージ。隣のオバケちゃんも見ているのか?」


と再度返事を送ってみると……。


♪♪


「先輩。あとで覚悟していてください!」


とメッセージを送っていない方から先にメッセージが返ってきて――ってまあこれで2人は隣同士ということは確定か。


♪♪


「バッチリ見てますよ。今プンプンですよ。夜空ちゃん。角生えてますね。かわいいですよ」


その後に古市からメッセージが返って来た。

うん。角が生えているのにかわいいってなんだよ。だったな。


と、その後はまあ2人となんやかんやとやり取りをして……。


それから少ししてやっと高速道路を降りると快調にまたバス走り出した。そして薄暗くなりだした頃に学校へとバスは無事に到着した。


ちなみに上級生から順番にバスは発車していたので俺の乗るバスが着いた頃には3年の人たちがすでにバスから降りて帰っているところだった。


で俺たちも下車。


「久遠。帰らないのか?」


バスを降りてからもその場を離れていなかった俺に気が付いた讃大がまた寄って来た。こいつ。ほんと 俺を探すのが美味いというか。絶対監視してるよな。うん。


「ああ、古市の手伝いだな。一応約束してるからな」

「あー、そういう事か。ってあのバスじゃないか?1年生は」


と、讃大と話しているとバスが数台また学校の敷地に入って来た。


そしてある程度の1年生が降りて最後の方に……。


「あっ葛先輩。讃大先輩」


と、吉野とともに降りてきた古市に声をかけられた。


「元気そうだな、楓華」

「まあ元気は元気だろうな。だが無理をされるとだが……」

「足だっけ?」

「ああ」


と、讃大とともに古市、吉野のところに行くと……って。


「吉野?どうした?」


近付いて気が付いたのだが。古市が支えられているではなくて……支えているという状況だった。あれ?なんでだ?逆なはずなんだが……何があった?


俺はそんなことを思いつつ吉野を見る。

すると――。



「……先輩。バスで酔いました」

「はぁ……とりあえずそのあたりに座ったらどうだ?」


俺は古市から吉野を受け取った。そしてなんかふらふらのオバケちゃんを階段のところへと座らせた。


「あっ、讃大先輩。ありがとうございます」


後ろでは……まあ讃大が古市の相手をしてくれているみたいで。古市の荷物を讃大が持ってやろうとしているところだった。


で俺の横では……。


「……バスの中でスマホとか……無理だった。しちゃダメな事だった」


とか言っている奴が居た。


「スマホしてて酔ったのか?」

「多分……今まであまりスマホを使いながらバスってのることなかったので」

「なるほど、なんか飲み物とか欲しいか?」

「……お水」

「ならちょうど持ってるぞ」


とちょうどバスが途中パーキングエリアで止まった際に買っておいたミネラルウォーターが俺のカバンにはあったのでそれを取り出して差し出す。


「……先輩の飲みかけは…間接キスさせたいんですか?弱っている後輩に……」

「違うからな。よく見ろ。新品だよ。ってかなんやかんやでいつも通りじゃないか?」

「……ありがとうございます」


まあなんやかんやと言いつつ。吉野は俺から水を受け取ると。一口飲んでいた。


すると。


「大丈夫?夜空ちゃん?」

「あ、うん。大丈夫」


古市がこっちへやって来た。って……あれ?讃大が居たはずなんだが……なんで古市1人になっているんだ?と、俺が思いつつ周りを見ていると。


「あっ、葛先輩。讃大先輩は先生に呼ばれて職員室へと行きました」

「……役に立たんな。って古市。足大丈夫か?」

「あ、はい。ちょっと痛いですが。大丈夫です。安静にしていたら大丈夫って言われたので明日からの休みは大人しくします」

「まあそれが正解だな。って家までどうするんだ?親とか呼んだのか?」

「まあ……ゆっくり歩いて行こうかな?と多分まだ親居ないと思うので」

「大丈夫かよ。何なら家くらいまでならまた運ぶぞ?」

「えっ?……ですか?」

「うん?悪い。なんて言って?古市」

「……その。いいんですか?」


と、遠慮気味に古市が言ってきた。


「いや、まあ無理されてもだし。別にこれぐらいいいが」

「……じゃ、もう少し人が減ったら……お願いしようかな。今はクラスの人とかまだ居ますから」


と、言いながら古市は吉野の隣に座った。吉野は……なんか俺を睨んでいた。ってなんで睨まれてるんだよ。俺は。


「……何だ。吉野」

「……先輩そうやって言って古市さんの身体触りたいだけとか?」

「吉野はもうすっかり元気になったな」

「も。もう」

「いつも通りじゃないかよ。ってまあ無理はするなよ?」

「……はぃ」


と、2人と話していると。周りの生徒はかなり減って。空もさらに暗くなってきた。すると。


「あれ?まだ居たのか」

「うん?ああ。生徒会長様登場か。呼び出しは終わったか?」

「ああ、で、なにしてるんだ?」

「ちょっと人が減るの待っていたんだよ」

「うん?」

「って。古市。讃大に運んでもらったらどうだ?」


と、俺が言ってみると……・。


「なっ……そ、それは……その。何と言いますか……恥ずかしすぎるので……それなら自分で歩きます」

「俺の時は普通に乗っていたよな?」


うん。古市よ、今チャンスだろ、甘える。とか俺は思っていたんだが……どうやらなんか違ったらしい。


「あー、そういう事か。向こうでも楓華。久遠に運ばれていたんだもんな」

「なっ!?な、な、なんで讃大先輩そのこと知ってるんですか?」


と、古市が立ち上がり讃大の方へと。って足を引きずりながら移動するなって。安静はどこ行ったんだよ。古市よ。


「一部で噂になっていたらしいぞ。古市」


一応古市がズッコケたりしないようにと。俺は古市の横へと移動しつつ言った。


「そ、そんな……来週から恥ずかしいじゃないですか。おんぶされていたとか」

「いやでも、無理に歩かれて悪化さっれるよりはだからな」

「そうだな。無理はしない方がいいと思うぞ楓華?」

「そうですけど……って……じゃあ葛先輩。家までお願いします」

「俺にはさらっと頼むのね」

「久遠はいいな。頼られてて」

「……なんか生徒会2人にいいように利用されている気がしてきたんだが……」

「そんなことないぞ?」

「ないですよ」

「……どうだか。ってあれ?」

「うん?どうしたんですか?葛先輩」

「いや、吉野は……どうした?」

「えっ?」

「そういえば……ついさっきまで居たよな。吉野さんも……」


と、俺と古市。そして讃大が周りを見るが……吉野の姿がな。あれ?今さっき。讃大が来る直前までここに居たはずなんだが……。


とか思っていると。ちょうど俺たちの隣を通過しようとした生徒たちが讃大に声をかけたので――。


「ああ久遠。楓華。ちょっと悪い」


と、讃大は何か話があったらしく。声をかけてきた生徒の方へと向かった。ってホントよく周りから声をかけられる奴だな。とか思いつつ……。


「吉野はどこ行った?トイレ?」

「かもしれないですね。私たちが話していたから声をかけにくくて……ってこともあるかもしれません」

「でも……昇降口は閉まってるよな?」

「あー、そうですね。多分職員玄関の方だけは開いていると思いますが……」

「そっちに行ったんだろう。って電話すればいいか」

「あっ、そうですね。私掛けてみます」


と、古市が吉野に電話を掛けた。


♪♪~


「……でませんね」

「……」

「どうしたんですか?葛先輩」

「いや、なんで急に吉野が居なくなったのかってな。いつ居なくなった?って思ってよ」

「確か。讃大先輩が来る直前までは話していたと思うんですけど……」

「だよな。俺もそんな気がしている」

「その後ってことですよね?」

「だよな」

「ってことは……葛先輩が讃大先輩に私を運ぶように言った時……ってそうですよ。先輩いきなりあんなこと言わないでくださいよ」

「うん?いや讃大に運んでもらえるんだぞ?」

「まあ……それは……ってのもあるんですが。もしそんなのがバレて噂になったら……私集中攻撃ですよ。一部の人から下手したら……嫌がらせされちゃいますよ」

「……あー、なるほど、怪我を理由に讃大に甘えていたと」

「……そうなる気がします」


なるほど、そうか。讃大に近寄りたい生徒はたくさんいる。そんななか。よく一緒に居る後輩が讃大を頼って……ってまあ怪我してるんだからこういう時は。と思うが。まあ噂はな。偽情報とかも普通に混ざるからな。厄介なんだよな。うん。


「怖いな人気者の世界は」

「……だから葛先輩には運んでもらえるんです」

「さらっとお前はぼっちだ。って言ったか?」

「—―言ってませんよ」

「……間があったな。まあ別にいいがって、ホント吉野はどこ行ったんだよ?もしかして俺たちが話していてなかなか帰らないから先に帰ったか?」

「あー、そういうこともあるかもしれませんね。あの時夜空ちゃんが入れる会話していなかった気がしますから」

「なんというか。とりあえずどうす……」

「うん?どうしたんですか?先輩?」


俺はふと周りを見つつ話している時。俺ならもし吉野の立場に居たらどうするだろうか。とかふと考えていた。


他のメンバーが話していて。自分はその会話に入れなくて……なんか。まあ仲間外れみたいにもし思ったら……そっとその場を立ち去る気がする。

そして今古市と話していたが。ふと。周りを見ている際近くの校舎の影が気になった俺だった。

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