第30話 男のみ

翌日の生徒会室は男2人だけだった。


男2人である。誰がこんな光景を知りたかったのだろうか……って俺は何を言っているのだろうか。まあいいか。


「……」

「なあ、久遠」

「なんだ?」

「楓華が居ないと静かだったんだなこの部屋」

「だな。まあ話すことないし。早く終わらせたいから静かなのはいいことだろ。あと人手不足頻発しすぎなのは学校側に言うべきかと」

「大丈夫だろ。久遠居るし。俺も呼びやすいし」

「おい、便利屋じゃないからな?あと讃大は古市を大切にした方がいいぞ?」

「うん?してるぞ?貴重な戦力だからな」

「いや……まあいろいろとだよ。最近前ほど古市が讃大讃大言わなくなった気がしてな」

「そうか?」


うん。わかった。あれだ。讃大あまり気にしてないというか。みんながいつも集まっているから。古市も同じような扱いになっているのかもしれない。


俺がそんなことを思っていると――。


「っか、久遠」

「なんだ?」

「実はさ。俺今から先生と打ち合わせあるから続き任せるわ」


とか言いながら立ち上がり。なんか荷物をまとめている奴がいる。いやいやいやおかしいからな?と俺は思いつつ。


「待て待て待て待て」

「じゃ、頼んだ」

「待たんか!」


讃大少年よ。突然抜けるのかい!

って、本当にそのまま讃大は生徒会室を出ていった。マジですか……あれだ最近讃大といる時間が長いからか。マイナス面もよく見る気がしてきた。うん。


っか、ついに生徒会室に生徒会役員0人の日が来てしまった。これはダメだろ……。

ちなみに楓華がいないのは前に言っていたがクラスの日直の作業があるかららしい。


讃大は……まあ先生となんかあるんだな。まあなんやかんやである程度は讃大は終わらせているから……なんも言えねー。っか俺の作業スピードおっそいなー。


……。

……。

……。


……。

……。

……。


しばらくマジで1人の時間が続き――。


「—―なんで俺1人で生徒会の仕事手伝てるんだか」


まあ誰の返事もない。静かな部屋で俺がたまに紙をめくる音と紙をまとめる音がしているくらいだった。


にしても……進まん。めっちゃ時間かかる。


って、ふと気が付いて時間を見ると17時30分。


あれ?なんで生徒会役員は誰も帰ってこない?古市はクラスの当番が終わったらくるかと思ったのだが――。


そんなことを思いつつゆっくりだが作業をしていく俺。真面目ー。って、いや、帰りたいが。生徒会室の戸締りできないし。多分鍵は讃大が持っている。なので――俺が居なくなると――まあちょっと問題が……。

ってことだな。だから俺は仕方なく。真面目に作業をして待っている。


――すると。


ガチャ。


「遅くなりましたー。まだやってたんですね……ってあれ?葛先輩1人ですか?」


古市がやっと登場した。


「1人1人。って、生徒会役員は何してるんだよ。どっちもいないとか」

「讃大先輩はどうしたんですか?」

「消えた」

「……消えた?」

「職員室じゃないか?で、多分讃大が鍵を持っているから俺は帰れない。が、現状だ」

「なんかおつかれ様です。ちなみに私は遅くなった言い訳をしますと。告白されてちょっと揉めてました」

「……なんて返したらいいんだ?」


うん。いきなり告白されてきました。とか言われても……なんて言い返したらいいんだよ。って揉めてた?


「私は何度も断っているのにしつこいんですよ。ごめんなさい。って10回は言いました」

「……お、おつかれ?」

「で、それでも付いてくるから大変でした」

「結局どうしたんだ?」

「しつこい人は嫌いです。さようなら。です。何度も言ってスタスタこっちに来たのでそのあとはわかりませんが……ちょっと怖いくらいでしたよ」

「—―なんというか?まあほんとおつかれ」

「ホントですよ。あっ、そうそう、葛先輩もなかなかひどいですねー。多分待っているのに気が付いてないですよね?」

「はい?」

「だって……夜空ちゃん夜空ちゃんいつまで隠れてるの?」

「……はっ?」


古市が廊下の方を見るのでそちらを見ると――なんか影が。って今古市が名前を言ったか。


「……吉野。何してるんだ?」

「……先輩がなかなか出てこないから……ずっと待ってました」


廊下からオバケ……訂正。吉野が顔を出した。


「もしかしてまた待ってたのか?」

「ずっと」

「なんか――悪いな」

「暇だったです。とっても」

「っか、来いよ。連絡しろよ」

「まあまあ葛先輩もちゃんと後輩のこと見てくださいねー。で、讃大先輩探しに行きましょう。今日はもう帰りたいですし。疲れたから何もやりたくありません」

「まあ、時間的にもだからな。っか讃大は何してるんだか」


とか話していると。


廊下の方で足音がして……。


「悪い悪い。遅くなった」

「やっと帰ってきたか」

「ですねー。サボり先輩ですね」

「いやいや俺は遠足のだな」

「ちなみに古市も来たばかりだがな」

「あー、葛先輩それ言っちゃダメなやつですよー、もう」


パンパン。


軽く古市に背中を叩かれた俺だった。


「はいはい」

「とりあえず讃大先輩わたし達は帰るので片付けよろしくお願いします」

「え?マジ?」

「ほらほら夜空ちゃん、葛先輩」

「俺も?」

「そうですよ?当たり前じゃないですか。夜空ちゃんずっと待っていたんですから」

「ちょちょ、古市」

「おーい。ちょっとー。もしもーし。楓華?久遠?吉野さんもちょっとー」


讃大が何か言っていた……が、俺と吉野は古市に背中を押されてそのまま生徒会室を後にした。


「古市よかったのか?讃大放置で」

「はい。問題ありません。これで讃大先輩はわたしが気になりますからね」

「いやいや、それはわからんが……まあ気にはするか。って、いつまで背中押すんだよ」

「家までですかね?」

「なぜに?って、吉野大丈夫か?無言だが」

「はい。急だったのでついていけてないだけです」

「なら……まあよしか」


そんな感じで結局下駄箱まで3人でやって来た。まあさすがに下駄箱ではバラバラになったが。各自靴の場所が違うからな。っか、外を見るとなんかどんよりした雲が広がっていた。明日は雨だろうか……嫌だな。


とか思っていると。すぐに2人が俺のところに戻ってきた。すると――。


「夜空ちゃんは今日も1人なの?」

「え?あ、うん。おばあちゃんいないから」

「じゃ大丈夫だね」

「えっとなにが?」

「これから3人でご飯食べに行こうよ」


古市がそんなことを言い出した。古市ってたまに突拍子というか。急になんか言い出すんだよな……。


「いやいや、もう下校時間からかなり経ってるし遅いぞ?」

「大丈夫ですよ」

「なにが?」

「今日わたしのところも親が留守なんですよ」


楽しそうに笑顔でそんなことを言う古市。


「なんとまあ」

「で、好きなもの食べなさいでお金もらってますから奢りますよ?」

「いやいや、後輩に出させるのは……って、留守?」

「はい。なんか用事?で実家の方に行っています」

「古市はよかったのか?」

「わたしは関係なかったので。留守番です。だから夜空ちゃんも1人なら一緒に食べようよ」

「あ――うん。いいのかな?」

「いいよいいよ。さあ先輩。行きましょう」

「待て待て天気もなんか怪しいし。まっすぐ帰れよ」

「大丈夫ですよー。さっき調べたら天気は曇りって言ってましたから」


まあ結論。俺の言う事なんて聞いてもらえず――女子2人はそのまま……そのままお店へと向かったのだった。


――だが。


「混んでましたねー」

「だね。普段来ないから知らなかった」


家とは別方向のファミレスに向かったのだが。時間が悪いというか。まあ1番混む時間だったので満席。近くに店が少ないからか。結構外でも待っていたため諦めて大人しく自宅方面へと現在は歩いている。


「お腹すいたー」

「うん」

「わざわざ遠い方に歩いたからな」

「葛先輩」

「うん?」

「どこかお店ありませんかね?」

「まあこの辺り少ないからな」

「ですよねー。田舎ですから」

「ねぇねぇ」

「どうした?吉野」

「その……ピザとかは?」

「ピザ!」


急に古市のテンション上がるである。


「あー、なるほどピザ屋はあるな」


確か元コンビニの跡地にできたピザ屋。うん。人が居るかは微妙だが――。


少し歩いていくと……営業はしているみたいだった。あれかな?ピザはみんな宅配かな?とか思っていると。


「葛先輩。行きますよ」

「あっ、えっ?即決まり?」

「先輩早く」

「吉野もかよ」


女子2人はピザが食べたいらしい。

俺の前にはちょっとテンション高めになった2人が居た。


――。


そしてしばらくして家に帰宅。


「また葛先輩の家ですね」

「……おかしいな。なんでこうなった?」

「失礼します」

「吉野は普通に入ってくのかよ」

「あ、まあ、何回か泊めてもらった場所ですから」

「いやいや、なんかおかしい気がするが」

「とりあえず食べましょうよ。出来立てですよ」

「まあ……まさかのピザ祭りだしな。おまけに持ち帰りは1枚無料やらしていたから2枚。まあとりあえず食べるか」

「はいはーい。葛先輩早く」

「わかったわかった」


なぜか俺の家に帰ってきた。そして。


「いただきまーす」

「いただきます」

「……ホントなんでこうなった?」


机にはピザが2枚。めっちゃうまそう。なんだが。女子2人が居るというのがね。まあ……知らない人ではないからな。うん。とりあえず――冷める前に食うか。


「やばっ。久しぶりだけど美味しい」

「うん。たしかにピザ久しぶりかも」

「1人暮らしでピザは冷凍のくらいだならな」

「チーズ伸びるー」

「古市テンション高いな?」

「だって夜に先輩の家に転がり込んでピザ食べてワイワイってなかなかないですからね」

「まあ……ないな。って吉野。1枚食べたら周りが2枚目行くまで待つとかしなくていいからな?」


俺は早々と1枚目を完食して……何故か待機していた吉野に声をかけた。


「し、してないですよ」

「今待ってただろ」

「……」


うん。図星だったらしい。特に吉野は何も言い返してこなかった。


「わたしも2枚目ー、あー、これは太ったら葛先輩の責任ですね」

「意味不明。あ、飲み物出し忘れたわ」


俺は冷蔵庫に飲み物を取りに行き2人に渡した。よかったー。買い物したばかりで飲み物はあって。


「ありがとうございます」

「あ、ありがとうございます」

「っか、一気にピザ減った!?」


おかしいななんか俺がちょっと飲み物を取りに行っている間に……こいつら3枚目か4枚目に入らなかったか?そんなに腹減っていたというか……。


「……気のせいですよ」

「……美味しいから」

「待て待て2人ともペース早いから」


結局ピザ争奪戦により3人であっという間に完食。


「食べたー、あははー。お腹ぽっこりです」


とか古市が言っているが全くぽっこりしているようには見えないのだが……いや、見たいとかじゃないからな?間違えるなよ?


「あー、吉野。片付けはするから大丈夫だぞ?」


ちなみに吉野は食べ終えるとすぐにゴミの掃除を……ってこれが吉野の普通なんだろうな。すぐに片付けをしようとしてくれたからな。


「大丈夫です。ゴミ袋ありますか?」

「あるある」


まあ俺が言ったところで吉野は止まらず。吉野は食べたらすぐに片付けモードへと変わっていた。めっちゃいいお嫁さんになるタイプと確信。オバケちゃんしっかり者ですわ。


「っかさ、2人とも送るから休憩したら帰る準備しろよ?」

「動きたくなーい」

「おい。副会長。だらだらすぎだろ」

「先輩のところなんか居心地良くて。帰っても1人ですし。もう少しだけ……」


古市は背伸びをしながらまったりくつろいでらっしゃった。


その時。


ゴロゴロ――。


「……?うん?雷か?」


ゴロゴロ…………ゴロゴロ……。


なんか外から嫌な音が聞こえてきた。古市がスタスタとベランダの方に様子を見に行くと……。


「あー、雨降ってきた」

「うそ?」


古市の声を聞いて吉野もベランダへ。


すると。


――ピカ。


急に外に光が……と思ったと同時くらいに。


バッシャン!


「きゃあ!」

「きゃっ!」


うん。光った。と思ったら。すぐにかなり近い位置に雷が落ちたらしく。ちょっと地響き?もあった。おいおい、こんなに天気が急変するとか聞いてないぞ?


「く、葛先輩」

「先輩」

「ち、ちょ、ちょ、なんだよ」


気がついたら両腕に人が捕まっていた。なんかものすごい勢いで美少女とオバ……訂正。多分美少女さんが飛んできた。


「怖かったー。今のはやばいですよ。急すぎますよ」

「うんうん、近かった。怖かった」

「吉野の方がホラーかと」

「はっ?」


やっばっ。なんか言葉を間違えたみたいで片腕だけ急にマイナスの世界に入った気がする。


「怖い吉野さん怖いから。って、2人とも動けないんだが」

「葛先輩危険ですよ。外」

「だなそれはわかった。だから離れろ」

「だから」

「だから?」

「泊めてくださいよ」

「な?」

「はい」

「……先輩。私も……傘も何もありませんし」

「まてまて」

「先輩の家部屋余ってますよね?」


まあ余ってるな。って、吉野よ。おまえはなんやかんやでもう何回かもう使ってるよな?


「もう遅いですし」


ゴロゴロ。となる中、古市がさらに言い――。


「……雷怖いですから。それに危険。外危険」


なんか吉野も泊めろアピールがすごい。どーしろいうんだよ――。


「……なんもないぞ?」

「大丈夫です!」

「……はぁ……吉野。前に使った部屋を古市と使え」

「ありがとうございます。あ、古市さん部屋はこっち」

「わーい、葛先輩大好きー、ありがとうございます!」

「はいはい……あー、どうしてこうなった」


女子2人は……急に怖くなくなったのか。ゴロゴロまだ外では聞こえるんだがな……でもまあ部屋の確認が先なのか吉野と古市は廊下の方へと移動していった。

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