第22話 全校集会

 学校で全校集会があった。


 前に讃大が練習していたのはこれだったようだ。なんとまあ、素晴らしいというか。当日は完璧であった。讃大にミスってないんだよなー。そりゃ先生らからの信頼もすごいわ。

 そしてその集会時に俺が手伝ったあの資料が配布された。

 

 いや、作っていたから知っていたのだが。俺が手伝っていた資料の山は来月にある校外学習の資料である。


 校外学習は学年ごとではなく。全校生徒一緒に行くらしい。なんか地域に出て各自が気になるところを調べるというか。地域の歴史?とかまあなんでもいいらしいが。気になることを調べるらしい。まあいろいろ見て回り課題?をまとめないといけないんだと。

 資料が多かったのは間にまとめ用のスペース。記入用の紙などがあるからだ。


 ちなみに去年はこんなことなかったと思ったので生徒会室で資料を作っている時に讃大に聞いたら、今年からだと。なんか新しいことを。みたいなことで作られたやらやら。


 また学校は面倒なイベントを……と、俺が作りながらつぶやいていたら。


「えー、学年超えてグループ作って施設を回れるのはいいことだと思いますよ?」


 とか、古市に言われた。

 そうこれ1人でぶらぶら回ってまとめればいいではなく。


 最低2人、なおかつ他学年が1人以上混ざってないといけないとかいう意味のわからないルールがある。ホント意味わからない。誰だよこんなこと考えたの。


 こんなん友達いない子どうするんだよ?組めないからな?1年でぼっちだと詰むぞ。やらやら俺が作っている時に言ったな。讃大にちゃんと言った。


 だがそんな1人の意見で学校の方針変わることはなかった。讃大から俺の話が学校に伝わったとは思わないがな。


 現に今は讃大ら生徒会が説明を終えて先生がマイクを持ち。グループ作れー。とか言っている。無理無理。見ろほら。すぐに集まれている生徒もそこそこいるが。俺みたいにどうすんだよこれってなっている生徒。結構各学年にいるぞ?もう隅っこに座って諦めた生徒も居るし。


 ちなみに……もちろん生徒会の讃大らもグループを作る必要があるのだが。


 讃大の周りは同じグループになりたい生徒であふれていた。あれは学年問わず50人くらい集まっているんじゃないか?いつも以上に讃大の周りが密ってるな。


「……乙だな」


 俺が1人つぶやいていると。


「……先輩」

「……」

「先輩?」

「……」


 あれ?なんか俺呼ばれてる?まさかな。


「先輩。なんで無視するんですか……」


 あっ、ごめんなさい。とか俺は思いつつ声の方を見ると。


「うん?あー、吉野?って、うん?なんか用か?」


 1人でぼーっと周りを観察しつつ座っていた俺の横には吉野が立っていた。


 ホラーホラー。相変わらずだな。ほら俺の周りにいた人が驚いてるよ。派手にリアクションしてる生徒もいるし。吉野どうすんだよこれ。まあ知らんが。


「……先輩。1人ですよね?」

「勝手に決めつけられてるよ」


 普通に決めつけられたが……まあ一人である。


「誰か居ます?」

「はいはい。フリー、フリーですよ。で、なんだ?」

「なんだ?じゃなくて……校外学習。一緒に……ダメですか?」

「あ、あー、そうか。今決める時間だったか」

「先輩……話聞いてました?私より話を聞いてないじゃないですか?」

「大丈夫だ。って、吉野は他に――」


 その先の言葉は言えなかった。


「……いるわけないじゃないですか。同級生でも……古市さんしか知り合いいないのに……他の学年2、3年生と組む必要があるとかどんな無茶ぶりですか。先輩居なかったら私話の途中で帰ってましたよ?」

「……まあ。うん。まあ大丈夫だ。俺も吉野と古市しか他学年は知り合いいないからな」

「それはなんといいますか……あっ、私は先輩に断られたら当日休むだけなんですけどね」

「吉野がせっかく登校しだしたんだからな。組んでやるから当日休むなよ?俺がぼっちになる」

「ありがとうございます。先輩」


 吉野とそんな話をしていると。


「葛先輩ー、夜空ちゃん。私も入れてー」


 俺と吉野の周りに居た生徒もその声の方みんなが向いた。ってまた目立つ奴が。


 古市よ。変に目立ちながら来るなよ。さっきは吉野を見て驚いた生徒が今度は古市見て驚いてるじゃないか……って、なんで古市見て驚くんだ?古市って……ホラー要素ないし。むしろ美少女副会長様やらじゃないのか?ほんとなんで驚いてるんだよ。俺の周りの生徒は。


「……古市。あいにく讃大はいないぞ?」

「わかってますよ。だってあれですから……」


 そう言いながら讃大が居た方を見る古市。讃大がいたあたり……まだ人が密っている。うん?讃大の姿が無いな……どっかに讃大が埋もれているのか。ホント乙だな。


「まだまだ密だな」

「ですよね。さすがにあそこには突撃したくなかったので……最近どんどん讃大先輩の周りの人増えているんですよね」


 遠い目?とか言うのだろうか。そんな感じでサンタの方を見ながら古市が言った。


「讃大は仕方ないな。なんか人を集める力があるみたいだからな。って、ちなみにここは古市が入ったとしても3人な」

「OK OKです。むしろ3人しか嫌です」

「なんとまあ変わり者もいたか。吉野もいいか?」

「あ、うん。古市さんよろしく」

「よろしく。にしても葛先輩は後輩ちゃんに人気ですね」

「どこが?2人しかいないぞ?」

「いやいや、可愛い子が2人も居ますよ?ねー夜空ちゃん」

「え、えっと。古市さんは綺麗だけど……」

「夜空ちゃんもイメチェンしたら可愛いから!」


 古市はそういいながら吉野の髪をいじりだした。


「な、なんで古市さんも私の髪狙うんですか」

「「絶対髪型変えたら可愛いから」」

「なっ!?」


 驚いた吉野が俺と古市を交互に見た。そんな中俺たちはというと。


「被りましたね。先輩」

「被ったな」


 息ぴったり。さらに――。


「「切るのもありだよな(ね)」

  

 被ったであった。ちょっと最後の1文字が違ったように聞こえたが……まあ誤差の範囲だな。


「ひ……ひぇー」


 何故か吉野の悲鳴が聞こえたが。無事に俺はグループができてしまった。後輩女子2人というちょっと周りからは……あの組み合わせなんだ?みたいな視線がある気がするが。


 って、なるほど。さっきの驚きはなんでこんな可愛い副会長があんなやつのところに集まってるんだよ。ってやつか。なるほどなるほど。俺じゃ合わないわな。って、なんで俺は1人でこんなことをまとめているのか。


「で、葛先輩、夜空ちゃん。どの施設見に行きますか?」

「あー。吉野はどうだ?俺特に何もないんだが……」

「えっ?……う、うーん。伝統工芸……とか?」

「おー、夜空ちゃんそういうの好きなんだ。ふむふむ」

「まあ、俺はなんでもいいが。確かに伝統工芸もありか。意外と地域のとか知らないし」

「私も賛成です。ちょうど気になっていたんですよ」

「なら決まりか」

「はい!」

「い、いいの?」

「ああ」

「問題ないよ」


 俺たち決まるのも早かった。ちなみに施設が決まったら代表者が資料の最後にある紙にメンバーやら行き先を書き提出するだけ。これは俺がしておいた。


 ちなみに校外学習は現地集合現地解散らしい。まあ学校に行かなくていいから楽いえば楽か。


 俺たちはとっとと終わったがまだ周りはざわざわと集まっている。そのため俺達3人は終わったがまだ待っている必要があった。


「夜空ちゃん夜空ちゃん。三つ編みさせてー」

「ちょ、古市さん」


 俺の横では――早く終わったからといって帰れる。とか言うことはもちろんないので……暇つぶしを始めた平和な後輩たちの姿。って何故この2人は俺の横に居座っているのか。自分の場所に戻ってもいいはずだが……古市に関しては生徒会いいのか?讃大は……まだ囲まれてる……な。うん。大変だな。ホント。


「葛先輩」

「うん?」


 いろいろ思っていると不意に俺は古市に声をかけられた。そして声の方を見ると。


「葛先輩もやりませんか?夜空ちゃんの髪長くて綺麗だから楽しいですよ?って、三つ編みできます?」

「出来ないわけがないだろ」

「ですよねー……って、えっ?出来るんですか!?」

「えっ!?先輩できるの?」


 なんか。俺の返事が意外だったのか。吉野も古市もなかなかな反応だな。と俺は思いつつ。


「……俺ひどい扱いされている気がする。っか、いや三つ編みくらい出来るからな?」

「じゃ先輩どうぞ」


 そう言いながら吉野の髪を俺の方へと差し出す古市。


「ちょ、古市さんなんで私の髪で」

「いやいや吉野が嫌がりそうだからな。髪触るな。って」


 なんか触ったらビンタされる未来が見えた、間違いない。


「大丈夫ですよー。私が押さえておきます」

「古市さん」

「古市、吉野がまた引きこもるかもしれないからやめとけ」

「むー」

「ひ、引きこもりませんよ……多分」

「多分かよ。ダメじゃん、下手したら俺が原因で再度引きこもりじゃん」


 しばらく後輩とそんなやりとりをしていると……やっと解散の合図があり。吉野と古市は戻っていった。


 そしてそのあとは教室にもどりなんやかんやあってさようならである。

1日終了である。最近すぐに帰れてなかったからな。今日こそすぐに帰ろう。よし。帰ろう。俺はそんなことを思いつつ。パパっと荷物を手に持った。すると――。

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