第21話 職員室での2人

 俺たちはとりあえず準備室前から体育館に移動。ドアが閉まっていたこともあり。体育館の音があまり聞こえなかったらしい。


 でだ。


「真っ暗だな」

「ですね」


 たしかバスケ部がいたはずなのに、すでに片付けも終わり電気まで消されていた。外は……ちょっと暗くなってきたところらしい。で、時間はすでに下校時間を過ぎていた。


「あちゃー、葛先輩と話が盛り上がり過ぎましたね。もう責任取ってくださいよ」

「なんで俺が原因なんだよ。とりあえず早く出ないとな」

「ですね、生徒会室の鍵もまだ私が持ってますし」


 ということで俺たちは体育館側からは出られないので……鍵を閉められたのでね。自分たちが入ってきた裏口へと向かった。


 まさかの裏口を閉められた。とかいうハプニングは無く。いや、裏口からは近いとこに居たからな。閉められたら流石に気がつく。


 問題なく外に出た俺たちは、これ裏口の鍵はどうするんだろう……と、思いながらとりあえず生徒会室へ向かい。カバンを取り。生徒会室の鍵を閉めてから。誰もいない校舎内を歩き……ちょっと不気味だった。


「先輩。なんか夕暮れ時の学校もやばいですね。この足音が響く感じが」

「ここで吉野が出てきたら叫ぶわ」

「あっ……確かに。夜空ちゃんには悪いですが――想像できました。多分私も叫びます」


 とか話しながら職員室へ行くと。


「おー、久遠、楓華ももしかして今まで段ボールの山の運んでてくれたのか?」


 先生らと讃大。多分……集会?のスピーチかなんかの打ち合わせをしている感じだった。なるほどそりゃ来ないわ。 

 って……讃大は置いておいて……もう1人居たのでそちらに声をかけた。


「—―吉野はなにしてるんだ?」


 なぜか吉野まで職員室内のソファーにまだ居た


「あ、先輩。古市さんも居る」

「夜空ちゃんなにしてるの?」


 古市が吉野の方をのぞき込む。


「その……反省文書いてる……」

「……た、大変だね」


 なるほど吉野は無断欠席やらやらやらかしたから……課題があったのか。なんかほぼ白紙な気がするが……大丈夫なんだろうかね?そういえば吉野が連行されてからしばらく時間が経過しているはずなのだが……もしかして何枚も書いているのだろうか?


 っか、職員室になぜか俺の知っている生徒しかいない状況だった。すると古市は讃大の方に歩いて行き。


「讃大先輩はいつ帰りますか?」

「あー、もう終わるとこだ」

「あっ、なら一緒に途中まで帰りませんか?」

「わかった。ちょっと待っててくれ」

「はーい」


 あっちはあっちでさすが古市ちゃんと讃大を捕まえていた。すると……。


「先輩先輩」

「……俺?」

「はい。代わりに書いてください」


 そんなことを言いながらそっと白紙の紙がこちらへ……って、いやいや。


「拒否します。じゃおつかれ。帰るわ。俺散々使われて疲れたし」

「え、あっ、見捨てないでくださいよー」

「とりあえずなんか書けよ。ファイト」

「……書くことがわからないんですよー」

「はぁ……」


 結局古市は讃大が終わるまで。俺は吉野がそれぞれ終わるまで職員室から出ることはなかった。

 いやさ帰ろうとすると吉野が必死になんか言ったり。最後の方は制服引っ張ってきたしな。ホント帰らせてくれなかった。


 かなり下校時間から過ぎて俺たち4人は学校を出た。あたりはもう真っ暗。夜である。夜。なんでこんなことになったのか。


 俺と吉野の少し前を讃大と古市が話しながら歩いている。


「先輩」

「うん?」

「その……待たせてごめんなさい」

「いやまあ別にだが。俺なんで待ってたんだろうな。って、今思ってる。振りほどいて帰ればよかったのに俺は何をしていたんだろうか……と」

「……先輩。なんやかんやで優しいですもんね」

「とりあえず。とっとと休みたい。段ボールまじで重かったんだからな」


 しばらくそんな感じで吉野と話しながらの帰り道。ちなみに前を歩く2人もなんやかんやと話している。たまに聞こえてくるのは「段ボール運び半端なかったですよ」とかいう古市の声だった。まあうん。もっと言ってやれ。とか俺は思っていた。


 それからしばらくして――。


「じゃ、久遠も吉野さんも気をつけてかえれよー」


 讃大は帰る方が違うため。途中で古市が俺と吉野の横へとやってきた。


 俺たちは基本同じ方向いえば同じ方向だからな。この3人。讃大は……どこなんだろうか。まあいいか。


「讃大先輩とも話しましたがこんな時間になったの始めてです」

「だな。俺ももう晩ごはんがめんどくさくて仕方ないんだが……」

「先輩1人暮らしですからね?うちで食べてきます?」

「いやいや、急には悪いだろうし……って無理。後輩の家にいきなり……とか無理」

「えー。大丈夫ですよ?多分歓迎されますよ?」


 いやいや、ホントいきなり後輩の家に乗り込む勇気がない。


「そういえば吉野も1人なんだよな?」

「あ、毎日じゃないけどおばあちゃんがこっちにも帰ってきてくれる予定です」

「そりゃ良かったな」

「で……えっと……ちなみにおじいちゃんおばあちゃんの家……ここです」

「「えっ?」」


 俺と古市が目の前の建物を見る。古市のところほどではないが。それでも大きな。日本家屋?とかいうのか?なんか。懐かしい感じの平屋の家が目の前にあった。敷地広そうだな。ここも。


「吉野のとこも……なかなかでかいな」

「そう……かな?」

「でかい。古市とこよりは……だが。でもでかい方だな」

「私のところはそんなに……」

「大きいからな?」

「そうですか?」


 ずっと住んでいるからか。古市はあまり感じていないらしいが。デカイからな?君の家も。


「って、電気付いてるな吉野のところ」

「おばあちゃん居るみたい。何も連絡してないからもしかしたら心配してるかも」

「なら早く帰れよ」

「う、うん。じゃ……おやすみなさい」

「ああ」

「またねー、夜空ちゃん」

「顔隠すなよ」

「しないですから!」


 ちょっと余計なことを言ったみたいだ。


 そのあと吉野が室内へと入っていくのを確認した後俺は今日何度目かの古市と2人になった。


「そういえば古市の家って、反対じゃないか?」

「あー、道的には遠回りなんですが。この道が明るい道なので遅くなると大通りを歩いて帰るんです」

「なるほど、夜道を1人では危険だからな」

「はい。学校から真っ直ぐの道も無くはないんですが、街灯がないところがあるので。ちょっとですね」

「まあ暗いところはだな。特に古市みたいなやつは」

「私みたいなやつ?」


 言い方が悪かったのがちょっと、古市にこちらを見られている気がした。なので俺はすぐに――。


「うん?スタイル良いしかわいいし。そんな奴が1人で真っ暗なところ歩いているとなー、って」

「なっ……葛先輩。いきなり褒めても何も出ませんよ?」

「うん?いや、普通の事しか言ってないと思うが?」

「……ま、まあいいでしょう。うん」

「どうした?」

「なんでもないです」

「ちなみに、吉野の場合。前髪ダラー。にしたら勝手に人が避けていく」

「あー。この前送ってもらった時……叫ばれてましたね」

「ホント、あれマジで急に見たら叫ぶからな」

「夜空ちゃんには悪いのですが……わかりますね」

「だろ?」


 確かに今までは明るい道をずっと歩いてきた。俺のマンションへはこのまま県道を歩いていくのでそこそこ明るい。ってこんな時間になる方がレアだからな。


「そうそうちなみに遠回りしても所要時間は数分しか変わりません」

「そんなもんなのか?」

「はい。運動って思えば余裕ですよ」


 そんなことを言いながら歩いていると。


「で、葛先輩」

「うん?」

「明るいとはいえ。いつもより遅い時間ですよね?」

「だな……なんだよ。もしかして家まで送れとかか?」

「おー、あたりあたり。今日の先輩どんどんレベルアップですね」

「……なんのレベルだよ」


 いや、マジで早く帰って俺はダラダラしたいんだが。


「先輩可愛い後輩のお願いですよ?」

「……古市護身術とかは……」

「今ここで痴漢!とも叫べますよ?」

「脅されたよ……わかったわかった。まあ送ってやるから早く歩け」

「やったー」


 ということで古市の家まで……何してるんだが。俺。


「ところで先輩」

「うん?」

「今更なんですが先輩は讃大先輩とどういう繋がりなんですか?」

「へっ?」


 うん。ホント今更の事を聞いてきたな。と俺が思っていえると――。


「讃大先輩って人は集まってきますが……って、ちょっと異常な集まり方かもしれませんが。常に誰かいますからね。でも讃大先輩が自分から向かっていくのは葛先輩だけな気がしまして――」

「いや――気のせいじゃないか?ただ学校がずっと同じってことくらいだし」

「そうなんですか?あ、あと讃大先輩って、絶対彼女作らないじゃないですか」

「いやその情報は知らん」


 あっ、ごめん言ってからなんかクラスでの噂を思い出した。なんか聞いたことあるかも……告白されても断り続けているとかいう噂を。まあ訂正しなくていいか。


「作らないんですよ」

「ほ、ほう」

「全部告白断ってるって噂がありますから」

「全く知らなかった」

「で、わたしはもしかして讃大先輩は葛先輩が好きなんじゃないかと」

「……やめろ。誰得だよ。マジで吐き気がする」


 今一瞬だけ冷凍庫の中に居るような感覚が。


「一部の人ですかね?」

「……それ以上進めるな。マジで寒気がする」

「でも、讃大先輩は葛先輩には頻繁に話しかけますよね?」

「使いやすい駒なんだよ」

「なんか違う気がしますが――」

「いやいや古市。おかしな設定作るな」

「いや、まあわたしは作りたい訳じゃないんですよ?ただ、讃大先輩がねー。なんですよ」

「それを俺に言ってもな……って古市も実は……もう振られたとかか?」

「違いますから、何も言ってませんから。もう。勝手に進めないでください」

「ってか古市が告白したら讃大あっさりOKだったり?結構一緒に動いてるだろ?」

「じゃ、もし振られたら責任とってくださいね?一生葛先輩に付きまといますよ?」

「何故に!?って一生!?いやいや、それは……ってさ、古市。もう家着いてるぞ?」

「え?あ、ほんとだ。話してるとあっという間ですね。じゃ、先輩。おやすみなさい。あとありがとうございます」

「あ、ああ、じゃ」

「気をつけて帰ってくださいねー。私送った帰りに襲われたとか、事故とかやめてくださいよ?」

「大丈夫だ、じゃ」

「ちなみにさっきの話。結構ガチですよ?」

「やめてくれ。いきなり俺の未来が決まるとか」

「ふふふー。まあ嘘ですけどー。ってさっきの話は秘密ですよー。わかってます?」

「はいよ」

「じゃ、おやすみなさい」

「ああ」


 古市と別れて俺も自分の家へとやっと向かいだす。


 って、古市の変な想像で寒気がまだ、よし。コンビニで美味いもの買って忘れよう。今日は何があるかな……とか思いつつコンビニに立ち寄って帰った俺だった。

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