第16話 早炊き
「なんか久しぶりに帰りが遅くなりました」
そんなことを隣を歩く古市が言っている。
「誰かに見られたら副会長が放課後真っ暗になるまでうろうろしていましたとか言われるぞ」
「大丈夫ですよ」
「いやいや制服のままだし結構目立つからな?」
「あ、たしかに先輩着替えてますもんね」
「……俺誘拐とかしてないからな。なんかあったらちゃんと説明しれよ」
「なるほど、もし取り調べ受けたら先輩が帰らしてくれなくて……って言ったら面白そうですね」
「待て待ておかしいからな?」
「ふふふー。まあ大丈夫ですよ。もうすぐ着きますし」
俺と古市は現在川に架かっているそこそこ大きな橋を歩いている。このあたりでは多分一番大きな橋だろう。っていってもまあ100メートル弱?の橋なんだがな。ちょっと川までの高さはあるので下を見ると足がすくむ人が居るかもしれないが。普通に歩くなら問題はないだろう。揺れるとかないし。歩行者用と車用がちゃんと別れている橋なのでまあ歩行者は安全である。チャリが暴走してくると通路が狭いからちょっと危険だがな。
とりあえず話しながら橋を渡っている俺と古市だった。
「はぁ。なんか心配しかないんだが……」
「ところで」
「うん?」
「夜空ちゃん1人にして大丈夫なんですか?」
「なんでだ?」
「いや、先輩他人を自分の部屋に……とか気になりませんか?」
「あー、まあ、吉野なら。大丈夫かと」
「あらー。やっぱり2人には何かありますね。取り調べ必須ですね」
「ないからな。っか古市今日はテンション上がったり下がったり忙しいな」
「まあいろいろありましたから……ってことで、ここ私の家です」
「えっ?」
俺たちは話している間に橋を渡り終えて……橋からさらに少し進んだところまで来ていた。そして古市が立ち止まったところには……普通に立派な一軒家が……ってやっぱいいとこのお嬢様か!とか思っていると、
「じゃ、葛先輩ありがとうございました。おやすみなさい」
「あ、ああ、おやすみ」
とくにガタイのいい人や怖そうな方が出てくることなく。古市は普通に家の中へと入っていった。
にしても、豪邸ではないが……そこそこいい家。ってあまり見ていてもなので俺はとっとと自分の家へと帰ることにした。
「……っか、腹減った」
往復歩いたら結構いい運動だった。ドーナツ分のカロリーとか消費した気がする。ってドーナツじゃ身体はもたん。確かに美味かったが。
「って吉野も晩御飯どーすんだろ。とりあえず帰ってから聞けばいいか。冷食はまだなんかあったし」
今更だが。基本料理はしない俺。冷食をチンするくらいのレベルである。コンビニ弁当最高ってことも多い。まあホント稀に……なにかを作ることはあるが……基本面倒なことはしない。
そんなことを思いつつ。家に帰ってきたら。
「あ、先輩。おかえりなさい」
「……何してるんだ?」
部屋に入ると吉野がキッチンに立っていた。
そして、なんかちょっと部屋の中がいい香りがしている気がした。
「あまりに何もなかったので混ぜご飯くらいしかできませんでしたが……って、勝手にごめんなさい」
「いや問題ないが……吉野料理できる子だったか」
「一応……って、ご飯早炊きで炊いて。ちょっと棚とかあさったら。わかめのふりかけがあったのでそれを炊けたご飯に混ぜておにぎりにしているだけですよ?」
とかいう吉野に近づくとかわいいおにぎりがいくつか並んでいた。
「先輩、あと野菜とか食べた方がいいですよ?冷蔵庫何もないじゃないですか」
「あー、まあ各メーカーの弁当やサラダなんでも今はうまいからな」
「栄養が偏りますよ?」
「っか、腹減ったから早速食っていいか?」
「あ、どうぞです」
ということで吉野と夕食。まあおにぎりとインスタントの味噌汁と余っていた冷食をチンだが。
炊きたての米があるだけでレベルが上がった。いや普段も炊くのは炊くがまとめて炊いてあとは冷凍だから炊きたてを食べる回数は多くなかったからな。
って、吉野はあれからすぐに晩御飯のことを考えてくれたのか。まあ米は普通に置いてあったからすぐに見つけれたのだろうが……でも慣れてるんだろうな。炊飯器とか確かに早炊きの設定とかあった気がするが……俺使ったことないわ。って30分弱で炊けるのか……そんなことを思いつつ。
「美味いな。やっぱり出来立てのご飯は」
「何度も言いますが。ただ炊いただけですけどね」
普通に美味かった。俺が何度も美味いを言ったからか吉野はなんかそわそわしていたが。まあ嬉しいんだろう。って美味いし。
そのあとは俺が片付けをしている間に吉野に風呂に入ってもらい。なんやかんやと過ごして寝た。以上である。
ただ2日連続後輩が家に泊まっていたということがあっただけ。特に何もなく平和?であった。うん。何もない。これなら古市に何か言われることもないだろう。
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