私の小さい頃の人々(ほのぼのでは無い)2
前回に引き続いて、小さい頃の思い出話の中で「自分の(利益や楽しみの)為なら人を犠牲にして仕方ない」という人の割合が多かったかな、って思った話を書かせていただきます。
今回、自治会活動の昼飯の時に話し相手になってくれたBくんのお陰で過去の思い出話を沢山思い出すことができました。
Bくんは年は私より2つ下ですが、そこそこの規模の会社を長年営んでいて、数年前に事業を畳んだという、地元の事情に詳しい人です。更に言えばBくん本人は東京の大学に進学した際に地元に戻るつもりはサラサラなかったのに、お父さんが亡くなってしまったので実家を継がざるを得なかったという、感性は地元どっぷりではなく私のように地元以外も経験していて似ている部分もある人です。
自治会活動の先輩でもあります。
では、思い出した、けっこう人の迷惑を省みなかったりする人たちの話です。
その2 何か昔は犬にリードを着けずに散歩させる人が多かった
私の住んでいた地域では、何でか知らないですけど犬にリードを着けずに散歩させる人がやたら多かった印象があります。
リードを着けずに散歩させてるくらいですから、今の様に犬の糞を片付ける人なんてものは皆無でした。普通にリードを着けて犬を散歩させている人もいましたが、そんな人たちも犬の糞には無関心で、犬の生理的欲求の赴くままにさせていました。従って道端や、犬が勝手に入って来る家の庭なんかは犬の糞がよく落ちていました。犬の糞は踏まれたりして雨で流されて無くなっていくまで放置されていました。
思い出話をしている中で3大リード無し犬というのがいて
①Uさん宅のスピッツ
②民宿長期宿泊者のドーベルマン
③芸者のマルチーズ
この3頭が近隣の幼年の子供たちの恐怖の対象でした。
私は①Uさん宅のスピッツ には実はそんなに被害に遭っていません。Uさん宅でスピッツを飼い出したのは私が中学生以降で、私はあまりUさん宅周辺に行く用事もありませんでしたから。
BくんはUさん宅に家が近く、何度も被害に遭ったと力説していましたが、ごめんBくん、私にとってはふーんでした。
②民宿長期宿泊者のドーベルマンは、その民宿の2軒隣にBくんの家があって良く行ってましたから、結構怖い目に遭いました。
その民宿は温泉街ではなく住宅街の中にあり、温泉街の源泉から温泉を汲んできて湯を入れているなんちゃって温泉でしたが、宿泊費が安く素泊まりなどもあったので仕事が長期にわたる人たちが長期滞在している宿でした。ゴミなども私の住んでいた町では宿泊施設のゴミは一般の家庭ゴミと一緒に出してはならずゴミ処理業者に出さなければならないということになっていたのですが、民宿の経営者はそれを守らずに一般の家庭ゴミの日に、当時は燃えるゴミと燃えないゴミの2種類しかなかったのに分別せずに出す困った人でもありました。注意しても逆ギレされるので、アンタッチャブルになっていたのです。
その民宿に、定期的に初夏~秋に多分仕事で長期宿泊する宿泊客がドーベルマンを何故か一緒に連れてきて、民宿の前の道路を挟んだ空地一帯で日中から夕方の何時間か放し飼いにしていました。
その空地は民宿の土地ではなく他に所有者がいたと思います。今現在家が2軒立っている広さですから、それほど広くありません。ドーベルマンはその空地と道路のスペースで気ままに歩き回るのです。今思うと空地と道路を含むある一定の空間から出てくることはなかったので、きちんと躾けられていたのかも知れません。このドーベルマンには実際噛まれたという子供はいませんでした。でも多分噛まれたら命に係わることになっていたと思います。
ただ、今にして思えば結果的に誰も噛まれてなかったって言えますけど、当時の私たちとしては、体長が1・5ⅿ、体高も90㎝はあって、保育園児と背の高さは同じ大きな黒い犬がうろうろしている訳ですから、それは恐ろしい存在でした。
Bくんの家に遊びに行こうとして角を曲がって空地にドーベルマンがいないとホッとしました。
いたら……引き返しました。
わざわざその空地を通らないように、かなり遠回りをしてBくん宅に行くか、諦めて帰ってました。
たまにドーベルマンが好奇心で追っかけて来るのですが、その速いこと。絶対に逃げきれないと思いましたが、家の影などに入ってドーベルマンから私の姿が見えなくなると追っかけるのを止めてくれたので助かりました。
Bくんもけっこうこのドーベルマンには追っかけられて怖かったそうです。やっぱりわざわざ遠回りして自宅に帰ったりしてたとか。
Bくんの親が民宿経営者に苦情を言っても、ゴミの件と同様に聞く耳を持たなかったそうです。
とても怖かったけれど直接的な被害には遭わなかった②民宿長期宿泊者のドーベルマン に対して③芸者のマルチーズ は近隣の幼年の子供たちはけっこう被害に遭っています。
私も何度も噛まれました。
私が今でも犬が苦手なのはこのマルチーズのせいです。
このマルチーズの飼い主の芸者は住宅街の中の置屋兼住宅に住んでいました。2階建ての一軒家で私の家の2軒斜め前になります。
3人くらいの芸者が住んでいたんだと思いますが、彼女らが身支度して出勤するところは一度も見たことがありません。私たちが家にいる夕方~夜に出勤していたのか、それとも旅館に行ってから着替えていたのか。
それでマルチーズですが、複数飼われていました。一番多い時は3匹いたと記憶しています。
基本的に普段は室内で飼っていたようですが、置屋兼住宅の2階が人と犬の住居スペースだったようで、2階ベランダの柵に網を張って、このベランダにマルチーズを出していることもありました。
このマルチーズたちはよく吠えます。
ベランダに出ている時に前の道を人が通るとキャンキャンワンワンとずーっと吠え、小さな鈴をつけた首輪をしていましたから鳴き声と鈴の音でまあ賑やかです。
そしてこの飼い主の芸者は、よくこのマルチーズたちを午後3時~4時半くらいに散歩させていました。
といっても大人しく歩くような躾けされた犬たちではなく、好き勝手に走り回り、子供たちを追いかけ回し噛み付きます。
マルチーズたちには名前が付けられていて、レスリー、ミリー、レミーと言いました。
私や弟が噛み付かれた時も飼い主は「レスリーちゃん、ミリーちゃん、駄目ッ!」
と言うだけで引き離そうともしません。
弟がショックで泣き出してしまい、替わりに私が文句を言っても「あーら、ごめんねぇ」というだけでマルチーズを抱き上げるのみだったりします。
だいたい午後3時~4時半というのは、小学校から帰ってきて外で遊んでいる時間だったりしますから、パターンに慣れて来ると外で遊んでいて鳴き声と鈴の音、アスファルトを走るチャッチャッという足音が近づいてきたらすぐに家の中に隠れるのが常でした。
ある日、私と弟、BくんCくんDくんの5人で私の家の収穫が終わった畑で遊んでいたら、突然このマルチーズたちが走って襲い掛かってきたことがありました。
畑は道から引っ込んだところにあり、アスファルトよりも足音がしなかったので近づかれるまでわからなかったのです。
私と弟、Bくんはこれまで何回か追いかけ回されて噛まれたことがあってこのマルチーズたちのタチの悪さを知っていますから、植えてあった柿やクルミの木に登ったり、作業用具置き場の屋根に昇ったりして逃げましたが、家で犬を飼っているCくんとDくんはけっこう平気そうに「よーし、よしよし」と声をかけ、抱き止めようとします。
私は何て勇敢なんだ、と感動しましたが、案の定この性悪マルチーズたちはCくんの差し出した手に噛み付きました。それを見たDくんは急に逃げ出そうとしましたが足を噛まれてしまいます。
Dくんは泣き出してしまいましたがCくんは気が強く、「ふざけんな!」と言いながら反撃に出て、マルチーズたちを蹴っ飛ばそうとします。
Cくんの蹴りは当たりませんが、マルチーズたちは反撃されたことがないのか戸惑ったようで、Cくんを襲うのは止して泣いているDくんに襲い掛かります。
Dくんも泣きながら逃げますが、もう一度噛まれたところで彼の何かに火が着いたのでしょう。畑でキュウリの支柱に使っていた棒切れを拾って「うわあぁぁぁん!」と泣きながらマルチーズたちに振り回し、逆に追いかけ始めました。
Cくんも一緒になってマルチーズたちを蹴っ飛ばそうと追っかけます。
2人に反撃されたマルチーズたちは道まで逃げ、飼い主の芸者の元へ。
飼い主の芸者は追っかけて来たCくんDくんに「あんたたち、レスリーちゃんやミリーちゃんに何ひどいことしてんの!」と声を荒げました。
Dくんはまだ泣いていて喋れませんが、Cくんは「その犬が先に噛んだんだ!」と言い返します。
「嘘おっしゃい! レスリーちゃんたちはこんなに大人しいのに噛む訳ないでしょう! あんたたちがいじめようとしたから仕方なく噛んだのよ!」
飼い主の言葉には木に登って様子を見ている私も驚きました。
いや、何回も私たちを噛んでる現場にあんた居たじゃん!
Cくんは怯まず言い返します。
「その犬、こっちが手を出さないと思ったらすぐ噛むよ! 飼い主ならちゃんと躾けてよ」
そう言われた飼い主の芸者はふん、といった表情でソッポを向き、そのまま道を歩き出し、散歩を続けます。
マルチーズたちもチャッチャッと小走りで飼い主に従って去って行きました。
私たちは木から降りるとCくんを称え、Dくんを慰めました。
もうこの頃にはドラクエは出ていたので、Cくんはしばらく勇者の称号を与えられ「勇者C」と私たちに呼ばれていました。
この後、私の家の外で遊んでいる時にCくんが一緒だと、私たちは逃げますがCくんはマルチーズたちに蹴りを入れて追い払おうとするので、マルチーズたちも近寄りませんでした。
Cくんが居ないといつも通りです。
いつからかマルチーズの数が減って2匹になっていましたが、どうやら好き勝手に走り回るので1匹は車に轢かれてしまったそうです。
その後、私が中学生になると部活もあり散歩の時間に当たらなくなったため、休みの日に時折置屋の2階ベランダで吠える声が聞こえるくらいで、殆ど思い出すことも無くなりました。
Bくんと話していて久々に放し飼いマルチーズの話になったんですが、あのマルチーズたちが居なくなったのは飼い主の芸者が覚醒剤で逮捕されたからだそうです。
私が地元にいない間にそういうことがあり、けっこう噂になったんだとか。
今、置屋だった建物はまだありますが、別の人が購入して住んでいます。
という訳で何か面白エピソードみたいになってしまいましたが、日本でも40年50年前は、今みたいに周囲に配慮する人ばかりではなくて、結構セルフィッシュな人も多かった、という話でした。
本当はあと2つくらいあるのですが、またいつか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます