ゴーストバスターズ




 私、小っちゃい頃は幽霊やお化けが怖くて仕方ない子供でした。


 当時、つのだじろう先生の心霊漫画ブームは去っていましたが、私の年の離れた従兄たちはマンガを沢山持っていて、その中に「恐怖新聞」や「うしろの百太郎」、「呪凶介PSI霊査室」「亡霊学級」といったつのだじろう先生の恐怖マンガや、「エコエコアザラク」「妖虫」といった古賀新一先生の恐怖マンガも沢山あって、山の中の集落にある父方の本家に連れて行ってもらった時にはそのマンガを従兄たちと一緒に読んだりしてました。

 夜になるとそのマンガを思い出して怖くなり、一人で本家の外にあるトイレにはいけず、限界で漏れる寸前まで我慢して、父か母を起こして着いてきてもらってやっとトイレに行ってました。


 あの恐怖マンガの数々は、絶対小さい頃に読んじゃダメな奴ですね。

 特につのだ先生の脂が乗っていた頃の絵は、描く霊の姿が土着的で妙なリアルさ湿っぽさがあってめっちゃ怖い。

 うちの従兄、私が小学校低学年の時に中学~高校生でしたからあんな山中の歴史ある古い家でも平気であんな怖いマンガ読めたんでしょうけど。

 今でも多分「恐怖新聞」の6巻と9巻は夜中に読めませんわ。

 つのだ先生でもかなり後年に描かれた「恐怖新聞Ⅱ」とかになるとギャグに近い感覚で読めるようになってますがね。


 でまあ、かなり怖がりだった私は自分の家でも夜中に怖いマンガや怖い話を思い出すと怖くなっちゃって、トイレに行けないのは変わらずでしたし、一人で暗い二階の部屋に行くのもできませんでした。


 そんな私が、幽霊やお化けへの恐怖心が多少薄れるきっかけになった作品が「ゴーストバスターズ」でした。めっちゃ単純。


 「ゴーストバスターズ」以前にも幽霊やお化けを倒すお話というのはあったと思うのですが、私の幽霊やお化けに対する恐怖感を打ち消すには至りませんでした。


 何故「ゴーストバスターズ」は私にとって効いたのか?


 今思うと多分ですが、それまでの幽霊や化け物退治の話は、神の力を借りたり超能力を使ったり、修行を積んだ高僧だったりが幽霊や化け物と死闘を繰り広げるお話ばかりでした。

 つまり、特別な人でないと幽霊や化け物とは戦えなかったのです。


 「恐怖新聞」の悪霊ポルタ―ガイストなんて、修行を積んだ徳の高い霊能者でも祓えず、憑りついた鬼形礼少年を除霊以前より更にひどい目に合わせ、最後には殺してしまう訳ですからね。

 私自身は何もできずにただ自身の運命を特別な力を持った人に委ねないといけない訳です。

 特別な人に私は伝手もないし、自分は戦えないし、幽霊や化け物に出会って憑りつかれたらもうおしまいな訳です。


 しかし、「ゴーストバスターズ」は、電話さえ掛ければ救急車を改造しNo GhostマークをペイントしたECTO-1でサイレンを鳴らして駆けつけて幽霊を退治してくれるんですね。


 「もしあなたの近所で奇妙な感じがしたら誰を呼ぶ? ゴーストバスターズ!」

 「幽霊を怖がることなんてない!」

 「一人で悩んでちゃだめさ! 誰を呼ぶ? ゴーストバスターズ!」


 主題歌で歌ってるんだから間違いない!


 まあその頃は英語の歌詞の意味なんて解らなかったんですけど「ゴーストバスターズ」の雑誌記事でそんなような意味だって書いてあるのを見て、そして実際にあのグルービーでキャッチ―な曲と、レイ・パーカーJrの甘くしゃがれた低音ボイスを聞かされると「そうだ、怖いことがあったらゴーストバスターズを呼べばいいんだ!」と妙に安心することが出来たのです。


 映画の話自体も3人のヘンテコな超常現象科学者が大学をクビになり、自分たちの開発した幽霊捕獲装置を使って幽霊退治をする会社を設立し生活のために幽霊退治をしていく訳ですが、私にとって重要だったのは私のような一般人でも、彼らの使うプロトンパックとPKEメーターを使えば幽霊や化け物を捕獲したり退治したりできる! ということでした。

 彼等の設立した幽霊退治会社「ゴーストバスターズ」も、業務拡大に伴い途中で求人に応募してきた一般人の黒人男性をスタッフに迎え、同じ装備で一緒に幽霊退治に従事していた訳ですからね。

 私だって最悪「ゴーストバスターズ」の求人に応募し採用されれば幽霊を退治できる訳です。


 更に言えば、世界を滅ぼす破壊の神ゴーザでも、ダン・エイクロイド演じるちょっとおマヌケなレイモンド・スタンツ博士の頭のイメージを覗いてしまったばっかりに、マシュマロマンなんていう可愛らしい姿に変身してしまったりする訳です。

 単なる人間でも楽天的でユーモラスな人間なら、超自然的な存在にも十分対抗できたりするんだなあと思わせてくれたり。

 映画全編通してコメディタッチで描かれていることもあって、その当時は意識しませんでしたが自分の中の恐怖に対抗するのは笑いだってこともちょっと刷り込まれたのでしょうね。


 というわけで小学生の頃の幽霊やお化けに対する恐怖を和らげてくれた「ゴーストバスターズ」。

 全世界で大ヒットしたのは、私のような幽霊やお化けを怖がる少年少女たちの心に刺さったからではないでしょうか(いやそうじゃない)。


 この文を書くにあたってネットで「ゴーストバスターズ」を調べていたら、来年正当な続編が公開されるみたいですね。


 コロナが落ち着いていたら、映画館に久々に見に行ってみようかな。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る