第六話 初めてのテレビ
デビューライブを終えた翌日、僕らは新曲の振り付け練習を行っている。
デビューライブは満員で外にまでファンが並んでいたとニュースになっていた。
デビュー曲である『スタートリップ』も上手く歌えたし、踊れたと思う。
ライブ後の握手会にも沢山のファンが並んでくれた。
握手のし過ぎで手が筋肉痛で痛いけど、嬉しい痛みだ。
だってファンの人達の笑顔が沢山見れたのだから。
社長のカレンさんは笑顔で褒めてくれたし、僕らのマネージャーの犬山さんも機嫌が良い。
大成功と言ってもいい結果にカレンさんや犬山さんだけじゃなく、蓮や由良、誠司君も機嫌が良く笑顔で振り付けを覚えている。
鳴君は無表情に見えるけど、いつもと違って不機嫌オーラを放っていない気がする。
もちろん僕も嬉しい。
すぐにでもライブがしたい。ファンの皆に会いたい。
そんな気持ちを胸に秘めながらダンスの練習をこなす。
練習が終わった後、犬山さんから今週の土日は連続でライブをすると報告があった。
これから土日は出来るだけライブをして経験を積ませる方針みたいだ。
東京にあるライブハウスを転々と移動しながらライブを行うみたい。
僕らはデビューライブでの成功でやる気は十分にある。
あぁ、早くライブがやりたいなぁ。
ライブに想いを馳せていると、犬山さんから更に嬉しい報告があった。
なんと、毎週金曜日夜十九時から一時間生放送している音楽番組――ミュージックパラダイスへの出演が決まったらしい。
今週の金曜十七時にリハーサルがあるらしいので、十六時半までにテレビ局に到着していないといけないらしい。
犬山さんが車で学校まで迎えに来てくれるらしいので、遅刻しないで済みそうだけど。
アルヒェとして初めてのテレビ出演だ。
緊張もあるけど、楽しみのほうが大きい。
日本中の人々に見られるかもしれないのだ。
アルヒェを知ってもらう大チャンスだ。
気合いが入るというものだ。
蓮も僕と同じ気持ちらしく目を輝かせている。
由良は初めてのテレビ出演が不安らしく、心配そうな表情を浮かべている。
そんな由良を誠司君が勇気づけている。
流石リーダー。
鳴君は全然動じてないみたい。
雑誌のインタビューや撮影もあるし、忙しくなってきた。
よし、頑張るぞ!!
学校に通いながら、新曲のレコーディングや振り付けの練習、雑誌の取材や撮影をこなし、楽しみにしていた金曜日を迎えた。
学校まで犬山さんが車で迎えに来てくれたので、小学校の門付近に集まっているファンに手を振りながら乗り込むと蓮と由良と鳴君が既に乗っていた。
「ノア、人気者だね」
「いやいや由良の学校にもファンの出待ちあったでしょ?」
「うん。でもノアの学校の出待ちの方が多いよ」
「だな。俺の学校の門付近にもファンが来てたけど、ノアの所程多くはなかったぜ」
「そっか。学校には申し訳ないけど、正直待ってくれていると嬉しいよね」
僕の言葉に由良と蓮は笑顔で頷く。
誠司君の中学校に向かうと、誠司君の中学校の門にもファンが集まっていて誠司君は笑顔で対応していた。
そんな誠司君を拾い、テレビ局へと向かう。
「誠司君、おはよう。ミュージックパラダイス楽しみだね」
「う〜ん、俺は楽しみよりも緊張の方が強いなぁ」
「誠司君も!? 僕も凄く緊張してるんだよね」
誠司君と由良は緊張の方が勝っているみたい。
蓮と僕は楽しみの方が強いけど。
鳴君にも聞いてみたけど、「別に」とクールに答えた。
う〜ん、鳴君とは中々打ち解けられないなぁ。
そうこうしているうちにテレビ局へと到着した。
マネージャーの犬山さんについていって用意された楽屋へと入る。
机の上にはお菓子や飲み物が置いてある。
由良は甘い物が好きなので喜んで食べている。
楽屋で待機しているとリハーサルの準備が整ったらしく、スタッフさんが僕らを呼びに来た。
案内されたスタジオに向かうと、テレビで見た事のあるミュージックパラダイスのセットが組まれていた。
そこには司会者の大物芸能人と人気女性アナウンサーの他に、テレビで観た事のあるミュージシャンやアイドルが居た。
一人一人に挨拶をして僕達が座る席へと移動する。
リハーサルは歌う順番を確認して、歌う場所に立ち、曲の立ち位置などを確認して終了した。
楽屋に戻り用意されていた弁当を食べて、他の出演者の楽屋に挨拶回りをしていたら本番の時間がやって来た。
流石に緊張してきたけど、ワクワクする気持ちも大きくなってきた。
由良は手の平に人という字を書いて緊張をなくそうとしている。
そんな由良を励ます誠司君と、目を輝かせて廊下を歩く蓮。
鳴君はいつも通り落ち着いている。
スタジオのドアをスタッフさんが開く。
さぁ、楽しみにしていた初めてのテレビ出演だ。
精一杯頑張ってこの瞬間を楽しむぞ!!
僕は頬を軽く叩き気合いを入れる。
本番が始まった。
「さぁ、今日のミュージックパラダイス最初のゲストは、デビューしたばかりの初々しいアイドルグループ――アルヒェです」
女性アナウンサーの紹介の声で、曲が流れ始める。
僕らに向けられたカメラに時折ウインクをしたり笑顔を向けながら歌い踊る。
このカメラの向こうに数え切れない程の視聴者が居るのだ。
全員をファンにするつもりで全力スマイルで歌い踊る。
途中、由良が転んだけど、蓮と僕でフォローして大したミスにはならなかった。
その後は何事もなく僕らの出番は終了した。
出番が終わった後は僕らが座る席に移動して、司会者と話したりしながら他の歌手達のパフォーマンスを観て聴いた。
やはりプロは凄い。
僕らはまだまだ精進しなきゃいけないと思わされた時間だった。
放送終了した後、楽屋に戻ると由良が泣き出した。
本番でのミスを悔やんでいるのだ。
犬山さんと、誠司君、蓮と僕で慰めたが、凄く落ち込んでいた。
引きずらないといいけど。
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