「センパイ、デジャブですね」
「という冗談は置いておきまして…」
冗談に聞こえなかった…。
なんて思っているとセンパイはクスクスと笑いながら再度真斗の方を見た。
「さて。真斗さんはこの後どうする予定ですか?」
「え、あ…俺は…特に…」
真斗は曖昧にそう答えながら視線をセンパイから背けた。ただただ私になぜバイトを休んだのか聞くためだけに来たらしい。その後の事は考えていなかったのだろう。
真斗らしいといえば真斗らしいが、時にその一途さは狂気にも思える。
「真斗さんもこの時間にいるという事は終業式だったのでしょう?」
「はい」
「それでしたらせっかくですし僕らと──」
「いや」
センパイの言葉に真斗が割り込む形で口を開いた。さっきまでの弱々しそうな真斗ととは違く、じっ、とセンパイの事を見ている。
センパイもその真斗の心の内を悟ったのか「そうですね」と呟いた。
「失礼しました。これは野暮でしたね。僕らは今からデートなので。真斗さん、また今度」
「はい」
「優良さん、行きましょう」
センパイはそう言うと真斗に軽く会釈をして私の手を引っ張り校門を出る。対するわたしは「えっ、え?」と短く声を上げながらどんどん離れていく真斗に小さく手を振った。
「セッ、センパイッ! さっきの…」
私がセンパイに話しかけると歩みが少しゆっくりになる。普段から運動なんて体育でしかしない私の体力はすぐに限界を迎えていたので少し安心する。
「さっき、真斗に何か言いかけていませんでしたか?」
「えぇ。一緒に遊びませんか、と提案しようとしたのですが…」
センパイはそう言うと小さく「ふふっ」と笑った。
「?」
「真斗さんもやはりプライドはあるようでして」
「真斗はプライドの塊みたいなもんですよ」
「おやおや」
それから困ったように笑うセンパイと他愛のない雑談をしながら駅の近くにあるファミレスに入る。丁度お昼頃という事もあり、混んでいたが運よくスムーズに入店できた。これも普段の行いの賜物であろう。
「センパイ! センパイは何食べますか?」
「そうですね…。スパゲティとか美味しそうですよね」
「カルボですか?」
「いえ、ミートです」
「私、カルボしか勝たん派なので
「おやおや。残念ですね。優良さんと僕では価値観が合わないようで──」
「あーー! やっぱりミート派かもしれないです!」
「ふふっ。そうでしたか。なら良かったです」
「あはは…」
あれ…? なんかこんな会話、以前にもした気がする…(「センパイ、赤いきつねと緑のたぬき! どっち派ですか!?」全話参照)。
なんて思いながら私は再度メニューに目を通す。
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