レベッカ一行の世界漫遊の旅 4 (母を求めて?千里? 13)
翌朝―
「キャアアアアアアッ!!」
2階の宿屋に女性の悲鳴が響き渡った。
「な、何?!何っ?!」
悲鳴のあまりの大きさに強制的に起こされた私は慌ててベッドから出ると、寝間着姿のまま部屋の扉を開けた。
「何っ?!今の悲鳴はっ!」
次に部屋から飛び出してきたのはナージャさん。彼女はほぼ下着姿同然と言ってよいほどの格好で出てきたので目のやり場に困るほどだった。
「イヤアアアアアッ!!出ていきなさーいっ!!」
再び部屋から聞こえる悲鳴…と言うか…ええっ?!
悲鳴はミラージュの部屋からだったのだ。
「こ、こら!落ち着きなさい!ミラージュッ!」
中で男性の悲鳴が聞こえる!大変だっ!
「ミラージュッ!入るわよっ!」
返事も聞かずにミラージュの部屋の扉を開け放ち、私とナージャさんは同時に部屋へ飛び込み…目を見開いた。
何とそこにはベッドの上にいるミラージュと、何故かビリビリに破れた服を着ている、超絶イケメンお兄さんの姿がそこにあった。
「だ、だ、誰ですかっ!!この美形の男性はっ!」
ナージャさんは超絶イケメンお兄さんを指さした。
「分かったわ!さては貴方…間男ねっ?!」
私はビシッとお兄さんを指さした。
「ええ、そうですっ!この男は間男ですわ、レベッカ様っ!」
ミラージュがベッドの上から叫ぶ。
「だから違うと言ってるだろうっ?!私はセネカだっ!ミラージュッ!お前のお父さんじゃないかっ!」
イケメンお兄さんは自分の胸をバシバシ叩きながら必死で訴えている。
「嘘ですわっ!そんな話…信じるとでも思っているんですのっ?!私のお父様はもっともっと小さな子供ですっ!」
ミラージュは激しく首を振る。
「だから、私だって驚いているんだ!こんな大人の姿に戻れたのは実に20年ぶりのことなのだからっ!」
あれ…でも、そう言えばセネカさんの姿が見えない…そして代わりに現れたのはセネカさんと同じ髪の色と同じ瞳の色のイケメンお兄さん…。
「え…ま、まさか…貴方は…」
震えながら私は尋ねる。
「おお!私の正体が分かったのだね?」
お兄さんは嬉しそうに私を見る。
「ええ、間男ですわっ!」
再びベッドの上から叫ぶミラージュ。
「だから違うと言ってるだろうっ?!そこまで言うなら、私の匂いを嗅いでみるといいっ!鼻が利くお前なら私の匂いで何者か嗅ぎ分けられるだろう?」
言ってることは滅茶苦茶だ。きっとミラージュは断るに違いない。
それなのに…。
「ええ、嗅ぎますっ!嗅がせていただきます!」
ミラージュの言葉に驚く私とナージャさん。
「え?!嘘ですよね?!ミラージュさんっ?!」
「ミラージュ、じょ、冗談よねっ?!」
「いいえ、嘘でも冗談でもありません。本当にお父様か間男か、確認しなくてはなりませんから」
「ああ、そうだ。それでこそ我が娘だ。ヘイ!カマンッ!」
何故かイケメン男性は扇動的に人差し指を上にあげて指で自分の方へ来るように招いている。
「ええ、存分に匂いをかがせていただきます!」
ミラージュはひらりとベッドから飛び降りた。
「レベッカ様…先ほどからこのお2人…言動が少々おかしいと思いませんか?」
ナージャさんが耳打ちしてきた。
「ええ、そうですね。もはや匂いを嗅いで検証する必要もないくらい、よく似た2人だと思います」
ミラージュがクンクンとイケメンお兄さんの匂いを嗅いでいる姿を見ながら返事をした。
「こ、この匂い…や、やっぱりお父様っ?!お父様なのですかっ?!」
ミラージュの鑑定が終わったようだ。
「そうだよ、ミラージュ。私の事を匂いで識別できるとはやはり、流石はドラゴンの血を引くだけのことはある」
うんうんと頷くセネカさん。
「ええ、それは当然ですわ」
胸を張るミラージュ。けれど、状況的に考えれば今目の前にいるお兄さんがセネカさんだと言う事はすぐに察しがつくのだけれども…。
「そう言えば、セネカさん。何故、突然元の大人の姿に戻れたのですか?」
「う~ん…心当たりがあると言えば…ある」
私の問いにセネカさんは腕を組んで頷いた―。
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