レベッカを探せ 3 〜キング一家の旅 2
それはリーゼロッテが俺たちの旅に勝手に同行?して7日目の夕方の事だった―。
滞在先の宿屋でリーゼロッテがシャワーを浴びている隙きを狙って俺は父と兄を部屋に呼び、作戦会議を開いていた。
「もう俺は限界だ。これ以上あんな女に毎晩毎晩襲われるのは懲り懲りなんだよ!」
「ハン!何言ってるんだ。あんなに身体の相性がいい女は他にはいない、なんて言ってだろう?それを今更呆れたもんだな」
俺の言葉にランスはぶっきら棒に言う。こいつ…旅に出てからどんどん言動が乱暴になってきやがった。以前ならまだ王族の気品?みたいなものを持ち合わせていたのに、今のランスはその辺の農夫となんら変わりない容貌と口調になっていた。
「しかしアレックスや。どうやってあのリーゼロッテを撒くと言うのだい?あの女は常に我らから目を光らせているし、今まで何度も村で置き去りにしようとしても全て失敗に終わっているじゃないか?」
そうなのだ。不思議な事に俺たちは何度もあの女から逃走する事を試みたが、全て失敗に終わっていた。あるときは馬車を隠されて逃走失敗。又あるときは、先回りされて逃走に失敗…ことごとく裏をかかれてきた。
だが、今度こそ俺は完璧にリーゼロッテから逃げる作戦を考えついたのだ。
「2人とも、これを見てくれ」
俺はポケットから紫色の液体が入ったガラスの小瓶を取り出し、テーブルの上に置いた。
「何だ?それは…?」
ランスが興味深げに覗き込できた。
「フフフ…。これは俺が今迄密かにため込んでいた金でようやく手に入れた睡眠薬だ。この睡眠薬はとても強力で、たった一滴飲み物に垂らして飲ませるだけで丸1日は決して目が覚めることの無いと言われている究極の睡眠薬なのだ。しかも無味無臭。これを今夜リーゼロッテの飲み物に混ぜて飲ませるんだ」
「なるほど。それでこの宿屋に置いていくつもりなのだな?」
間抜け親父が頷く。
「馬鹿な事を言うな。俺たちが西の大陸を目指している事はリーゼロッテに既にバレているんだ。あの女はまるでスッポンのような女だ。一度咥えたら決して離すことのない恐ろしい女だ。きっと地の果てまでも俺を追いかけてくることだろう」
自分で言いながら鳥肌が立ってしまう。
「なるほど、それじゃどうするのさ」
ランスが尋ねてくる。
「宿屋の主人に聞いたのだが、この先馬車で1時間程進んだ所に大きな娼館があるらしい。そこにリーゼロッテを売り払うのだ」
「何?売り払う?ただ置いてくるだではないのか?」
乞食同然の父に俺はきっぱり言い切った。
「何を言う?俺たちのレベッカ探しの旅はまだ序盤なんだぞ?」
「えっ?!まだ序盤だったのかっ?!」
ランスが悲痛な声をあげる。
「ああ、そうだ。大体西の大陸は海を超えないとならないんだ。俺たちはまだ外洋をつなぐ玄関口『ラメール』の港にすら到着していないのだぞ?船に乗るには金がかかる。だからリーゼロッテを娼館に売り払って路銀を稼ぐに決まっているだろう?」
「おおっ!我が息子ながら何と鬼畜な…」
役立たずのクズ親父が興奮気味に言う。何が鬼畜だ。まだ17歳の無垢な俺の花嫁であるレベッカを狙う変態親父のくせに。一体どの口が物申しているのだ?
「うるさい!兎に角今夜決行だ!大体リーゼロッテは色欲に狂った女だ。俺が相手をしないものだから欲求不満がピークに達しているはずだ。喜んで娼館で働くだろう。きっとリーゼロッテならあっという間にナンバーワンに上り詰めるはずだ」
「よし、分かった。路銀を得る為に…彼女には犠牲になってもらおう」
「うむ、そうだな。あんなアバズレでも侯爵家の人間。その身分を買取価格に上乗せして高額で買い取って貰おう」
俺よりも余程鬼畜発言をする父。
「それじゃ、今夜決行する。リーゼロッテとの腐れ縁を今宵、断ち切るぞっ!」
「「おーっ!!」」
ランスと父は揃って掛け声をあげた―。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます