レベッカ一行の世界漫遊の旅 2 (女盗賊アマゾナ編 13)
サミュエル皇子が目を覚ましたので私は慌てて指をパチンと鳴らすと雨雲を消した。
「あ?サミュエル皇子、目が覚めましたか?」
そして2m程距離を取りながらサミュエル皇子に声を掛けた。
「ああ…レベッカ。良かった、無事だったんだな?ん?何故俺はびしょ濡れなんだ?」
サミュエル王子は自分がずぶ濡れなっていることに気づき、首をかしげた。
「実はついさっきまで辺り一面土砂降りの雨が降ったんです。それでサミュエル皇子は雨に当たって濡れてしまったんですよ。ところでサミュエル皇子、先程までご自分が何をされていたか覚えてらっしゃいますか?」
さり気なくサミュエル皇子に近付いてみると、すでにあの鼻のもげそうな強烈な臭いは大分消えていた。
「いや、それがモグラが出たと言う騒ぎを聞いて外に飛び出してからの記憶が殆ど無いのだが…それにしても何故、バザー会場が滅茶苦茶になっているんだ?」
サミュエル皇子はようやく辺りの惨劇?に気付いたのか、なぎ倒されているテントの山を見て首を傾げている。そしてそこにはバザー会場に訪れた人々が大勢集まっていた。ある者は商品が全て駄目になってしまったと泣き崩れる者もいれば、ある者は全身泥まみれになってガタガタ震えている者もいる。う~ん…かなり怖い目にあったのかもしれない。
その時―
「レベッカ様ー!」
こちらへ向かって大きく手を振りながら駆けつけてくるのは、私の侍女兼、最高の相棒のミラージュである。
「あ!ミラージュッ!お帰りなさい!で?どうだった?モグラの方は?」
「ええ、全ての巨大モグラは私の必殺技『超音波』で遙か彼方へフッ飛ばしてやりましたわ」
ミラージュは胸を反らせながら自慢気に言う。
「そう、それはご苦労だったわね。お疲れさま、ミラージュ」
するとそこへサミュエル皇子が叫んだ。
「あーっ!そ、そうだっ!思い出した!俺は…俺は!巨大モグラと戦う為に剣を構えていたら…強烈に口臭いモグラに襟首をつ、掴まれて…大きな舌でベロリと舐められてしまったのだっ!それであまりの臭さに耐え切れず失神してしまったんだ!」
えっ?!サミュエル皇子が失神してしまったのは‥モグラに舐められたショックでは無く、あまりの臭さに失神してしまったなんて!
「うげ~っ!き、気持ち悪いっ!今すぐ身体を洗いたい!ついでに着がえもしたい!」
サミュエル皇子は余程気分が悪いのか、見悶えている。うん、確かに雨のお陰で大分匂いは取れているけれども、やはりまだ十分臭い匂いは残っている。その証拠に鼻が利くミラージュは片手で鼻をつまんでいる。
「そうだ!サミュエル皇子!ここには素晴らしい温泉があるんですよ?是非そこで身体を洗ってさっぱりしてきてください」
「え?温泉があるのかい?それは素晴らしい!是非案内してくれないか?」
サミュエル皇子が近付いて来たので、私はサササッと適度な距離を取りながら言った。
「ええ、勿論です。ところで石鹸や着がえはありますか?」
「あ…」
途端に顔面蒼白になるサミュエル皇子。
「まさか…サミュエル皇子。荷物をお持ちじゃないんですか?」
私の問いにコクリと頷く。
「まあ!仮にも皇子様ともあるべきお方が、着がえ1つお持ちじゃないなんて!」
ミラージュは驚いたように叫ぶ。しかし、きっとこれは私のせいなのだ。恐らくサミュエル皇子はグランダ王国にやってきた時、それなりの荷物を持ってきていたはず。だけど私があの国を崩壊させてしまったので、サミュエル皇子も荷物を紛失してしまったのだろう
「申し訳ございませんでした。サミュエル皇子…」
思わず項垂れて謝罪する。するとサミュエル皇子は首を傾げて尋ねて来た。
「え?何故レベッカが謝るんだい?」
「そ、それは…」
そこまで言いかけた時―
「あ!あんた達!ここにいたんだねっ?!」
背後から声を掛けられて振り向くと、そこにはアマゾナが立っていた―。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます