第445話 罪悪感
何で俺とコスモスなんだ? あの馬鹿女は、一体俺たちに何を期待している?
「ねえ、パッパ~、コスモスどうするの?」
「パッパも分からん」
ドラが巨大化できるのは分かった。ただ、その力をより多く使うのだとしたら、コントロールが難しいのも分かった。
でも、そこで俺がどうして関係するんだ?
「朝倉」
「あ゛?」
「んで、お前の方にもクロニアからメッセージがあるさー」
「えっ、あ、そ、あいつから? 俺に? えっと、お、俺だけにか?」
「そうさー、って、何でそんなに緊張し………あ~、あ~、あー、あーあー」
なんだよ……そんな、「そういえば」みたいに何かを思い出して納得したような顔は。
つーか、その「はは~ん」みたいなマスクの上からでも分かるニヤケ顔はやめろ!
「あ~……じゃあ、神乃美奈から朝倉宛に、朝倉だけに向けたメッセージを読み上げるので聞いて欲しいさー」
「えっ! ッ、あ、お、お、俺だけに向けた? てか、神乃ってもう言っちゃってるけどいいのか?」
「いや~、そこをもったいぶってもしかたないさー」
ぐっ、いや、最初からそうだとわかっていたけど、クロニアの仲間お墨付きで神乃の名前を出されると、少し緊張してきたな……
「~~~~~~ッ、ヴェルト様ッ!」
「ん?」
「う~、えいっ!」
「……はっ? ほぶっ!」
次の瞬間、いきなりエルジェラに呼ばれて振り返った瞬間、エルジェラの両手に頭を掴まれ俺はエルジェラの胸に抱き寄せられ、埋められた。
はっ? なんで?
「ほ、ほぶ! ちょ、エルジェラ、いきなり何を、ほぶ!」
「し、知りません!」
つか、なんでエルジェラ怒ってんだよ。しかも、息が苦し、つか、離せよ!
「ヴェルト様は……ヴェルト様は、私の胸に触れてないとダメなんです!」
「なんでだ馬鹿! つうか、お前らしくもない、こんな時に何をやってんだよ!」
「あーっ! パッパ、いいな~、マッマのおっぱいまくら! コスモスも~!」
いや、ほんと、いつも天然で落ち着いた物腰のエルジェラが、何をムキに?
仲間たちもヤケに呆れて…………
「……とりあえず、クロニアに報告しとくさー。え~、朝倉、通称ツン倉は、ヴェルト・ジーハことおっぱヴェルにクラスチェンジして、おっぱい枕ナウ」
やめんかあああああああああああ!
「ええ、それで構わないわ! ちゃんと、あの子に一字一句漏らすことなく報告なさい! 女の敵、お、お、おっぱヴェルくんのことを! そして、おっぱヴェルくんにはもう、最愛の妻が複数も居るということを!」
「って、アルーシャ! テメェ、何を便乗して俺のことをディスって―――――」
「ついでに、ヴェルトはとってもいやらしく、性欲に満ち、女性にも優しくないので、クロニア姫にはくれぐれも恋愛対象として見ないように、というより近くに現れたらとても危険ですので、是非近づかないようにとも忠告お願いしますわ!」
「いや、フォルナまで何を――――――」
「そうだ! ヴェルトは四獅天亜人にも負けないぐらいの変態なんだ!」
「おい、ウラ! あの連中を見たあとに、よくもそんなことを言えるもんだな!」
「ついでに、幼い子に手を出す犯罪者つーのも言っとけば? な~、ユズっち」
「アルテアッ、テメェ俺のどこが犯罪……おい、今、思ったんだけど……ユズリハって何歳だ? ただ、身長小さいだけだろ?」
「ん? 歳? じゅ「やっぱ言わなくていいから黙ってろ!」ッふぐ、うう~~、自分から聞いたのに、婿のイジワル……」
は~~~~、なんでだ? この世界の破滅を左右させる状況下で、どうして俺はツッコミばかりして……って!
「って、この野郎、メモってんじゃねえ!」
「え~、ロリヴェル誕生、おまわりさんこっちさ~、と、メモメモ……さあ、クロニアのメッセージを読み上げるさー」
「そこでキリっとした表情で誤魔化そうとしてるが、そのメモは後で処分しろよな?」
ダメだこいつら………せっかく燃え上がってきた気持ちに水ぶっかけまくりやがって。
こんな冷めちまった気持ちで、どうやってあのゴッドジラアと戦えって言うんだよ………
「まあ、メッセージも何も、結局は朝倉の魔法で大気中の必要物質をかき集め、ドラがその物質から鋼鉄を創り出し、コスモスちゃんの『創造の紋章眼』でドラウエモンをカスタマイズするだけさー」
いや、クロニアのメッセージ………………
「なるほど、では、それで十分ですわね」
「ええ、ハットリくん、ありがとう。さ、ヴェルト君、細かいことを気にしている場合じゃないわ。今すぐ作業に移りなさい」
「ヴェルト、今の状況を考えろ、さあ、話はこれまでだ。他は気にするな気にするな」
「ヴェルト様、コスモスとの協力する以上、ヴェルト様がしっかりしていただかないと♪」
「あ~、あんた、残念だったね~、ラブいメッセージの欠片もなくて」
「………ほっ、良かった……婿、あんな顔するから………」
俺が、ハットリにもう少しメッセージの内容を教えて欲しいと言おうとした瞬間、通せんぼするようにニッコリと壁になるフォルナたち。
おいおい、お前ら、なんでそこまで露骨に?
だが、俺の納得できない態度を見てか、次の瞬間、ハットリは信じられないことを言った。
「朝倉。正直に言っちゃうと、あいつはお前に会いづらいと思っているさー」
……えっ?
「はあっ? えっ、か、神乃、あ、あいつ、俺と、あ、会うのがそんなに嫌なのか?」
ちょっと待て。俺は会うのが目的でそもそもの旅を始めたのに、あいつ自身が俺と会いたくないとかショックで……って、ヨメーズはガッツポーズしてるし、なんでだよ!
「実は数年前からお前の正体は知っていたさー。俺が調査したのと、ラーメン屋へ客として行ったりしてさー。そして、俺たちは先生とお前の正体を知ったさー。お前が聖騎士に囚われたのも後で知ったさー。ただ、どこの監獄に幽閉されたかまでは分からなかったが……だが、それでも何度も会いに行くタイミングはあった筈だけど、クロニアはお前と会うのが恐かったみたいさー」
てっきりあいつが俺のことをそこまで嫌いなのかと思って一瞬胸がズキリと痛んだが、ハットリは言葉を続けた。
「不良で学校だってサボりまくってた朝倉リューマを、学校生活に無理やり引きずり込んだのは、神乃美奈さー」
「……ああ、そうだな」
「神乃美奈がウザイぐらい強引にお前の手を引っ張らなければ、朝倉リューマは学校にも、体育際にも、文化祭にも、そして……あの修学旅行に来ることもなく、命を落とすこともなかったさー」
「………………………………………はあっ?」
えっと、なんだ? そのよく分からん罪悪感は………
「俺も前世ではそこまであいつと仲良かったわけじゃないが、再会して段々あいつのことが分かってきたさー。あいつは、いつもフザけたウザイ口調でバカ丸出しにしながら、本当は人と心を通わせることに、ただ一生懸命な奴さー」
ああ、知っているよ。そんなこと、俺だって分かっている。
俺も、それが分かったからこそ……あいつは馬鹿でウザイところあるが……その分、頑張って人の心の中に入ろうとするやつなんだ……
「ああ、知っている。知っているさ、そんなこと」
この世界で、どれだけ色々な女と出会っても、その気持ちを受け入れても、それでも忘れたことはない。
「キャラじゃねえことを気にしやがって、あの天然劇場は……だったら、なおのこと俺はあいつに……会わねえとな」
だが、それにはまず断っておかなきゃならねえことがある………
「俺は……朝倉リューマは神乃美奈に出会えてよかったと……礼を言ってやりたい。それが、朝倉リューマの未練だから……」
それはもう、告白とか、あいつを俺の女にしたいとかそういう話じゃねえ。
あいつが、俺を学校に引きずり込んだことを気にしているというのなら、俺の偽り無い気持ちを教えてやりたい。
だから、それは………
「だから、心配すんなよ。別に神乃が絡んだからって、お前らを蔑ろにするわけじゃねーからよ。フォルナ、ウラ、エルジェラ」
それだけはハッキリとさせたかった。
「ちょっと待ちなさい、ヴェルトくん! 私の名前が無いのはどういうことかしら?」
「え、おま、マジでヤリ逃げ? おい、マヂでヤリ捨て?」
「がぶうううううっ! ムコ~~~ッ!」
と言っても、こいつら全然納得する気はないようだが、とにかく今はそういうことだ。
「だから、今は戦わせてもらう」
神乃のメッセージを信じて、戦うだけだ。
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