第430話 心を乱されないように

「ッ、ぐうううっ、ガアアアアア、い、イーサムッ!」

「さあ、お仕置きの時間じゃ、ブラックダック」


 アーメン。

 心の底から同情し、最早態勢を立て直すために一旦退却しようとするブラックダックの運命はこれで決まっちまった。

 なら、後は……


「おのれ! 行くだわよ、ユーバメンシュ! 今すぐイーサムを始末するだわよ!」

「お~~~っと、つうかさ、マヂさヴェルトにヤラれ損のまま終われねーってかさ、とりまあたし本来の目的は果たさせてもらうし。よーやく、股の痛みも収まってきたし」

「アルテア姫ッ!」

「さあ、デイヂ、ママン返してもらうからさ」


 大人の階段を上ったアルテア。

 そして………


「つーわけで、ユズっちも協力してな。あたし一人じゃ、それはそれでキビシーし」

「……えっ、でも私は婿と……」

「い~~じゃん、一緒にハメられた仲じゃ~ん。つ~かナカじゃん♪ 竿姉妹じゃん♪ ここで旦那の留守中もしっかり頑張る妻ってとこもアピるのよくね?」

「う~~~~、でも、婿と居たいし……」

「今回はエルっちとウラウラに任せりゃいーじゃん。コスモスっちのことだし……」

「むう……う~、分かった……でも、今度の週間ローテーションは私がお前の分一回もらうからな」

「お~、オケオケ。一週分ぐらいくれてあげるし~。つーか、あたしアレ一回限りの関係じゃなくて、ドサクサに登録されてるとかマヂウケるし」


 同じく大人の階段を上ったユズリハなんだが、なんだ? そのヘンテコな交渉は。

 つうか、週間ローテーションって何だ?


「それなら、仕方ないわね。なら、さっきのみっともない失態を返すためにも、メイル元帥? それに、ガジェ……相手になるわ! ちなみに、ウラ姫、エルジェラ皇女。私も次のローテーション一回分もらうわ」

「ワタクシもそれで今回は手を打たせてもらいますわ」

「ちっ、週一回か……まあ、いい」

「申し訳ございません。では、ヴェルト様、私とウラさんも行きます! さあ、コスモスを!」

「いや、気合入ってるところワリーけど、週間ローテーションってなんだよ」


 なんか、それで女たちの話がアッサリと済んでるんだが……


「なにって、ヴェルト……ワタクシたちがヴェルトと夫婦の営みをする順番ですわ。さきほど、ヴェルトが精根尽き果てて意識を失っている間に、ワタクシたちが決めさせてもらいましたわ」


 ちょっと恥ずかしそうに、「ポッ」とか言いながら語るフォルナ。

 えっ、なにそれ、夫知らない。


「散々揉めましたが、ローテーションの順番はアサクラリューマではなく、ヴェルト・ジーハとの出会い順。一日目はワタクシ。二日目はウラ。三日目はアルーシャ。四日目はエルジェラ皇女。五日目はアルテア姫、六日目が散々大暴れしましたがようやく納得してくださったユズリハ姫ですわ♪」


 なにその超ハードスケジュールな一週間は!


「ちょっと待て、それじゃあ七日目以外は一週間ぶっ通しじゃねえかよ! 一週間で一日しか休みないとか、ふっざけんな!」

「休み? 何を言ってますの、ヴェルト。七日目は……うふふ、七日目は全員一斉にお相手していただく、解禁日ですわ! 可愛い、コ・ド・モを生むために! これで大丈夫ですわね? チロタン」


 フォルナを力いっぱいぶん殴りてえと思ったのは、出会って十年以上経つが初めてだ。


「ガハハハハ! なら仕方ねえッ! 俺様もいつまでも寝てらんねーな! そして、もしクソガキがそのローテーション無視して逃げ出したら、俺様がとっ捕まえる!」

「ぷっくくくく、腹上死不可避なんで………ぷくくくく、全然羨ましくないんで、ざまーみろなんで」

「ちょっと、ニート君、何を人ごとみたいなんですか~? ニート君は週間ローテーションどころか、三百六十五日が私なんで覚悟してくださいね♪ というわけで、エロ倉くんは行っちゃっていいですよ~。ここは、私とニート君のラブラブカップルパワーで、ドリルお姉さんにさっきの借りを返しちゃいますし」


 フォルナの一言で、瀕死の重傷ながらも元気よく立ち上がるチーちゃん。

 大爆笑中のニートに、サラッと爆弾ぶち込んだフィアリ。

 だが、とりあえずは、この場に残った後は任せろと、『思いはそれぞれ』な仲間たちが親指突き立ててる。なんか、その親指をへし折りてえ。


「まあ、愚妹の順序が考慮されてるなら………」

「なんか、弟くんは世界最強にいつも囲まれてるのに、いつも生命の危機とか何それ?」

「ご安心ください、殿。生まれた子供の教育係は……この、拙者が全て受け持つでござる! むっ? なんでござる、魔王チロタン。なぜ、拙者を睨むでござる」

「う~~~、にいさあああああん! 今度こそオイラの汚名挽回を! オイラ、やってやるっすから!」


 もういいや。あと、返上な。ドラのベタな言葉の間違いもどうでもいいや。

 つうわけで、結局元祖トンコトゥラメーンメンバーだけの別働隊として、この場を他の奴らに任せていくことになった。

 まあいい。この色んなモヤモヤ感は、全部マッキーとマニーにぶつけさせてもらうか。



「あ~~~~もう、仕方ねえ、んじゃ、さっさと行くぞ!」



 目指すはシャンデリア城の麓にある、『不思議の国のアナス』だ。


「ぐっ、行かせないだっく!」

「ぐわははははは、何を……お前は地獄に行くんじゃろう?」


 ブラックダックも、


「やれやれ、少年少女たちは先ほどから淫らなことを、これはいかん! 大人として正してやらねば」

「何を言ってるのだ?」

「ぬっ、貴様は狐女!」

「地底族。快楽の海の底まで引きずり落としてやるのだ」


 メイルも、


「この出来損ないめが!」

「器の小さな魔王に、負ける気はしない! 親にもなれぬ男に王を名乗る資格はない!」

「ううう、キュン……ラガイアがカッコよすぎる……」


 ノッペラも、


「あ~、もう、俺は降参降参。やっぱ、かなわねーな、嬢ちゃんたち」

「ガジェ………」


 ロービン・フードも追いかけてこねえ。

 これで、想像しうる全ての敵はクリアできたんじゃねえのか?

 俺、ファルガ、ウラ、ムサシ、クレラン、エルジェラ、ドラのメンバーは、敵も客も誰一人いないランドの奥へと走っていった。

 途中に見えるアトラクションや、キャラクターたちに関連する建物などがあったりしたが、目もくれない。

 

「ちっ、しかし、冷静に見ると、なんだこのクソみてーな場所は」

「そう言うな、ファルガ。こういう時でなければ、私はデートで来てみたいと思うぞ?」

「そうだよね~。でも、こんなの作っちゃったり、なんか、ほんとラブ・アンド・ピースって何を考えてるか分からないよね~」


 不気味であり、そしてファンシーなランドの光景に微妙な気分にさせられるが、そこまで真剣に考えるものでもねえ。

 だって、どーせマッキーの趣味で作っただけだろうしな。


「まっ、今はそんなのどーでもいいさ」

「弟くん?」

「色々と紆余曲折あったが、ゴールは変わりねーんだからな」


 そう、ようやくここまで来た。

 あの時、攫われたコスモス。

 その時を思い出すだけで自分の頭を何度もブチ割たくなるぐらいだ。

 エルジェラも同じ気持ちなんだろう。その表情はさっきまでとは打って変わり、子を想う母親の表情になっている。


「そうだな」

「違いない」

「当然でござる」


 みんなも、そこは「当たり前だ」と気を引き締めた表情で頷いた。


「マッキーフレンドとかいうのが、あとどれだけ居るかは分からねえ。だが、たとえ何人居ようとも、ブチ破る! もう、これ以上、心を乱されてたまるかよ!」


 見えてきた。シャンデリア城。

 ランドの中心にしてメインとも思われる建造物。淡い白に塗られた外壁に、いくつもの円錐の屋根が空へと伸びている。

 ファンタジーの世界にありそうで、意外となかった、実にファンシーな外観の城。

 普通の城は外敵から守るために色々と強固だが、この城は、攻撃されることを前提にしていない。だが、それゆえに可愛らしいと思うのか、ウラが若干「ほ~」と唸っている。

 だが、今はここでデートをゆっくりしている場合じゃねえ。

 目的は………


「兄さん、あっちに森があるっす!」


 ああ。あそこだ! だって、普通に看板に『ワンダーランド』とか書いてるし!

 あそこにコスモスが居る!


「コスモスっ!」

「慌てんな、エルジェラ! いいか、何が飛び出してもいいようにしとけよ、お前ら!」


 ついに来た。俺たちはお互い頷き合い、中の見えないほど生い茂った人口的に作られた森の中に足を踏み入れた。

 幹部が奇襲してくるか? それとも、獣でも飛び出すか? すると………


「おい、ヴェルト。何か、音が聞こえてこないか?」

「音というより、歌に聞こえるわよ、弟くん」


 音? 歌? まさか、キシンみてーな、言霊使いか!

 そう思ったとき、森の奥に光が見えた。そして開けた空間がある。

 そして、そこには………




「ぴょっこぴょっこぴょっこぴょっこ、ダンスだよ~! ぴょんっとおっそらへとぶんだも~ん! おっはなばたけで、ぴょっこぴょっこぴょん! はいっ♪」


「「「「ぴょっこぴょっこぴょん♪」」」」




 そこには……小さな天使が……白うさぎの耳を頭につけて、笑顔でピョンピョン飛び跳ねながら、歌と踊りを簡易的に作られたステージで見せていた……その周囲にも同じようにウサ耳の子供たちも居て、その中心に………



「うおああああああああああああああああああああああああああ!」


「きゃああああああああああああああああああああああああああ!」



 気づけば、俺とエルジェラは絶叫していた。


「かわわわわわわぁああいいいいいい、コスモスゥーーー!」

「いやあああああああああああ、コスモス、なんてかわいいのっ!」

「誰かあああああ、カメラぁああ! くそおおお、今ほどスマホが欲しいッ!」

「はううう、コスモス、ああ~~、この記録を誰かに見せたい……なんて、可愛いのコスモス!」


 なんだここは! いや、そんなのどうでもいいや。アレ、俺の娘な! 俺の娘な! やべ、可愛い! 可愛すぎる!






――あとがき――

下記もお願いします。

カクヨムコンテストにエントリーしてますので、フォロー及びご評価を是非にいただけたらと思います。


読者選考ではフォローと★の数が重要なようで……


何卒ぉおおお~この上品なエ……上品な物語をぉ~(꒪ཀ꒪」∠)_



『段階飛ばしの異世界転移ヤンキーと利害一致のセフレたち~乙女と1Hごとにお互いLv1アップして異世界を最下層から駆け上がる』


https://kakuyomu.jp/works/16816927859544060323



よろしくお願いします!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る