第64話 一人の時間


「じゃあ、そろそろ部屋に戻りますね。」



「ええ。あっ。そうだ。モルテも一緒に行ってベル連れて来られそうだったらこっちに連れてきて。」



「わかりました。」



そうして俺たちは部屋を出た。




俺の部屋に戻る途中明日のことを話す。



「明日は朝から城に行くからな。それと早ければ明後日出発すると思うから覚悟しておけよ。」



「わかりました。それにしても急ですね。」



「嫌になったか?」



「いえ。ただ、そんなに急ぐ旅なのかと思っただけです。」



そういえば具体的な内容を話すのをすっかり忘れていた。ここで話そうと思ったが誰が聞いているかもわからないし、それにすでに部屋の前まで辿り着いてしまった。



「悪い。具体的な内容は明日城で王様から聞いてくれ。」



「はははっ。そんな大事なんですね。この旅は。偉いことを了承してしまいました。」



「やめるなら今の内だぞ。話を聞いたらもう後戻りはできないからな。」



モルテは淡々と答える。意志は変わっていないみたいだ。



「もうしつこいですね。そんなこと言っても変わりませんからね。」



しつこいとは言うが念には念をかける。後悔して欲しくないから。まあ、内容を言っていない状況で判断しろというのは難しいと思うが。



「まあ、まだ時間はある。城に着くまでに考えてくれればいいよ。」



「はあ、ビスさんは僕に着いてきて欲しくないんですか。自分から誘ったくせに。今更・・・まあいいです。でもこれだけは言っておきます。僕は絶対に着いて行きますからね。」



そういうとモルテはベルを連れてさっきの部屋へと戻っていく。



「そうだよな。何で俺はあんなこと言っちゃったんだろう。」



そんなことを思いながら、風呂に入る。やっぱり一仕事終えた後の風呂はいいな。疲れが取れる。それにさっきまで汗だくだったから爽快感もある。しかし、こうしていると色々考えてしまう。今日はすごく濃厚な一日だったとか。明日はなにもなく過ごせればいいなとか。それに最悪の光景を想像してしまう時もあるのだ。



「ああ、ダメだ、ダメだ。もう上がろう。」




嫌なことを想像してしまい、早々に風呂を出る。ベッドに寝転がるがしばらく暑さで眠れなかった。早く寝つきたいのにこういう時に限って眠れない。いっそのことリベに添い寝をしてもらえばすぐに眠りにつけるのではないかとあらぬ想像をしてしまった。ヤバい、ヤバい。無にならなければ。その甲斐あってか徐々に意識が遠のいていった。

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