第31話 彷彿
僕たちは城門のところまで来た。
すると、町の方で土煙ができるのが見えた。
「シェーン‼早く急いで。」
「待ちなさいよ。そんなに飛ばしたら敵が出てきたら持たないわよ。」
それでも、僕は急ぎたかった。なんだか嫌な予感がしていたから。
「シェーンがそんなこと言うから、出てきちゃったじゃないか。」
「私のせい⁉そんなことよりやるわよ。」
シェーンはレイピアを構えた。
無視して進みたかったが、城にはツァールとペルがいる。
それに二人は傷がないにしても戦うにはきびしいと思い、
出てきた敵を丁寧に倒していく。
「くっ。キリがないよ。」
「弱音を吐くのが早いわよ。」
それでも、僕たちは一歩一歩確実に進んでいく。
腹の奥底にいろいろなものを溜めながら。
なんとか、町に辿り着くことができた。
「「はあ、はあ。」」
「ビス。まだいけるわよね。」
「うん。もう少しであの砂煙が上がっていた方向だ。気を引き締めなきゃ。」
「ちょっ。ビスこっち。」
ビスが駆けていった方向にはクラフトがいた。
血は出ていないが、息をするが辛そうだった。
「クラフト⁉大丈夫⁉」
「あ、ああ、なん、とか、な。」
上着を捲って見ると、無数の打撃痕があった。
おそらくあちこち骨が折れているだろう。
「大丈夫なの?」
「あちこち骨折していると思う。今治すからジッとしててね。」
手を伸ばした瞬間、クラフトに腕を止められる。
「お、れ、は、いい、から。・・・ディ、グニが、危な、い。
そっち、にい、てくれ‼」
「わかった。わかったから。腕を離して。」
「たの、む、ぞ・・・」
そういうと、クラフトは意識を失った。
「クラフト‼」
僕はそれでも冷静だった。クラフトの胸に耳を近づける。
心臓はまだ動いている。今度は口に近づける。
息はあるが、途切れ途切れで危ない状態だ。
「クラフトはまだ生きているから大丈夫。
ただ、危険な状態に変わりはない。シェーン、お願いがあるんだ。」
「何?」
「ディグニの方に先に行っててくれないか。治療したら、すぐ向かうから。」
シェーンは一瞬戸惑ったが、「わかったわ。」と言って
さっきクラフトが指を指した方向に向かっていく。
「ヒール」
何とか、息が正常になるまで治すことができた。
安堵も束の間、甲高い悲鳴が響いてくる。
「イヤアアアアアアアア‼」
僕はクラフトを置いて悲鳴のおきたほうに急いだ。
シェーンを先に行かせたのは間違いだったか、そんな考えがよぎる。
「間に合ってくれ。」
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