第26話 拒絶
「何で⁉何が起きてるの⁉」
僕たちが昨日買い物をしたところも火が広がっていた。
僕は急いで向かおうとする。
「ダメよ。ビス。」
「なんで⁉何でダメなの?みんな危険にさらされているんだ。
こういう時に力にならないと。」
「今から行っても間に合わないわ。
それに何が待ちうけているかわからない。
私たちがいっても邪魔になるだけよ。」
「でも‼」
その言葉を発して、シェーンを見ると
そこには両手を強く握り込んでいる姿が目に入る。血をたらしながら。
「っ‼」
僕は唇を噛んだ。
「ぐああああああああっ」
城の中で悲鳴が響いてきた。僕は走り出していた。
「ちょっ、ちょっと待ちなさい。待ちなさい。ビス。」
シェーンの声が遠ざかっていく。
何か人だかりができていた。僕はそれをかき分けて進む。
そこには、すでにディグニ、クラフト、ペルがいた。
そしてその奥に目をやるとツァールともう一人の男が立っていた。
ツァールは剣で刺され、血だらけになっていた。
「なんで。どうして。なにやってるのよ。フィロ兄様‼」
後ろからシェーンの叫び声が聞こえる。
どうやらツァールを刺した男はあのフィロらしい。
「なんだ。シェーンも来ていたんですか。」
「あんなにツァール兄様を慕っていたのに。なんでそんなことするのよ。」
「うるさいですね。あなたには関係のないことです。黙っていなさい。」
「黙らないわよ。人が殺されかけているのよ。
それに、殺そうとしている方も殺されかけている方も血のつながった兄弟なのよ。黙っていられるわけ、ないじゃない‼」
「はあ、まあ、いいでしょう。どうせあなたも死ぬんです。
冥土の土産に教えましょう。ツァール兄様が無能だとわかったんです。
だから排除する。それだけです。」
フィロはその言葉を真顔で言っていた。
「あんたはいつもそう。無能はいらないって。完璧しか許せないの?」
「そうですよ。だから、あなたを見ているといつもイライラしていました。
失敗しても、失敗しても、諦めず挑む姿。見苦しくて見ていられませんでした。
それに、失敗しても嬉しそうな顔、虫唾が走ります。
それにできたらそれ以上に嬉しそうにして
何を当たり前のことを喜んでいるのです。」
「私のことは嫌っていてもいいから、こんなことはやめて。
今ならまだ間に合う!だから、私の声に耳を傾けてよ‼」
「もう、口を開かないでください。この無能が。」
ああ、ダメだ、僕はこの人が嫌いだ。
それにディグニたちに会う前に会っていたら僕はつぶれていただろう。
誰よりも早く僕は声を出していた。
「シェーンのことをそんな風に悪く言うな‼」
「誰です?あなたは。うるさいですね。
ウジ虫どもが、すぐに口を開けないようにしてあげます。」
フィロが僕に向かってくる。
正確にはいつの間にか隣にいるシェーンの方に向かってくる。
カキンっ。
乾いた金属音が響く。ディグニがフィロの前に飛び出していた。
「やらせませんよ。」
「くっ。ディグニさんあなたですか?どうですこちら側につきませんか?」
「丁重にお断りさせていただきますっ。」
カァァン
「残念です。ディグニさんだったら大歓迎でしたのに。」
「買い被りしすぎです。俺はそんなに完璧じゃない。
クラフトさん、ペル。ツァール様を安全なところに。」
クラフトとペルはすでにツァールのところに移動していた。
「ヒール」
「わかっている‼ツァール様ご無事ですか⁉」
するとツァールはクラフトの首元を掴んでちからを振り絞って叫んだ。
「ク、ラ、フ、ト、何を、している。
早く、町に向かえ。国民を守るんだ。それが傭兵の仕事だ‼」
「いや、しかし・・・」
「いいから、いけ‼命令だ‼私の決断を疑うのか・・・」
クラフトの顔は歪んでいた。
「くっ。承知しました。」
クラフトは立ち上がって町へと向かっていく。
「頼んだぞ。ディグニ、ペル。」
「はい。」
「ええ、汚れ仕事は俺に任せてください。」
クラフトは僕の横を通り過ぎる時、
「かっこよかったぞ。シェーン様は任せた。
おい、そこに突っ立ってないで腕に自信のあるものは一緒に戦うぞ。
絶対に国を守るんだ。」
といって去っていった。
大勢クラフトについていった。男性女性関係なく。
シェーンの方を見ると震えていた。
手に力が入り、僕はシェーンの一歩前に立つ。
「さすがですね。全然隙を見せてくれませんね。」
「どうも、ありがとうございます。フィロ様こそ力をつけましたね。」
二人は会話しながら戦闘を続けていた。
「完璧な存在が欲しいなら、ペルなんてどうです。」
「いいですね。でも、絶対に断るでしょう。ご主人様に御執心のようですし。
それにエルフなのがいけません。人間だったらよかったんですが。
残念ながら、排除対象です。」
「なぜそこまで他種族を嫌うんですか?」
フィロは歪んだ表情でいった。
「だって、ムカつくじゃないですか。
私よりできない者が、私の持っていないものを持っているのですよ。
排除したいと思うじゃないですか。」
どうしてそこまで歪んでしまったんだろう。
本当にシェーンたちの兄弟なのかと感じるほどのものの何かを感じた。
「それだけの理由で⁉」
「私はそうは思いませんが、ね。」
カァァァン
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