変化と日常 78日目(season2)
父から受け継いだ裏通りにある店から外に出ると、大通りに並ぶ街路樹がその色を赤く変えようとしている。
気温は一月前と比べると大きく下がり、昼前とはいえ外を歩くだけでも上着が一枚欲しくなるほどに今年の秋は冷え込んでいた。
吹き付ける風に身を震わせながら、通勤時間を過ぎて静かになった通りを一人歩いて開店準備の買い物に出かけていく。
「……はぁ」
歩きながらその寒さを確認するように息を吐いてみるけれど、流石にまだ十月なので白くはならず、元気のない声だけが響いただけで終わってしまっている。
そこまでの変化を求めるにはまだ気が早いようだったが、周りは既に冬を迎え入れる用意が進んでいて、道行く先にある広告には既に冬の代名詞といえるものが至る所に貼り付けられていた。
その変わり様を風物詩のように眺めながら、心の片隅でもう少し『今』が待ってくれないかと願う私が寂しく存在している。
こういうのを、諸行無常とでも云うのだろうか。
ちょっとした変化にも、今の私は敏感になっているみたいで、それを身近に感じるだけで胸が少し痛くなってくる。
それもこれも、今まで親しいと思っていた人物の幸せな報告を受けたあの日──三咲と鈴音が付き合うことを聞かされたあの夜から始まり、私の心はどうにも揺らぎをみせるようになっていた。
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