3-6 調子と勇気
「・・・は? 雪音さんと再会したら、
お前のお母さんの義娘になってたぁ!?」
「お、おう・・・
めちゃくちゃ前のめりだな・・・」
「そりゃ突然の展開すぎてこうなるだろ!」
雪音の告白から一日が経ち、
俺は小吉と街へ出かけていた。
雪音はあの後すぐに部屋へと戻っていき、絵梨花ちゃんも俺と雪音の関係を焦りながら聞いてきていたが、昔俺が雪音の事を好きだったと知って少し落ち込んだ様子で自室へと帰っていった。
舞香はというと、衝撃だったのかこちらも心ここに在らずという感じで、明日も早朝からダンスレッスンがあることもあり、あの後すぐに寝てしまった。
「まぁ、それもそうか。でさ、
今度三人で久しぶりにご飯でも食べないか?雪音も小吉に会いたがってるし」
「・・・さりげなく雪音呼びになってやがるな色男。俺はいつでも大丈夫だぞ。」
「おっけい。わかったらまた連絡するわ」
「・・・」
小吉は無言で俺のことをジッと見つめる。
俺が どうした と問うと ふっ と微笑んで
「よかったな俊介。こんな形とはいえ、雪音さんに再会できて。まだ好きなのか?」
「えっ!?
・・・いや、それは」
小吉の突然の問いに、思わず口籠ってしまった。それを見た小吉は俺の肩をポンと叩き
「わかってる。大丈夫だ!俺にまかせろ!」
と、すごい爽やかな笑顔でそう言った。
・・・一体こいつは何をするつもりなんだ?
そんなこんなで俺たちは14時まで遊んだ。
小吉のバスケの練習がある為、現地解散となるが俺も特にここら辺に用事はない為、家へと帰ることにした。
「ただいまー・・・」
一人暮らしだった時は、ろくに言わなくなっていた挨拶も、舞香と暮らしはじめてから一人とわかっていても言うようになった。
そんな事をしみじみと感じつつ、明かりのついていないリビングに入ろうとすると、何故か誰もいないはずのリビングから男女の話し声が聞こえる。
(・・・え?もしかして、泥棒?)
不測の事態に驚きつつ、そーっとリビングの扉をあけるとそこには、ソファの上で体操座りをして、暗いオーラを出しながらドラマを見る舞香がいた。
なんだ、テレビの音か・・・
ん?てか、何で舞香がいんの!?
「・・・ただいま舞香。今日は夜までダンスレッスンじゃなかったのか?」
「・・・おかえり。なんか調子悪そうだから明日のドラマ撮影の為にも、今日は帰って休みなさいって言われたの・・・」
「え?どこか悪いのか!?」
「んーん。大丈夫。」
確かにいつもの勢いが感じられない。
体調は悪くないらしいけど、確かにこれは心配にもなるな。
・・・もしかして、昨日の事が原因なのか?
そう思った俺は舞香に聞いてみることにした
「なぁ、もしかして昨日の雪音の告白を気にしているのか?」
俺がそう聞くと、舞香がピクッと反応した。
完全に原因はこれだな。
正直なところ確かに俺にとっても舞香にとっても衝撃ではあったが、舞香がここまで落ち込むとは思わなかった。
絵梨花ちゃんが告白した時は逆に燃えてきた!って感じだったから、今回もそうなるものかと・・・
「なぁ、話だけでも聞かせてくれないか?
そんなに元気がないとさすがに心配になるよ」
俺は舞香の前に行き、
彼女と目線を合わせそう言った。
「・・・俊介は、
雪音お姉ちゃんのことどう思ってるの?」
「え?」
「だって昔とはいっても、一度は好きだったんでしょお姉ちゃんのこと。告白されてからまた気になり出したかもじゃん。」
舞香はボソボソとそう言いながら、
瞳に涙を溜めていた。
「そ、そりゃ昔は好きだったけど、
今は突然のことすぎてそんなこと考えれないよ。それに正直、雪音の好意はまだよくわからないところもあるし・・・」
確かに昨日はっきり言われはしたが、心のどこかで、そんないきなり好きになるのか?と疑問符を浮かべる自分もいる。
「たぶん本気だよ、お姉ちゃんは」
「・・・け、けど、珍しいな。
失礼かもしれないけどダンスとかオーディションのこととかを見ても、舞香はライバルがいたら燃え上がるタイプかと思ってたからさ」
「・・・だって、過ごした時間は少ないけど、雪音お姉ちゃんの事も大好きになっちゃったんだもん・・・」
確かに舞香は昨日、雪音に初対面とは思えないほど甘えきっていた。
なかなかあそこまでデレない舞香は、本当に雪音という人物の事を気に入ったんだろう。
なるほどなぁ。つまりはそんな大好きなお姉ちゃんとライバルにはなりたくないって感じか。やっぱり
「・・・ふふっ」
「な、なによ!
こっちは真剣に悩んでるのに!」
「ごめんごめん。
やっぱり舞香はかわいいなってさ」
「そ、そんなこと言ってもダメよ!」
そうは言いつつも、顔を真っ赤にして照れながらそう言う舞香。
「けど、そんな深く考えなくてもいいんじゃないか?舞香の気持ちを知った上で、雪音だって俺に告白したんだろうし。
・・・まぁ俺が言うことでもないけどさ」
「ぷっ。
確かにちょっと自意識過剰すぎるかも。
なんかイタいね俊介」
「うるせーよ!」
そう言ってケラケラ笑い出した舞香。
ちょっとは気が晴れたみたいだな。
やはり俺は元気な舞香の方が好きだ。
「そうだよね。俊介がもし、お姉ちゃんの事をまた好きになっても取り戻すだけよね。
お姉ちゃんの事は好きだけどやっぱり負けたくないし!うん!なんかスッキリした!」
「それは良かったよ。その調子で絵梨花ちゃんとも仲良くしてくれればなぁ・・・」
「乳デカはダメよ!露骨に体を使って俊介を誘惑してくるんだもん。まぁ、あの人自体は別に嫌いではないけどさ!」
やっぱりなんだかんだいって絵梨花ちゃんとも気が合うらしいな。
舞香は気づいていないのだろうが、絵梨花ちゃんの事を話す時も舞香は少し嬉しそうに話す。
素をだせる友達が出来たようでお兄ちゃんは本当に嬉しいぞ。
「ていうか、この前言ってたプールだけど明日の学校終わりにでも行かない?気分転換にどうかって縁さんにも勧められてるの」
あの温水プールのことか。
まぁ、舞香の気分転換にもなるのなら丁度いいな。
「あぁ、もちろんいいぞ」
「やった!じゃあ、もう18時だしお風呂入ろ!先に行ってるねー!」
「あぁ、わかった・・・・・・ん?」
ん? 今、お風呂って言った?
「ちょい待ち!なんで一緒に!?」
「だって帰ってから入ってくれるって言ったもん!今日は甘えたい気分なの!」
た、確かに言ったが、恥ずかしがりやの舞香がまさか本当に入ろうといいだすとは。
「わ、わかった・・・」
「ん!早く来てね!大好き!」
そう言って顔を真っ赤にした舞香は嬉しそうにお風呂場へと向かった。対する俺は心底驚いていた。
あ、あの舞香がここまで気持ちを前面に出して来るだと・・・
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次回投稿は7/11(日) 21:00 です。
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