2-8 相部屋とポンコツ教師
今日も一週間後に迫った、林間学校のための班別活動を行う。昨日は仕事のため、絵梨花ちゃんは休みだったが、今日は話し合いに参加できるようだ。
昨日の話し合いで、なぜか俺らの班の発表テーマは『絵梨花ちゃんは犬と猫どちらが好きなのだろう』という馬鹿げた内容になった。
いくら緩めでいいとはいえ、さすがに承認されないだろうと思っていたが田村先生はそれを承認した。いや嘘ではない、現実なのだ。
小吉と白鳥さんは喜び、俺はびびっていた。
いったい何を評価されたっていうんだ!?
「はい、皆さん班に分かれましたね。
それでは今日も林間学校の話し合いをしていきます。今日は知っていると思いますが、二限目には一年生も合流し共に行うフィールドワークの説明を行います。
今からの時間はテーマが決まってない班はテーマ決め、既に決定した班は内容を深めてください。簡単なものでいいですので、しっかり発表できるようにしましょうね。
それでは、始めましょう。
それと、蒼くんは少し話がありますのでこの後、数学科室までついて来てください。」
「え?はい」
なんだ?小吉も白鳥さんも なんかした? みたいな顔をしてくる。絵梨花ちゃんは何故かとってもニコニコしている。なんだ?俺の第六感が何かを知らせている、気が・・・
*
田村先生についていって、彼女の教科室である数学科室へと入る。先生は俺を対面に座らせると自分も座り、話を始める。
「今日はね、
折り入って蒼くんに頼み事があるの。
まぁ、端的にいうと林間学校で舞香さんと絵梨花さんを気にかけてやって欲しいということね。
絵梨花さんの事はいうまでもないかもしれないけど、やはり一年でも舞香さんが来ることによって少し騒ぎがおこったのよね。」
田村先生はそういいながら頭をかかえてため息をつく。確かに転入初日などのお祭り騒ぎは正直凄すぎた。学校中の人が舞香と絵梨花を見に来たことにより、活気でいうと体育祭のソレを遥かに凌駕していた。
「なるほど。だから一日中近くにいるタイミングが存在する林間学校で、何か間違いが起こることがないように、身内でもある俺に見張っとけということですね。」
「・・・理解が早くて助かります。
一応舞香さんと絵梨花さんには既に了承を得ているわ」
「早っ!それならまぁ、大丈夫ですよ。
それで、俺は何をすればいいんですか?」
「とりあえず次の時間、あなた達の班は、
舞香さんの班と組んでもらいます。
そして、フィールドワークは一緒に
「了解です。」
「そして、舞香さんと一緒の部屋に
泊まってください。」
「まぁ、了解です。」
「絵梨花さんと共に。」
「はいはい、了解で・・・はい?」
「だから、舞香さんと絵梨花さんと同じ部屋で一泊してって言ってるのよ」
「いや、待ってくださいよ。先生。
舞香は100歩譲ってわかりますよ家族ですから。何で絵梨花ちゃん!?だめでしょ絶対!」
「あのねこれには深い理由が・・・」
「それに!ファンがこんなの知ったらどうするんですか!?絶対ばれるじゃないですか相手は年頃の生徒達ですよ!?」
「だ、だからそこらへんは私たちが・・・」
「てか、まず大前提なんですけど女子と同じ部屋っていいんですか!?絶対だめでしょ!
絶対に色んなところから苦情きますよ!
何考えてんすか先生!」
ハァハァ と息を切らしながらそう言うと、
「・・・そんなに言わなくていいじゃん」
え?
田町先生が、拗ねた?
なんか目元がうるうるしてる。
え、泣き出しそうじゃん・・・
そしてプルプル震えながらも話し始める
「そんなの私が一番わかってるしー!
でも、でもーあの二人の事務所の人たちから絶対に問題を起こさないようにってーめちゃくちゃ何回も何回も何回も何回も・・・
とにかく、いっぱい言われたんだもん!
それで校長も先生方も困って一番若い私に全部投げてくるしさー。そこで私なりに精いっぱい考えたら、思いついちゃったのよ!
家族である蒼くんに一緒に付き添って貰えば舞香ちゃんは解決するくね!って!」
「・・・するくね!じゃないですよ!
てか、何ですかその話し方は!いつもの凛々しい先生はどこにいったんですか!」
「だって、蒼くんがいじめるんだもん。
あれだって疲れるのよ?若いからって舐められないようにしてたらなんか板についちゃってさー。本当はこういうのがいいのよ!
どうせもう貴方にはバレたんだしいいでしょ!」
なんかめちゃくちゃ開き直られたんだが!?
みんなの憧れである、クールビューティー田村先生のこんなガハガハ笑う姿をクラスメイトに話したところで信じてはもらえないだろうな・・・
「まぁ、ひとまずそれは置いといて、
舞香にはそれで納得してもらえたのかもしれませんけど、何で絵梨花ちゃんもなんすか」
「なんか仲良さそうだったし、いけるかなーってダメ元で絵梨花さんに同じ事を確認したら二つ返事で即了承してくれたのよ!やっぱ言ってみるもんね!
なんでも貴方たち幼馴染みたいじゃない!
それで、これは都合がいいってなって今に至るわけよ!色男ね蒼くん!最高よ!」
「・・・色々とネジがとんだ人が集まってんのかこの学校は。てか、そんなのいくら二人がよくても学校も二人の事務所もダメでしょう。」
「それが、
まさかのこちらもOKとれました!拍手!」
「なんで!?」
「まず学校はこの問題が解決するなら何でもいいって感じでしょ?そして、舞香さんの事務所は貴方たちの関係知ってるぽくて、目を離して他の有象無象とあれこれされる可能性があるくらいなら、家族でいる方がいいって。」
いやひどいな。有象無象て。
「絵梨花さんの方はなんと!社長さん直々に蒼くんなら良いよって言われました!」
・・・はい?
「しゃ、社長!?
何で俺ならいいんすか!?」
「そんなの知らないわよー。
今まで何言ってもダメばっかりで、めちゃくちゃ落ち込んで、緊張してたのに貴方の名前出したら、いきなり社長に電話し出して即OKなんだもん。今まではなんだったのーって感じよ。まったく。
ていうか、貴方の知り合いじゃないの?」
「ただの高校生にそんな知り合いいるわけないでしょう・・・」
「と、に、か、く!
さっきいいよっていったからね!
貴方には二人を守る任務を与えます!
本当に大事な任務だからね!
なんかあったら私の首も飛ぶから!
ほんとに!よろしくね!協力はするわ!」
「もし、断れば?」
「私のうけもちの教科の貴方の評価をめちゃくちゃ下げます!」
「ひどすぎる!?」
「まぁ、それは冗談として・・・
お願いします!この通りです!
発表のテーマもめちゃくちゃ簡単なのにしてやったから!お願いしゃす!」
めちゃくちゃ綺麗に折り畳まれた担任の謝罪姿をみて断れるやつはいないだろ・・・
というか謎がとけた。なんであんな変なテーマが通ったのかと思ったら、担任の個人的な悩みのおかげだったというわけか。
・・・本当に大丈夫なのかこの学校は!
「はぁ、わかりましたよ・・・そのかわり絶対にバレないようにお願いしますね!」
「やった!ありがとう蒼くん!いや蒼様!
大丈夫よ、今の私たちには運が・・・
いや、神が近くで見守ってくれてるわ!」
そう言って両手を掴まれブンブンと高速で振られる。
よほど困っていたのだろう。
まるでエフェクトがついているかのような目の煌めきをしている。林間学校で1.2年の生徒がいる中で、アイドルと女優と共同部屋か。
不安と期待が入り混じりすぎだろ!!!
キーンコーン カーンコーン
あ、一限終わった。そんなに話してたのか!?時間が経つの早っ!と思っていたら
なんか廊下が少し騒がしくなってきたような。いや、なんか言い争いしてる?
だんだん近づいてくる!?
「「先生!」」
扉が開くと同時にそう言って、めちゃくちゃ勢いよく、舞香と絵梨花ちゃんが教科室へと入ってきた。
「先生!私聞いてないです!
何で舞香ちゃんも一緒なんですか!?
俊介くんと二人なんじゃないんですか!?
せっかく二人きりと思ったのに!
全然話が違いますよ!!!」
「私も聞いてないです!
なんでこの牛チ・・・絵梨花センパイとも一緒なんですか?家族でもないのにそんなことしたらダメだと思います!」
「あなたはいつも家でふたりきりでしょ!」
「センパイだって一緒のクラスじゃないですか!」
うわぁ、凄く揉めてるよ・・・
どこで聞いたか、二人とも先生に抗議するべくやってきたみたいだ。
おそらく舞香が絵梨花ちゃんに自慢しようとしたら発覚って感じだろう。
てか、この先生二人にそれ伝えてなかったの・・・うわ、 忘れてた、テヘ♡ みたいな顔向けてきやがる。
ん?なんだ?口をパクパクして
な、ん、と、か、し、て って知るかあ!
こちらも口パクで 嫌だ と言うと、少しオロオロしてゴホンと咳払いをし、
「と、とにかく!
これは二人の事務所もOKをだした決定事項です!変更はありません!守れなければ一緒の部屋自体なしです!以上!かいさーん!」
そう言ってそそくさと逃げるように俺たちの教室へと戻る田村先生。残された二人の芸能人は未だにグヌヌと睨み合っている。でも、最後の先生の言葉が効いたのか、さっきのような二人きりがいいみたいな会話はなくなった。
こんな状態で問題も起きず過ごす事はできるのか。しかもフォローするっていってもあのクールビューティーの皮を被ったポンコツ先生だろ?やばい、期待と不安が一気に不安一色になったんだけど・・・
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また見たい!面白い!と思っていただけたら是非評価をしていただけると助かります!
創作意欲がさらに高まります!
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