カオス戦国 ～気付いたら18禁乙女ゲームの世界に転生してました・でも私、攻略される武将側なんですけど！？～

第28話 兼継イベントのススメ・勃発 ～side S～

「姫、今日は良い天気ですし、散策に行きませんか？」

　そう雪村が誘ってきたのは、越後の生活にも慣れてきた　うららかな昼下がりだった。昨日、信倖からの文を読んでいた時は難しい顔をしていたが、それは解決したんだろうか。

　ゲームをやってる時は意識してなかったけど、桜姫以外のキャラは意外とアレコレあって大変だなと改めて思う。ここはゲームじゃなくて「その世界観の現実」なんだな、というか。

　でも今の俺は「ゲームやってるから、この先の展開を知っている」っていうアドバンテージを失っているんだよな。

　俺がキレて展開を変えてしまったせいで。

　本来は克頼が桜姫を『神の子』だと暴露するだけで「嵐を鎮める」なんて展開はない。そして花見終了後はそのまま甲斐に戻っている。

　今の越後滞在は、すでにゲームとは違う展開なんだよ。

　そのせいで雪村は、現代なら大学生くらいの歳なのに、女連れて大阪から新潟まで怨霊討伐しながら単騎駆けする羽目になった。

　こっちに来たら来たで鍛錬の合間に農作業の手伝いして、それでいて俺のところにもちゃんと顔を出す。

　あいつホントに過労死しそうなくらい働いている。

　俺のせいで本当にすみません……

　さすがの俺も、雪村は少し休んだ方がいいんじゃね？と思っていたから、散策くらい付き合ってやろう。

　決して内心　デートだ！と浮かれている訳ではない。

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「越後はきれいな花がたくさんあるのね」

「ここは神龍の加護がありますから。これだけ咲くのですから花を贈り合う風習も楽しいでしょう」

「お花を贈るの？」

「はい、越後では意中の方に花を贈る風習があります。花には花言葉というものがありますから、気持ちに見合った意味を持つ花を贈るのだそうです。そうだ、姫も兼継殿に贈ってみてはどうでしょう？越後ではとてもお世話になっていますし」

　おい。

「意中の方」に贈る風習で兼継に贈れってお前、さらっと他の男を薦めるなよ。

「雪村は桜姫に興味ない」って言ってるようなもんだぞ。

　それともアレか、本気で「世話になってるんだから贈れ」って言ってんのか？

　朴念仁の思考回路が読めなくて、俺は軽く途方に暮れた。

　オトすのは絶対に雪村じゃなきゃならんって事はない。

　無理そうなら他のキャラを攻略するって手もあるが、兼継はダメだ。

　俺の目的は女の身体でエロ体験をすること。兼継ルートは桜姫との18禁イベントがないからオトす意味がない。

　だからと言って雪村にそう伝える訳にはいかないので、俺はしぶしぶ誤魔化した。

「そうね……でもわたくし、花言葉は詳しくないわ」

「花言葉をまとめた冊子があるはずです。侍女衆に聞けば誰か持っているでしょう。私もそんなに詳しくはありませんが……そうですね、例えばこれは秋海棠といって花言葉は「恋の悩み」だとか」

　ピンク色の花を摘んで俺に渡しながら、雪村はいくつかの花とその花言葉をあげてきた。

　秋海棠の花言葉は「恋の悩み」か。おお、今まさに俺の心境って感じの花だ。

　恋に悩むっていうより朴念仁の思考回路に悩んでるんだけどな。

　桜姫と雪村、けっこう仲がいいと思うんだが、どうして恋愛に発展しないんだ……？

　それに雪村で攻略不可なら、俺は信倖や美成との好感度を、雪村以上に稼げる気がまったくしないぞ。