文亀4年(永正元年:1504年)

第九十六話 流れ者を監督したい

横田城 阿曽沼孫四郎


文亀四年 


「あけましておめでとうございます!!!」


「うむ。昨年は南部に攻められるかと思ったが、無事年をこすことができた。今年は葛西殿の戦に手を貸すことももあろうが、皆の努力を期待する」


 今年も昨年同様新年の宴でどんちゃん騒ぎとなり、数日二日酔いで皆潰れていた。

こんなところを攻められたらどうするんだろうね。


 三が日が過ぎ、今年最初の評定が始まる。人口は大槌も加わったこともあり、三千五百人あまりとなった。戸籍にはまだ乗っていないが流れてきた者共が百人ほど来ているそうだ。作柄については米が約五千石、小麦が約二千石、大麦も約三千石、粟が四百石、稗が三百石、大豆が二百五十石などなど。馬は昨年十頭産まれ今は百頭ほどが牧に放たれているという。


「流れてきた者らの扱いはどうしようかの?」


「今はまだ乱暴狼藉などは無いようですが」


「うむ、時間の問題だろうな」


 流れてきた奴らはまだ未開地があるので今のところ落ち着いているが、その土地も無限ではないし、この遠野盆地では田畑にできる面積など知れている。よそ者であるから、放っておけば治安悪化につながるので何か仕事なり何なりさせて飯と村の者とのつながりを作らせる必要がある。あとは移入者の把握と監視をせねばな。


「父上、よろしいでしょうか?」


「うむ、言うてみよ」


「流れ者が暴れるとしたら飯がなくて暇を持て余すからかと。ですので仕事と飯をあたえ、移入者を管理監督する部署を設けてはいかがでしょうか?」


「どういうことだ?」


「一つは流れ者の名簿を作るのです」


 名簿を作って移入者を管理し、名簿に無い者を作業に従事させないようにすれば管理できるかな。公家衆などの扱いはまた考えねばならぬが。


「移入者の監督する部署を移民局とでも名付けて見てはどうでしょう」


「それはよい。で?」


「来たばかりのものならば住むとこも食うものもありません。そこで一定期間、住処と飯と仕事を与え、信頼に足るもののみ名簿にしるして領民とするのです。またこの期間に監視する者を設けることで間者の紛れ込みを最小限に致します」


 外人部隊とかもいいけど、それは外様などを得てからかな。監視部隊は人が増えるまでは保安局にやって貰おう。そのうち関なども管理させる移民関税執行局を構築して独立させようね。


「一定期間とはどれくらいだ?」


「一年くらいはどうでしょうか?」


「何をさせる?」


「開墾や新しい城下の造成や道の改良に治水作業、さらには金堀衆として」


 農作業の合間に作業をさせると農繁期に作業が止まってしまう。ただでさえ雪で冬は動けぬのだ流れてきたものを有効活用できればまたよい。死んだとて領民は減らぬので誰も困らない。生き残ったものや逃げ出さなかったものは性根がしっかりしているだろうからある程度は信頼できるだろうしな。


「ふむ、危険な作業を移民にさせるのだな。死んでも元の民が減るわけでもないし良いのではなかろうか。なぁ兄上?」


 守綱叔父上が賛同する。他の将たちもそういうことならと賛同してくれた。もちろん、こちらから呼び寄せた人材などは別扱いだ。


 その移民達を管理する移民局の局長はかなり重要なので守綱叔父上が補任された。真面目な叔父上ならば滅多なことは無いだろうからこれは安心して任せられる。

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