第96話 一難去ってまた一難
投稿が遅れてしまい申し訳ありません。
今回は内容はともかく長文を書けました。
楽しんでもらえたら幸いです。
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あれから、3日が経過した。
3日間の間アカリは、何かの用事で何度か部屋を出たりしたが、基本的に私の事を付きっきりで甲斐甲斐しく看病してくれたおかげで両腕の骨折も全身の怪我も完治。
ボロボロだった身体は無事治った。
これなら問題無いとアカリも判断した様で、明日には館を出て王都へ帰ろうと考えているそうだ。
本当に短期間の間に色々とあったよ。
本当に看病してくれたアカリには感謝しかない。
いつか、何かしらお礼をしたいものだ。
まぁ、多分本人にお礼したいといっても「別に気にしなくても良いのに~」とか言ってやんわり断ってきそうだがねぇ。
ん?何でかだって?
そりゃあ、あの
勿論、言葉遣いから分かる通り使用人の真似だからメイド服は着用したままだ。
目茶苦茶楽しんでたよ。
私は、羞恥で頭がどうにかなりそうだったがねぇ。
まぁ、そういう訳で断ってくるかもと思った訳だよ。
ただ、別にこの3日間全てをアカリのおふざけで振り回されてた訳でわない。
暇な時は、世間話や地球での思い出話、異世界でのお互いの話等々もした。
楽しかった思い出や私の知らなかった愉快で興味深い話が聞けてとても有意義だったとも。
しかし、非常に残念な事に全てが有意義な話しだけとは限らなかった。
アカリから聞かされた話からトンデモナイ事を聞かされたのだから。
確かに、何故か私の知る見た目と変わっていた。
何で変わっているのだろうかと疑問にも思った。
だからと言って、死んで吸血鬼に転生したから何て思うわけないだろ!!
しかも、死んだ原因を聞いてみれば勇者召喚が失敗していた事が原因ときた。
つまり、あの糞国王が原因だ。
流石の私もそれを聞いて「はぁ"?」と言葉が漏れてしまった。
ただでさえ、地球へ帰る為の手段を潰す最悪な前科があるというのに、ここにきて私の大切な友人を殺していたと。
もう、駄目だろ。
言い訳無用。
殺されても文句は言えないだろ。
と、思ったのだが、それはクラスメイト達も同じだった様で真っ先に殺しに駆け出した者達が居たみたいだ。
誰なのか聞いてみれば、由比と美紀の二人だった。
私と同じく何度か危なかった所を助けられた事で、アカリの事を大切な友人と思っていた二人だ。
ブチギレてもおかしくない。
現に私も殺そうと考えた位には内心酷くキレたのだから。
まぁ、結局はアカリが利用するから殺さない様にと止めたらしい。
だが、本人が良くても大切な友人が一度殺された事に変わりはないのだ。
私は到底許せはしない。
なので、城に戻ったら殺さない範囲で個人的に仕返しする事に決めたのだが、アカリが仕返しの事を聞いて乗ってきたのだ。
当たり前だが、アカリも内心は良くは思ってなかったみたいで私が誘拐された問題に対する落とし前について考えていたみたい。
ただ、利用価値があるので殺すのは禁止。
なので、私の仕返しで何かしら落とし前させるつもりみたいだ。
それで、二人で話し合った結果色々とアイデアが出て私の生産スキルを使ってある物を作り仕返しする事に決まった。
フフフフフフ。
材料自体は、城に揃っているから帰れば直ぐに作れる。
実に楽しみだよ。
「フフフフフ」
「どうしたの瀬莉?急に笑いだして。何かあった?」
「ちょっと、思い出し笑いをしただけだよ。だから、心配しなくても大丈夫さ」
「なら良いけど」
私は、後ろに座るアカリにそう言って心配しないようにと告げる。
ついでに、続けて現在私に迫ろうとしている問題をアカリに言う。
「うん。所でお願いした背中は洗い終わった筈だろう。何で前まで身体を洗おうとしているのかなぁ」
「まぁまぁ、女子同士だから気にしなくても良いじゃん。気にしない気にしない。……あ、ふにふに」
「ひゃん!?ちょっアカリ胸を触るな洗うな!!ひうっ!オイコラ揉むな!!!」
私は、アカリから離れると胸を隠して睨む。
この愉快犯の野郎どさくさに私の胸を揉みやがった!!!
「柔らかかったよ!収まり具合も良かっグェ"ッ!」
「誰の胸が小さいだコラ!!」
この野郎、絶対に許さん。
後で覚えておけよ!!!
私は、殴り飛ばしたアカリを放置しておいて浴場を後にした。
あ、今さらだが、緋璃からアカリ呼びに変わっているのは本人から転生したから神白や緋璃呼びでなくアカリ呼びに変えるようにお願いされたからだ。
まぁ、緋璃もアカリも呼び方は同じ『あかり』だから対して変わらないが。
ただ、元の緋璃は本当に死んだのだと少し悲しくなるがねぇ。
『ううぅ~~~瀬莉にぶたれたぁぁ~~~~!!』
扉を隔てた浴場から何か聞こえてくるが、このまま放置で良いだろう。
多分、数分もすれば勝手に復活して戻ってくるさ。
私は、このまま部屋に戻って寝させてもらうとするよ。
なお、あの超絶美顔をぶん殴ったのは凄い罪悪感がヤバかったのをここに記しておく。
※※※※※
やあ、アカリだよ。
ちょっと、おふざけが過ぎて瀬莉にぶん殴られちゃいました。
反省中です。
ただ、瀬莉の控えめだけど確かな存在感のある柔らかさは最高でした。
まぁ、それは置いといて看病する事はや3日。
ようやく、瀬莉の怪我も完治した。
これで、瀬莉を連れて皆の待つ王都に戻る事が出来る。
この3日間、瀬莉と色々と話したりした。
そこで、何があって拉致される事になったのかも話を聞いた。
その時の話を少し振り返ろう。
~~~~
「所で瀬莉。話せたらで良いけど、どんな方法で襲撃されたの。ちゃんと護衛が居たんだよね?」
私は、瀬莉が目覚めた翌日に襲撃の際の様子を聞いた。
ただ、最悪な事にトラウマを抱えてしまった瀬莉に無理はしてほしくないので話す事が無理そうなら聞くのは諦める。
城に戻って報告をする際に、適当にストーリーを構成して嘘の報告をしたらいいだけ。
真実を知っているのは瀬莉だけで、犯人側は私がこの世から消したから問題はない。
「大丈夫、話せるよ」
しかし、瀬莉は私に当時の事を話してくれた。
「あの日は、確かに護衛の騎士達が居た」
ヘリウスの森で目的の素材を採取をする為に男爵領に程近い林道を馬車で走っていた時だ。
窓の外の景色を眺めていたら突然馬車が止まった。
「ん?何事だい?」
何事かと思ったが、窓からは確認出来なかった。
なので、扉を開けて外を見てみたら護衛の騎士でない鎧を着ている者達が五名居たんだ。
「何者だお前達は」
「私達は、男爵領領軍の兵の者です」
どうやら、近場の男爵領の領軍とやららしい。
その五名と護衛の騎士達が、何やら話をしていて聞こえた内容から近場の森で巨大な魔物が最近目撃されているので、私達を見掛けたからわざわざ注意をしてくれたらしい。
騎士達も私も彼らの気遣いに感謝したよ。
そんな報告等、ここに向かう時は見聞きしなかった。
本当に最近に目撃されたんだろう。
知らずに遭遇したら危なかったかもしれない。
私達は、彼らにお礼を告げて馬車を再発進した。
だが、直後にそれは起きた。
「宮本様、発進しまがぁ"ッ!?」
「何をぐぁ"!!」
突如、馬車の両脇を守っていた騎士達が倒れた。
倒れている騎士には剣が深々と刺さっていた。
「ぇ、な、何が」
地面に漏れ出る血液が広がっていくのが見える。
映画やドラマ等でしか見た事のない出血量。
今すぐ手当てしないと間違いなく死ぬ。
頭で理解しても現実で、目の前でこんな事が起きても身体は動いてくれなかった。
「お前ら!馬車の紋章が見えないのか!!この馬しグウ!!」
「うるせえ!知ってんだよ。王家の馬車だろ」
「なら何故、がぁ"!?」
「後ろがお留守だぜ」
また一人囲まれてやられた。
「クソ!何が目的だ!」
「さあな。そこの女を連れてこいとしか聞いてないからな。お前は要らないからさっさたと死ね」
「簡単に殺られると「ぐっ離せ!」な!宮本様!!」
私は、呆然としている間に捕まってしまった。
そのせいで、騎士は反撃する事が出来なかった。
私が捕まる事がなければ冷静に対処して鎮圧する事も出来たかもしれない。
「死ねえ!!」
「残念だったな!!」
「ごはぁ"ッ」
最後の一人も私のせいで何も抵抗する事が出来ず殺された。
その後、私は男達に男爵領の館に連れていかれた。
「それで、館に着いたら金を造れと命令されたけど当然断ってね。激怒されて襲われそうになったから股間を蹴りあげたらぶっ倒れてのたうち回ってねぇ。痛みから回復したら顔面をぶん殴られて地下室に監禁されて宝石類を造らされてたんだよ。本当は金が良かったみたいだが機材が悪くて無理と言ったらまたぶん殴られて諦めて出ていったよ。顔面は腫れて最悪。だが、顔面が腫れた事で見た目が悪くなって犯される様な事は起きなかったのは幸いだったよ。まぁ、瀕死間際まで殴る蹴るの暴力はされたけどねぇ」
「そっか。話してくれてありがとね」
~~~~
以上が、事の全てだ。
どおりで、手練れの騎士の筈なのに殺られる訳である。
こんな方法じゃ護衛の騎士が一方的に殺されたのも仕方ないかもしれない。
瀬莉は、自分が人質になったせいで騎士達が死んだと話したが元を辿れば襲撃してきた男爵一味が全て悪い。
だから、気にする必要はないとは言ったが目の前で殺されたのだから難しいだろう。
本当に余計な事を男爵共は仕出かしてくれた。
もう少し苦しませて殺せば良かったよ。
「瀬莉もう怒ってないかなぁ?」
まぁ、既に殺した奴等の事等どうでもいい。
気にするだけ思考の無駄だ。
「服は乱れてないね」
メイド服が乱れてないか確認する。
パッと見た感じ綺麗に着れている。
多分、問題は無さそうだ。
「お嬢様~明日も早いので一緒に寝ましょう」
「ほら、やっぱり復活してた」
「???」
どゆこと?
※※※※※
「それじゃあ、帰ろっか」
「そうだねぇ」
翌日になった。
予定通り私達は、今日から王都へと帰るつもりだ。
「所で、どうやって帰るんだい?それに、館は使用人だけで良いのかい?」
瀬莉が気にするのも当然だろう。
だって、帰る為の馬車の類いが何も用意されてないのだから。
だが、何も問題は無い。
帰宅手段も館に関しても準備は出来ている。
「大丈夫大丈夫。帰る手段もあるし館に関しては、町の町長に任せてるから」
「もしかして、何度か部屋を空けてたのはその説明をしに行ってたからかい?」
「そゆこと」
瀬莉の言う通り私は、何度か看病の合間に町長に今回の問題を一通り伝えた。
勿論、全て馬鹿正直にではない。
嘘を混ぜた程よく私達に都合の良いシナリオを作って話した。
普通ならいきなり現れた少女の話し等信用ゼロで信じてもらえない。
だが、コチラにはAランク冒険者という都合の良い肩書きがあったおかげで少し実力を見せたらあっさり信用してくれた。
マジでAランク冒険者の肩書きが便利である。
「それじゃあ、王都に向かって」
私は、隣に立つ瀬莉の背後に回る。
「は?ちょ、何で後ろにって嘘だろ!!」
「レッツラゴ~~♪」
「キャアアアアァァァァーーーーーー!!!??」
そして、瀬莉をお姫様抱っこして抱き上げると風を纏い空を飛び立った。
※※※※※
町を飛び立ちはや数時間。
私達は、何処かの森の中の木々の空いた場所を見つけ休憩を取る事にした。
「ぜぇーーーーーぜぇーーーーーぜぇーーーーーーー………………し、死ぬかと思ったぁ!!」
そして、地面に降りた瞬間に瀬莉は腰が抜けたのか地面にへたり込んでいた。
「もぉ~~そんな怖がらなくても落とさないって」
「あ"ぁ"?」
「誠に申し訳ございませんでした」
瀬莉の鬼の形相。
私は、即座に土下座をした。
謝罪って大事だよね。
悪い事したら素直に謝るのは大切だ。
頭を抱える教師、指に絡まる抜け毛を絶望な表情で見る教頭、胃の辺りを押さえる校長、爆笑する生徒会長。
前世で何度も職員室で謝罪した日々を思い出すよ。
そして、毎回思うが悲壮感漂う教員一同を見ながら爆笑していた生徒会長は確実に愉悦者だと思う。
って、思考がズレたね。
元に戻さねば。
「とりあえず、何か飲み物を貰えるかい?」
「どうぞ、果実水です」
私は、収納から果実水の瓶を取り出して瀬莉へ渡す。
そんな私を瀬莉は、何故か何とも言えない表情で見てきた。
「アカリ」
「ん?何?」
私は、何だろうと?を浮かべながら瀬莉を見つめた。
すると、瀬莉は私を見ながら口を開いた。
「何で、今もメイド服なんだい」
「何か気に入ったから」
「………………そうかい」
瀬莉は、若干呆れた様な表情を浮かべるとそう言葉を漏らした。
何か今にも「聞いた私が馬鹿だった」とでも言いそうである。
「そうだねぇ。アカリは、転生前から愉快犯だったからねぇ。聞いた私が馬鹿だったよ」
「ちょっと待って」
言ったよマジで。
でも待って。
心外過ぎる言葉まで言われたぞオイ!
「愉快犯って酷過ぎない!?え、待って私ってそんな風に思われてたの!!?」
まさかの瀬莉の私に対する印象。
流石の私も心外過ぎる為に抗議しなければならぬ。
「ちなみに、これはクラスメイト一同も同意してたよ。目茶苦茶優しくて頼りになる。けど、一度スイッチが入って行動に出ると手が付けられなくなる愉快犯だと」
「そ、そんな」
抗議前にあえなく撃沈。
私は、何も出来ずに地面に崩れ落ちた。
「私は、ただ自分が面白いと思った事を心底楽しんで実行しているだけでなのに」
「だからって、やり過ぎだと思うのだが。君、新聞部に体験入部した時何をしたか覚えてるかい?」
「あの時?」
確か、あの時は………………
「教頭を張り込み調査してカツラを買おうとする瞬間を目撃して新聞にしたけど」
一応プライバシーとかもあるから写真は撮らなかったし事前に教頭に新聞にしてもOKか確認を取って「生徒が笑顔で学校生活を送れるなら」と泣きながらOKを貰ったんだけどなぁ。
まぁ、あの涙は嬉しい涙でなく悲しみの涙だったろうけど。
あの教頭、生徒に優しいって評判だったし。
「どう考えても、やり過ぎだろ?」
「まぁ、確かに今思えば、ちょっとメンタルブレイクさせてたね」
教頭も結局、掲示板に貼り出して半日もしないで新聞外してたし。
そして、何故か私を直後に放送で職員室に呼び出してたもんなぁ。
当時文化部モノの部活漫画にハマってて、ちょっとだけ熱くなってただけなんだけど。
「とりあえず、アカリが愉快犯って印象を持たれてるのは、そんな事を仕出かしてるからさ。君、普段は本当に優等生の見本みたいな人物なのに。心底不思議でしょうがないのだが」
瀬莉は、そう言うと会話を止めて果実水の蓋を外して飲み始めた。
「あ、美味しい」
「だよねぇ」
私も同じ果実水を取り出して飲みながら瀬莉の言葉に同意する。
この果実水だが、王都内を散策していて偶然見付けたのだ。
気になって買って飲んだ時は、とても美味しかったので気に入って買溜めして調べものの合間等に良く飲んでいる。
味としては、リンゴジュースの薄い感じが近いだろうか。
「どれくらい休憩するんだい?」
「そうだねぇ。時計が無いからなぁ。とりあえず、もう少しだけ休憩したら出発しよっか」
時計さえあれば、時間の経過が詳しく分かって何分後とかハッキリ言える。
しかし、残念ながら時計の類いがないのでハッキリとした時間が言えなくてこんな曖昧な答えになってしまった。
「時計が無いから仕方ないよ。とりあえず、アカリが出発する気になったら教えてくれたまえ」
「了解」
だが、瀬莉も時計が無いのは理解している。
私の曖昧な返答にも納得してくれた。
私は、有り難く思いながら先からしている索敵を続けながら何かないかなと他の探知系統のスキルを発動して周辺を探ってみた。
「おぉあ!?」
「ん?どうしたんだい?」
「あ、いや」
何となくの暇潰し感覚で発動しただけなのに何と魔力感知に反応が返ってきたのだ。
まさかの結果に思わず変な声が漏れてしまった。
しかし、反応が返ってきたのなら丁度良い。
反応の感じからして魔物や魔法攻撃の類いでは無さそうである。
興味深いので確認しに行ってみるとしよう。
「実はさ、この奥から強い魔力の反応がするんだよね」
「敵かい?」
「いや、魔物や魔法の類いとは違う感じ」
「そうかい」
敵かと警戒した瀬莉だったが、私の返答を聞いてホッと安堵した。
しかし、直ぐにだとしたら何の反応なのか私同様に気になったのだろう。
興味深そうに私に聞いてきた。
「だとしたら、その魔力は何なんだい?」
「流石に、それは直接見てみないと分かんないんだよねぇ。だからさ、ちょっと見に行ってみない?」
「ん~~…………」
危険な可能性もある。
それも、誘拐されて間もないのだ。
どうするかと、瀬莉は即答せずに腕を組むとしばらくの間悩んだ。
悩んだ結果。
「見に行ってみるとしようか。確認するだけなんだろう?」
「うん。瀬莉も居るからね。正体程確かめて終わるつもりだよ」
「なら良かったよ。それじゃあ、行ってみようか」
「お~~!!」
そうして、私達は早速魔力感知の反応を頼りに現場に向けて出発した。
「どれくらいの距離なんだい?」
「そうだねぇ。数十メートル位かな?百メートルも無いよ」
私の魔力感知は、最近取得したばかり。
故に初期からある索敵程の精度も範囲もない。
とはいえ、大雑把ではあるが大まかな距離は分かる。
「そろそろだよ」
「何があるのかねぇ」
反応がかなり近い。
そろそろ、この強い魔力の大元が見えてくるはずだ。
「あれ?」
「空き地?」
しかし、魔力の大元と思わしき場所には何も無く木々の開けた先程私達が休憩していた場所と似たような場所があるだけだった。
「何も無い?何で」
「本当に此処であってるのかい?」
「それは、間違いなく」
何せ今も発動している魔力感知で、その魔力が私達の立つ場所を覆っているのだから。
それも、感覚的に現在の私の全MPの数倍か下手したら十倍以上の魔力がである。
だというのに、現場には何も無いのはおかしい。
私は、何故なのかと頭を悩ませたが一つくらいしか答えは出なかった。
「自然の魔力が、ここに偶々集まってただけ?」
「かもしれないねぇ」
それ位しか考えられない。
思ったよりつまらない結果に私も瀬莉もガッカリした。
せめて、強大な魔力を秘めた魔剣とかあったら良かったのに。
「出発しよっか」
「そうしよう」
瀬莉も同意したので出発しようと私は、瀬莉をお姫様抱っこすると風を纏う為に魔力を使用した。
『ゴゴゴコゴゴゴ』
瞬間、地震の様な地面の揺れる音が辺り一帯で響き出した。
「は?」
「な、なんだいこの音は!?」
私も瀬莉も突然の事に訳が分からず困惑する。
だが、直ぐに思考を切り替えると何が起きても対応出来る様に瀬莉をより抱き締め周囲を警戒した。
一体何が起きてんの。
索敵に反応は無いから魔物の可能性は低い。
恐らく魔物とは別の何かだろうけど。
てか、この魔力の反応何なわけ?
マジで意味が分かんないんだけど。
何が起きているのか分からない。
が、唯一分かる事が一つあった。
それは、この場の魔力が突如荒れ狂い変形とでも呼べば良いのだろうか?
とにかく、おかしな反応をしていた。
何か、これマジでヤバイかも。
ここを離れた方が良さそう。
私は、直感で面倒な事が起きそうな気がしてこの場を離れようと決断した。
なお、音が鳴り始めて数秒での決断である。
十分早い決断と言えるだろう。
しかし、今回ばかりは遅い決断であった。
「瀬莉ここからッ!?」
離れようとした瞬間、視界が暗転と同時に浮遊感に襲われた。
五感も上手く働いておらず感覚が狂う。
いつまで、続くのかと思ったが一分もせずにそれは終わった。
感覚が戻り閉じていたらしい目を開ける。
すると、おかしな光景が見えた。
「え、川?」
そこには、先程まで無かった筈の川。
それも、地球のアマゾン川みたいな馬鹿デカイ大河があったのだ。
「ちょっと待って、え、どうなってんの」
困惑した。
それはもう困惑した。
しかし、困惑ばかりしてられない。
瀬莉が無事か確認しないといけない。
「瀬莉大丈夫だった」
瀬莉へと声を掛ける。
同時におかしな事に今更ようやく気付いた。
腕に重みが、身体に触れている筈の感触が、どちらも無い事に。
「嘘、でしょ」
抱き締めていた筈の瀬莉が、消え失せていた。
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