第95話 友人との再会
「ぅぅん…………朝、か」
窓から差し込む明るく暖かな太陽の陽光に照らされて私は、目を覚ました。
「うッ……眩しい。…………え?」
そして、目覚めて直ぐにあり得ない事実にようやく気付き寝起きで若干ぼんやりしていたが速攻で眠気から覚醒した。
上体を何とか起こして辺りを見渡す。
何で私は部屋の外に?
いや、そもそもこの部屋は何処なんだ?
それに、まだ痛みは残ってるが身体が動くし思考もハッキリしている。
そういえば、おぼろ気だがメイドの誰かが回復薬を飲ませてくれた気が。
もしかしたら、メイドの女性があの地獄の部屋から助け出してくれたのかもしれない。
あの時は、本当に死にそうな程に身体はボロボロで痛くて苦しくて辛かった。
もし、メイドの女性が来なくて手当てしてもらえず部屋に放置されていたら遠くない未来確実に死んでいただろう。
折れていた腕は流石に完治していないが、他の怪我はある程度治ってきている様子。
本当に助かったか分からないが、こうして更に手当てしてもらい生きていられる事は事実。
返せる物は何もないが、せめて一言だけでもメイドの女性にお礼を言いたい。
そんな事を考えていたその時、私の居る部屋の扉が開く音が聞こえた。
私は、その音に自分でも驚く程に大袈裟に反応しながら恐る恐る扉の方へ顔を向けて確認する。
「え?」
自身が見たものが信じられなかった。
そこに居たのは、行方不明だった私の友人である緋璃だった。
いや、正確に言えば緋璃にそっくりな少女だった。
そっくり。
つまりは、似てるが別人という意味。
しかし、それでもその少女の姿は友人の姿と似すぎているのだ。
私が、いきなりの衝撃的な展開に固まっていると少女の方も私が起きているのに気付いた。
「あ!瀬莉!よ、良かった。本当に良かった。目が覚めたんだね」
「まさか、緋璃?」
髪色も瞳の色も全く違う。
顔も緋璃と凄く似てるが目元や雰囲気が少し違う。
だが、初対面の筈の少女は私を見て瀬莉と私の名前をその口で確かに言った。
あり得ない筈なのに私は、もしかしてと思って少女を友人の名前で呼んだ。
「そうだよ。久しぶりだね瀬莉」
少女は、私の言葉に微笑んで頷いた。
同じだった。
緋璃と談笑している時に見た優しい微笑みと同じ。
私は、少女が本当に緋璃なのだと理解した。
「は、ハハハ……緋璃。やっと、やっと会えた」
「もう、泣かないでよ」
緋璃が、私の元まで歩いてくると私の目元を何処から出したのか分からないがハンカチらしき物で拭いてくれた。
どうやら、自分でも気付かない内に涙が出ていた様だ。
「すまないね。ありがとう」
「泣く程会えたのが嬉しいなんて。もしかしなくても、私の事大好きだな。このこの~」
「そうだねぇ。勿論大好きだよ」
気にかけてくれるしピンチな時に助けてくれた事がこれまで沢山ある。
そんな緋璃の事は、友達として大好きだ。
なので、否定する事なく答えたのだが。
「うぅ」
(お、照れたねぇ)
まさか、否定やふざけずに正直に好意を肯定されるとは思ってなかった様で頬を軽く赤らめて照れていた。
私は、そんな照れてる緋璃の表情に癒されながら起きた時から気になっていた事を緋璃に聞く。
「ところで緋璃。何故ここに居るんだい?それに、ここは何処なんだい?暗い地下室らしき場所に監禁されていてメイドの女性に回復薬を飲ませてもらったのを最後に記憶が無いんだ。何か知ってるかい?」
「ここ?ここは、男爵家の領主邸だよ。まぁ、今は元男爵家ってのが正しいだろうけど。それと、メイドの女性は私。瀬莉を助ける為に化けてたんだよ」
「は?」
何か、色々と思っていなかった答えが返ってきた。
ちょっと、私の頭の情報処理がおいつかない。
「元男爵家?化けてた?緋璃があのメイド?え??」
「落ち着いて、一つ一つ説明していくから」
緋璃は、軽く混乱する私にそう言うと事の経緯を話しだした。
「私が居る理由だけど、冒険者やってて活躍したら国王に目をつけられて呼び出されてクラスメイト達を鍛える事になったんだよね。それで、鍛えてたら瀬莉が行方不明になったと知らされて助けにきたって訳。国王と話して男爵が怪しいのは分かってたからね。真っ直ぐこの町に来たよ。で、町で買い出ししてたメイドを見付けて利用。情報を粗方聞き出して館に侵入。助け出したって訳」
「そうか。また、助けてくれたんだね。ありがとう」
「どういたしまして。大切な親友だもん。助けるのは当たり前だよ」
以前と同じ様に緋璃が、私を助けてくれた。
その事実に嬉しく思いながら私は、他に気になる事を緋璃に聞いた。
「あのメイドの姿には、どうやってなったんだい?見た目がまるで違っていたが」
「あれは、私のスキルを使ってだよ。こうやってね」
そう言った次の瞬間、緋璃の顔が映像がぼやける様に霞んで見えた。
しかし、直後そこには緋璃の顔とは別の顔があった。
あの時に見たメイドの女性の顔だ。
「え?何が」
意味が分からない。
スキルと言っていたが、一体どんなスキルを使用したと言うのだろうか。
困惑の目をして緋璃を見ると顔を元に戻して答えを教えてくれた。
「私の持つ偽装魔法ってスキルの効果だよ」
「偽装魔法?」
「そう、この魔法は、名前通り偽装を施す魔法。ステータスの数値やスキルの隠蔽や書き込み。身体の一部を見えなくするとか。この能力を応用して見た目を変えて潜入したんだ」
魅了で正面からは、失敗した時に瀬莉が殺される可能性があるのでリスクがデカ過ぎる。
かと言ってメイドを魅了して操り内部を探ってもらい情報を得るのも少々リスクと時間が掛かる。
なので、見た目ごとメイドに紛して侵入する事にした。
見た目は、買い出ししてたメイドを魅了して拉致って顔の細部まで再現させてもらった。
その際に、メイドには情報や館の内部構造、瀬莉の居る場所を吐かせた。
これらの事で少々時間を消費したが、結果として楽に侵入出来たので結果オーライである。
まぁ、本当ならもっと良い助ける方法があるのだろうが、私にはこの程度の方法しか思い付かなかった。
ちなみに、見た目を変える方法だが偽装魔法で他に何か出来ないかと暇な時に遊び半分に使ってたら出来た。
ん?拉致ったメイド?
天に永久旅行に行ったよ。
「あ、そうだ。話をしてて忘れる所だった瀬莉、これ飲んで」
緋璃が、またしても何処から出したのか分からないが回復薬を取り出した。
「ありがとう。有り難く頂くよ」
「うん。早く治って欲しいからね」
瓶の蓋を外すと飲みやすい様に口に近付けて飲ませてくれた。
確認した感じ地下室で飲ませてもらった回復薬と同じ物っぽい。
性能の良い品なので、これなら怪我も治るのが早くなるだろう。
「ふぅ、ありがとう。それで、元男爵家とはどういう意味なんだい?それに、ここは男爵家の一室なのだろう。あの糞共は何処に」
回復薬を飲み干した私は、緋璃に続けて気になっていた糞共の事を尋ねた。
「あぁ、あの生ゴミ共?消したよ」
緋璃は、私に答えてくれた。
目から若干光が消えた薄い微笑を浮かべながら。
「…………なるほどねぇ」
私は、その言葉と表情で全て察した。
冗談抜きに全員殺したのだろう。
本来なら、何故殺したのか。
殺す必要は無いのでは等と言うのが普通なのだろう。
だが、あいにくここは日本ではなく異世界。
法等あってない様なモノ。
それに、正直私も糞共を殺したと知って心底スカッとしている。
助けてくれた緋璃に感謝こそすれど非難する気は微塵も無い。
なので、私から緋璃に送る言葉は…………
「ありがとう」
感謝の言葉だけだ。
※※※※※
その後も緋璃から話を聞いて分かった事があった。
私は、どうやら緋璃が助けに来て糞共を殺した日から3日間眠っていたらしい。
しかも、機械が無いので正確ではないが触れた感じ恐らく38~39度位の熱を出したらしく目茶苦茶心配したそうだ。
なので、この3日間は領主の館の一室を使って看病してくれてたらしい。
「それで、それは一体?」
色々と話を聞かせてもらったが、私はそろそろ気になって仕方なかったソレについて質問した。
「ん???」
絶対に分かっているくせに惚けてきた。
日本での高校生活の時もそうだった。
緋璃は、かなりふざけるのが大好きな愉快犯な所がある。
私は、軽くため息を吐きながら指摘した。
「その服装だよ」
「え?変かな?」
「変ではないよ。寧ろ似合ってる方さ」
本当に似合ってるとも。
写真におさめて一枚欲しい位にはね。
「だけど、何でいまだにメイド服を着ているのさ」
何故か、緋璃は今もなおメイド服を着たままだったのだ。
「え?何となく気に入って」
「…………そうかい」
私は、ツッコミ担当ではないのでツッコミはせずに流す事にした。
そして、別で気になっていた事を聞こうと思った。
が、出来なかった。
『コンコン』
「どうぞ」
「失礼します。アカリ様、お食事をお持ちしました」
見知らぬ男が部屋に入ってきた事。
「ヒィッ!!」
そして、私の心が、身体がその男に対して酷く恐怖したからだ。
「ッ!?料理を置いて下がれ!」
「は、はい!」
緋璃の命令されて男は、部屋から出ていってくれた。
しかし、私の方は直ぐにおさまりそうになかった。
「大丈夫!?」
「ハァハァハァハァ……す、すま、ないねぇ。少し、待ってくれ」
それから数分して何とか私は落ち着く事が出来た。
「は、ハハハ。本当にすまない」
「こっちこそごめんね。…………トラウマ?」
「だろうねぇ」
監禁され暴力を振るわれ確かに私は、あの糞共に対して酷いトラウマを植え付けられた。
だが、まさか見知らぬ男を見ただけでこうなるとは思いもしなかった。
思った以上に私の心は深い傷を負っている様だ。
「すまない。こんな面倒事を抱えてしまって」
「瀬莉は悪くないよ。悪いのは、あの生ゴミ共なんだから。私もサポートする。ゆっくり治していけば良いよ」
本当に優しい友人だ。
緋璃なら本当に治るまでサポートしてくれるだろう。
その言葉に甘えさせてもらうとしよう。
「ありがとう。その時は頼むよ。それより、全員殺したんじゃなかったんだね」
さっきの男。
見覚えは無いが、きっとこの館で働いていた使用人の一人だと思う。
てっきり、使用人含めて全て殺したのかと思ってたが違ったのだろうか。
そう思い尋ねると緋璃は私の質問に答えてくれた。
「私も全員殺したのかと思ってたけど部屋で寝てたり厨房で作業してたメイドや料理人が数人居たみたい。領主邸の外で領主一家と使用人殺した後で気付いたんだよね。殺っても良かったけど、瀬莉の怪我の治療や看病で領主邸使いたかったから生かして利用する事にしてたんだ」
なるほど理解した。
生かしておいた理由もそれなら納得だ。
「アイツらは、私の命令に従うから大丈夫。心配はせずにゆっくり休んで怪我を治してね」
「あぁ、すまないねぇ。それじゃあ、申し訳ないがゆっくりさせてもらう『クゥ~~~』がその前に食事をお願いしても良いかな?」
「フフフ、うん。ちょっと待っててね」
それから、しばらくして緋璃はお粥に似た食べ物を持って部屋に帰ってきて私に食べさせてくれた。
正直、少々気恥ずかしかったが両手がまだ上手く動かせないのだから素直に諦めて食べさせてもらった。
そして、満腹になり身体もいまだ万全でない私は直ぐに眠くなりベッドで眠りにつくのだった。
~~~~~~~~~~~~
※本編とは無関係です。
おはようございます、こんにちは、こんばんは、作者です。
駄目ですね、作品の構成は頭にあるのに全然文章が打ち込めなくてこんな短い文字数の文章しか投稿出来ませんでした。
スランプって面倒くさいですね。
多分しばらくの間は、週2投稿が週1投稿になるかもです。
ご容赦下さい。
まぁ、そんな事は置いといて
※アカリの秘密その5
実は、ある程度の料理は作れる。
以上
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