第86話 Aランク昇格試験(3)
「勝者、ジェシカ!」
審判が、勝者の名前を叫ぶ。
それを耳にしながら、ギルドマスターのダイアンは設けられている椅子に座りながら黙ってステージを眺めていると隣から声を掛けられた。
「勝者は、ジェシカさんでしたね」
「そうだな」
声を掛けてきたのは、同じ様に隣の椅子に座る自身の部下の一人。
チラッと横目に見た所、手元の紙に何かを書いている。
確か、コイツに今回任せた仕事は試験に参加した各冒険者達への評価。
優勝した冒険者以外で有望そうならAランクへと昇格させる為の参考にする為に頼んでいた。
恐らく、紙に書いているのは今試合していた冒険者二人の詳細だろう。
「それにしても、ジェシカさんは良く勝てましたね」
「弓矢と大盾だからな」
弓矢とメイス+大盾を使う二人の試合。
相性を考えると矢を簡単に防がれる大盾に弓矢で相手するのは分が悪い。
しかし、その不利な相手にジェシカは勝ってみせたのだ。
「近接も視野に入れてたからこそだな。弓矢で中、遠距離で狙撃する事で防御に専念させ大盾で視界が遮られてる隙に素早さを生かして接近し短剣で攻撃。結果、脇腹を軽く斬った程度だが矢に塗ってた毒を短剣にも仕込んでいた事で戦闘続行不能にする。良い立ち回りだった」
後方支援が主な弓矢使いでありながら、これだけの戦闘を披露してみせる。
「ジェシカさんの評価は、今の所かなり高いです。このまま、次の試合も勝ち進めば優勝せずともAランクに昇格させても問題はないかもしれません」
彼の言う通りギルド側として、彼女の評価はかなり高い。
彼女は、次の試合が準決勝。
その試合にも勝てば、残りは決勝を残すのみ。
仮に決勝まで進み負けてしまったとしても決勝まで勝ち進んだ事。
これまでの、試合で見せた戦闘技術を含めて彼の言う通りAランクへと昇格させても良いかもしれない。
しかし、それはあくまでも決勝まで進めたらの話。
「ジェシカが、あのアカリに勝って決勝に進めたらだがな」
ジェシカが、Aランクになる為の最低条件が同じく準決勝へと勝ちを進めた少女。
何か、色んな意味で目立ってるアカリという名の少女に勝つ必要がある。
「あのギルマス。そのアカリって誰なんですか?」
「何だお前気付いてないのか?ついこの前の王命で名前を聞いただろ。それに、最近話題になってる噂でも」
俺がここまで話してようやく、目の前の疑問符を浮かべている部下はアカリの正体に気付いた様だ。
「え!?彼女ってもしかして最近話題の例のアカリって少女本人何ですか!確かに噂通りフードを被ってますし、そのせいで噂の女神って称されてる顔が上手く見えなくて分からないですけど。でも噂だと新人のDランクなんですよね?別人では?あ、もしかして嘘ついて私を騙そうとしてます?」
「俺が、こんなつまらん嘘付くと思うか?」
「はい。たまに変な嘘付きますし」
コイツ。
減給してやろうか。
いや、今はそれは置いとこう。
俺は、目の前の部下の減給については後に回す事に。
「ゴホン。嘘じゃない。本当だ」
「え?本当に?嘘じゃなくて?」
「嘘じゃないって言ってるだろ」
「本当に?だとしたら何で彼女は昇格試験を」
嘘ではないとやっと信じた。
そして、コイツの言いたい事は理解出来る。
噂が本当ならDランク。
それが事実なら、昇格試験を受けているのはおかしいのだから。
「噂のカラクの防衛戦の頃はDランク。その後、防衛戦の活躍を認められてBランクへ。その後、例のアルタナでダンジョンを完全攻略。お前は知らなかっただろうが、つい先日にアカリに謁見で会ったらしい陛下が諸々の活躍を認めて今回の昇格試験に推薦してきたんだよ」
「は?」
分かる。
分かるぞ、お前の気持ち。
俺も、防衛戦の噂を耳にした時でさえ全く信じきれなかったのに先日陛下からの使いが来て諸々の説明、指示を聞いた時は同じ反応をしたものだ。
「ギルマス、ジェシカさん、勝てますかね?」
「まぁ、余程の奇跡でも起きないと無理だろうな」
何せ相手は、魔物の軍勢や吸血鬼と単身でやり合える上に、かつてAランクハンターが完全攻略して以来攻略者ゼロのダンジョンを単身で完全攻略。
実力だけで言えば、既にAランクと同等。
いや、下手すればSランクにも匹敵する実力者なのだ。
しかも、聞いた話だと彼女は魔法使いらしい。
つまり近接系の職業ではないのだ。
現在彼女は、二戦とも素手と武器を使って近接戦で勝利している。
つまる所、一切の本気を出していない。
そんな存在相手にAランクになる為の試験を受けるジェシカが勝てる訳がない。
「ジェシカさん。……ドンマイです」
「本当にな」
俺達二人は、二回戦目の第三試合を眺めながらお互いそう言葉をこぼすのだった。
※※※※※
ステージ上で、短剣使いと魔法使いの男性二人が戦闘を繰り広げている。
それを、ステージ外の一角からクラスメイト達は眺めていた。
「天之様は、どちらの方が勝つと思いますか?良ければ、そう思った理由も一緒に教えて下さい」
今回のクラスメイトの戦闘組一同を引率する役目をおっている男性の騎士が、戦闘を眺めている天之へとそう問いかけた。
「どっちが…………魔法使いですかね?魔法なら遠距離から攻撃出来ますし。実際、それで初戦も勝ってますから」
騎士の問いかけに己の予想を答えていく。
それを聞き終えた騎士は、一つ頷くと己の予想を口にした。
「私は、短剣使いだと思います」
「それは、何故ですか?」
騎士の短剣使いが勝つという予想。
それとは逆を予想した天之は、何故なのか騎士へと質問すると騎士は、その理由について答え始めた。
「理由としては、魔法使いの方ですかね。魔法使いは遠距離が基本です。一部魔法使いなのに近距離が得意な例外者も居ますが基本遠距離戦が主です」
騎士は、そう話すとチラッとフェリエさんと仲良さそうに並んで談笑しながらステージを見ているアカリさんを見たかと思うと直ぐに顔を俺達の方へと戻して話を続ける。
「魔法使いの彼は遠距離からの魔法しか出来ないのか常に間合いを取ろうとしてます。ほら、今も」
騎士がそう言って示したステージでは、魔法使いの男性が放った風魔法で強い突風が発生して短剣使いの男性が近付こうとしてたが強風で後退した。
更に、そこに幾つもの風の塊を放って攻撃兼牽制をして間合いを離そうとしている。
が、短剣使いの男性はスピードを生かして周囲を旋回する様に走りながら魔法を回避して間合いを詰めようとしていた。
「あの様に、一時的に距離は取れても直ぐに詰められる。攻撃をしても魔法使いの彼の視線や挙動で狙いが読めてるのでしょう。簡単に回避されてます。初戦は、動きの遅い戦鎚使いでしたので勝てたみたいですが、今回は動きの速い短剣使い。直に隙を付かれて負けると思いますよ。お、ほら。説明をしてたら丁度良く」
「本当だ。短剣使いの男性が勝った」
ステージでは、騎士の説明通り短剣使いのスピードに対応が間に合わず背後を取られた魔法使いが降参していた。
「もし彼が、弓矢使いのジェシカ様の様に近接も視野に入れてたら別の結果もありえたでしょうね。皆様も、遠距離、近距離の苦手な方もある程度戦闘出来る様にすると良いかもしれませんね」
・
・
・
・
・
みたいな事話してたら面倒だなぁ。
私は、引率の騎士が戦闘組の皆へ何か話し掛けてるのを横目に眺めながらそう内心思っていた。
そう思っている理由は、今の皆にはまだ必要ないから。
考えてみて欲しいが、戦闘ド素人の一般人に二、三ヶ月稽古をつけたとしよう。
多少は、技術が身に付いただろうが技術を完璧にマスターした訳ではない。
まだまだ戦闘素人なのに変わりはない。
そんな奴に教えていた事と別の事を覚えさせようとする。
半端者に別の事を教えてた所で更に中途半端になるに決まっている。
別の事を教えるなら、今習っている事をある程度極めてから。
私や皆がやるのは命の奪い合いなのだ。
今は、得意なモノの技術を磨く。
そして、魔物を倒してレベルを上げ強くなる事が大事。
別の事を覚えるのはその後からが良い。
だから、あまり訓練に支障が出そうな事を吹き込まれると面倒なのだ。
まぁ、仮にそうだったとしても後で私が言っとけば良いや。
それよりも。
ステージを見る。
そこには、大剣を野球バットの様に振り抜いた体勢のスカル。
そして、スカルの向かいには腕を押さえて苦悶の表情を浮かべている拳闘士の男性の姿。
「アカリ様、あの方」
「うん。何かあったみたいだね」
拳闘士の男性は、先程スカルにまるで野球のフルスイングかの様な大剣の一撃を腕の籠手ごしとは言え受け止めた。
その際余程の衝撃だったのか受け止めた籠手にヒビが走っているのが遠目からだが見える。
そして、その受け止めた腕を拳闘士のガイだったか?が今は苦悶の表情で押さえていた。
ただの衝撃での一時的な麻痺か。
はたまた、衝撃が強くて腕の骨をヒビか骨折でもしたか。
いずれにしろ、何かしら腕に異変が起きているのは確かだろう。
近接の者にとって腕は大事な武器。
それを、片方使えないのは致命的だ。
どの様な判断をするのか拳闘士のガイを見ているとガイが無事な方の腕を軽く挙げて首を横に振った。
「降参する。腕が上手く動かない。こんなんじゃ、試合等勝てそうもない」
降参。
ガイは、試合を諦めた様だ。
「降参か。ハッ!まぁ、俺様相手に片腕でかかってこないのは懸命な判断だな」
コイツに同意するのは癪だが、片腕でコイツを相手するのは彼には少し酷だろう。
彼は、普通に強い。
だが、それと同じくこのスカルという男もかなりの強さなのだ。
無理して続行していたら更に重傷を負っていた可能性もある。
諦めたのは、懸命な判断だったろう。
「ガイの試合棄権により勝者、スカル!」
審判が、スカルの勝利を宣言。
それを受けて、ガイとスカルの二人がステージを降りるのと入れ代わる様にギルマスのオッサンがステージに上がった。
「冒険者の皆お疲れ様だ。これからまた休憩を挟む。時間も先の休憩と同じ程度取る。試合再開まで自由に休憩してくれ。以上だ」
そう告げるとオッサンは、再び会場から出ていった。
仮にもギルマス。
こんな時でも、仕事が山積みで忙しいのだろう。
社畜乙である。
それはそれとして、オッサンの言葉を皮切りに各自回復魔法使いに怪我をした者達は治してもらいに。
その他は、談笑や会場外へと出ていったりした。
「私達はどうします?」
「そうだね」
フェリの問い掛けにどうするのか考えるが何も思い付かない。
なので、先の休憩と同じ様にする事にした。
「さっきと同じで鍛練にしよっか」
「え?またですか?」
「うん。だけど、今度はフェリもね?」
「へ?」
そうして、今度はアカリだけではなくフェリも共に鍛練する事になるのだった。
※※※※※
並列思考で魔力制御と感知系統のスキルを同時に発動。
更に、フェリの魔力制御の様子を随時観察し気になった部分を指摘しながら鍛練をする事しばし。
気付けば、休憩は終わっておりギルマスのオッサンが会場に戻ってきていた。
「試験を再開します。アカリとジェシカ。二名はステージに上がって下さい」
ステージに上がった審判によって呼び出さる。
「それじゃあ、行ってくるね」
「今度も勝って下さいね!」
フェリの応援を背にステージを上がると同じ様に向かいにステージを上がってきたジェシカの姿が見えた。
「お二方、準備はよろしいですか?」
「大丈夫です」
「問題ないわ」
私とジェシカ二人の返答を聞いた審判は、一つ頷くと片手を挙げ。
「試合……始め!」
腕を振り下ろし試合開始を告げた。
同時、ジェシカは即後方へと下がり距離を取る。
そして、腕を後ろへと回すと背中の筒から素早く矢を二本取ると弓につがえ。
即矢を放ってきた。
高速で迫り来る矢。
矢の迫る動き的に狙いは両肩だろうか。
私は、それを…………
「よっ」
軽く横にズレて回避。
しかし、それは向こうも読んでいたのだろう。
視界に六本もの矢を既につがえ放っているジェシカの姿が見えた。
再び迫る六つの矢。
狙いは……太もも、胴体、腕辺り!
狙いを瞬時に把握。
「ほっ!」
私はそれを、某電脳世界の弾丸避けさながらに身体を限界まで後ろに反らして回避。
全て自身を通過したのを見ると同時に足の力だけでバク転して体勢を元に戻した。
「あなたなら、その程度避けると思っていたわ。これで終わりよ!」
かと思えば、バク転で体勢が少し悪い所を今度は七本もの矢を私に向けて放っているのが見えた
これで、放ってきた矢は計十五本。
私は、そんなに良く筒に入るなぁと思いながら全身。
特に目に魔力を集中して込めて身体強化を施す。
「よ、ほっ、そい!」
そんな言葉を呟きながら迫る矢を再び某電脳世界の弾丸避けみたいに高速で身体を捻ったり身体を反らして矢を五本回避。
足元も矢で二本狙われたので、同時に空中スピンして跳んで回避した。
「嘘でしょ。クソッ!」
こんな方法で回避されると思わなかったのか一瞬驚愕を浮かべるも直ぐ様再び矢をつがえて放とうとする。
「そろそろ私の番ね?」
「え?」
しかし、私は放たれる前に間合いを詰めて矢を掴む事で阻止。
掴んだ矢を握りへし折り使えなくすると右掌をジェシカの腹部に添えた。
「エアブラスト」
「キャア!!?」
強力な突風をゼロ距離で放つ。
そんなモノをモロに受けたジェシカは、踏ん張れる訳もなく抵抗出来ずにステージ外まで吹き飛んでいった。
私は、吹き飛んでいったジェシカの横に軽くジャンプしてステージを跳び降りると起き上がろうとしているジェシカの首元に左手の手刀を突き付ける。
「まだ続ける?」
「うッ!!」
ニコリと微笑みながら。
しかし、負けを認めろと首に突き付けていた手刀を押し当て段々と力を加えていく。
「どうする?」
「~~~~ッまだよ!シッ!」
しかし、ジェシカは諦める事なく懐から短剣を取り出すと斬り掛かってきた。
「おっと」
瞬時に耳障りと部分強化を発動して右手の甲で受け流す様に弾く。
すると、何故か短剣を握っていたのとは逆の手を私に向けて振り抜いてきた。
私は、左腕でジェシカの腕を払いのける。
すると、何故か服ごしに腕をナニかが軽く掠めて斬られた。
「油断したわね!これで逆転よ!」
私は、何がと思いジェシカの手を良く見ると彼女の手に腕を掠めたモノの正体が握られていた。
それは、物凄く小さなナイフだった。
大きさで言えば、7、8センチ位の果物ナイフ程度の大きさ。
ジェシカの口振りからしてこのナイフにも矢と同じく即効性の麻痺毒が塗られているのだろう。
故に、斬られた私は直に麻痺毒に侵され身体が動かなくなる。
等とジェシカは思ったみたいだが。
「……え?何で……何で効いてないのよ!」
「即効性の麻痺毒程度が私に効くとでも?」
ヒドラの猛毒みたいな即死クラスの致死性の毒ならともかく現在の状態異常耐性がLv8の私に今更即効性の麻痺毒程度効く訳がない。
「それで、まだやるの?」
「……き、棄権するわ」
太刀打ち出来ない。
斬られたのに、強力な麻痺毒を受けている筈なのに。
それでもなお、微笑み余裕の表情を浮かべているアカリに自身との実力の違いを理解したジェシカは、抵抗を諦め棄権を選択した。
「ジェシカの試合棄権により勝者、アカリ!」
審判の勝者宣言。
これで、私の決勝進出が決定した。
「負けたわ。決勝頑張ってね」
「うん。ありがとね」
負けて悔しいだろうに私にそう言ってくれたジェシカに対して私は、先程とは違う純粋な微笑みを浮かべて返す。
フードを被ってるから顔は上手く見えてないかもしれないが。
「あら、可愛い笑顔も出来るのね。だけど、笑顔の時位はちゃんと顔が見える様にフードを取ったらどうなの」
「あ」
気付けば、私が目深に被ってたフードを摘まみながらヒョイっと上げられ素顔がジェシカの前に晒された。
「」
「」
「」
「」
謎の沈黙。
私は、沈黙に耐えられず声を掛けようとしたその時、先にジェシカが声を発した。
「あなた、名前やらフードでもしかしてって思ってたけど本物の『白銀の戦姫』だったのね。噂通りの綺麗な顔ね」
「あ、え、えっと。ありがとございます?……わぷっ!?」
どう反応すれば良いのか分からず、とりあえず「ありがとうございます」と返すと摘み上げられていたフードを今度はガバッと被せられた。
「フフフ、ありがとございますって。面白い子ね。それじゃあね」
「あ、はい」
私の返しが面白かったのかジェシカは、軽く笑ってそう言うと踵を返して歩いて行った。
私もとりあえず、一言返事を返していそいそとズレたフードを直すとフェリの元に戻った。
「ただいま~」
「お帰りなさいアカリ様。凄かったですよ!」
「そう?ありがとね」
そう言ってフェリの隣に座るとステージ上の審判の声が聞こえてきた。
「ヒースとスカル。二名はステージに上がって下さい」
ヒースは、魔法使いの男性に勝った短剣使いの男性の名前だ。
そのヒースとスカルの二人が、審判に呼ばれステージの上に上がっていく。
「アカリ様。どちらが勝ちますかね?」
「まぁ、スカルだろうね」
フェリの問い掛けに私は、当然の様にそう答えた。
前述通りスカルは、かなり強い。
図体の割に反射神経、動体視力が良いのか小回りが効く。
そして、図体から分かる様に怪力で身の丈程の大剣を普通の剣と変わらない速度で振り回す。
短剣使いのヒースには悪いが、普通に考えてスカルが圧勝するだろう。
「始め!」
そんな思考をしてる間に気付けば、試合が開始。
審判の合図と同時にヒースが動き出す。
スカルを中心として高速でステージを駆け抜けるヒース。
それに対して、スカルは微動だにせずただステージ上を突っ立ってるだけ。
「ッ!!」
そんなスカルに対して、ヒースは背後に回った直後懐から幾つかの金属の棒らしき物を取り出すとスカルに向けて投擲した。
死角からの高速の投擲。
警戒していない、構えてもいない、見えていない。
普通に考えれば当たるとしか思えないタイミングでの奇襲。
「馬鹿が。当たるかよ」
「な!?」
しかし、スカルは軽く横にズレて金属の棒。
多分前世で漫画で見た棒形の手裏剣みたいな物だろう。
それを、簡単に避けた。
「おせえよ」
「は?があ"!!」
そして、次の瞬間には回避された事に驚愕して一瞬動きが鈍ったヒースとの間合いを詰めて蹴り跳ばしていた。
吹き飛びステージ上を何度も転がるヒース。
かなりキツい一撃だったのか中々起き上がれずに苦しんでいる。
しかし、ヒースは次の瞬間には起き上がっていた。
「ぐぅ"、あ"が!!?」
「いつまでも寝てんじゃねえよ」
スカルに頭を鷲掴みにされ無理やり立たされる事によって。
「おらよっと!!」
そして、次の瞬間スカルがヒースの頭をおもむろに離すと再びヒースの腹部を思いっきり蹴り飛ばした。
「があ"ッ"!!」
先程以上の強さで蹴り飛ばされゴロゴロとステージ上を転がるヒース。
その回転が止まっても余程蹴りのダメージが大きかったのだろう。
腹を押さえ吐瀉物と胃液を撒き散らしろくに立ち上がる事が出来ない有り様となっていた。
慌てて審判がヒースに駆け寄り様子を確認しているが、どう見ても試合を続行出来る様には見えない。
「試合続行不可能。よって勝者、スカル!」
案の定、意識はあるものの審判による試合続行不可能の判断。
よって、この瞬間決勝への進出はスカルに決定した。
「当然の結果だな。こんな雑魚が俺と同じ土俵に立つのが間違いなんだよ」
そんな、聞いててちょっとイラッとする事を話すスカルの側に近付く一人の男がいた。
「口を慎めスカル。試合は終わった。一度短時間だが休憩を挟む。ステージから降りろ」
そう言ったのは、ステージに上がってきたギルマスのオッサン。
オッサンは、スカルに注意をするとステージから降りる様にと指示を出した。
だが、どう見ても粗暴なスカルが指示を聞くはずがない。
「あ"ぁ"!俺はまだまだやれんだよ!さっさと決勝を始めろや!!」
案の定、スカルが言う事を聞く訳もなく直ぐ様決勝を始めろと喚きだした。
「駄目に決まっているだろ。そもそも、貴様が良くても相手の彼女が了承しないと無「別に良いですよ?」理だ……ッうお!?」
突然後ろから聞こえてきた声にギルマスのオッサンは酷く驚いて後ろを高速で振り返る。
そこに居たのは、フードを被った小柄な少女。
ようするに、私だ。
「今何と言った?」
「だから、別に良いですよ。そう言ったんです」
正直私は全然疲れていない。
なので、試合が始めれるのなら始めてしまっても全く問題ない。
その様な理由で、別に良いと答えた。
「だが、しかし」
「ソイツが良いつってんだ。問題ねえだろ!オラ審判!さっさと、試合開始の合図をしろ!!」
「クソ!あぁ、もう!分かった!審判、始めてくれ!」
オッサンは、結局スカルの説得を諦めると決勝戦の開始を認め審判にそう言ってステージから降りていった。
「えっと。お、お二方、準備はよろしいですか?」
「さっさとしろ!」
「大丈夫です」
当初の予定とは違う進行に困惑するもキチンと仕事をこなす審判に私とスカルは、そう言葉を返す。
私とスカルの返答を聞いた審判は、一つ頷くと腕を挙げ……
「それでは、試合開始!」
開始の言葉と共に腕を下ろした。
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