第49話 真夜中の激戦終結
※遅れてごめんなさい。
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街の中の様子を確認する為に、城壁前から離れた私だが、現在何をしているのかと言うと建物の屋根の上を爆走していた。
え??
このアホは街が危険な時に何ふざけてんだよだって?
失敬な。
私だってふざける時は、時と場合と相手を少しは考えてふざけるわ!!
まぁ、おふざけはこの辺で置いといて。
私が、屋根の上を爆走しているのは遊んでいるからではなくてちゃんとした理由がある。
その理由は……
「何で、こんなにバラけてんだよ!!ふざけんなよクソ魔物共がぁ!!!」
この通りである。
ん??
これだけでは、わからないって?
そうなると、説明する為には20分程前に遡る必要がある。
まず20分前の私は、街へと戻ると索敵スキルを発動させた。
すると、返ってきた反応はそこそこ多かった。
その上、面倒な事に魔物は街の四方八方へと散り散りに散開している様に動いていて何処から手をつければ良いのか迷ってしまった。
只でさえ私は、この街の事は全くわからないと言うのに魔物共は街中をバラけて暴れている。
その事に、自分も同じ魔物だと言うのに魔物共に対する悪態を叫びながら道がわからないので致し方無く屋根上を爆走して近くの反応のある場所をしらみ潰しにまわっていたのだ。
ただ、幸いと言って良いのかわからないが冒険者や兵士の人達も街へと侵入した魔物の討伐に回っていたので個人で街全てをまわらずにすんだ。
「反応的に……あそこか」
そして、次に私が向かっている場所は…………
「まさかと思ったら、マジで冒険者ギルドじゃんか」
避難場所の1つである冒険者ギルドだった。
「だとすると、急がないとちょっとマズいな」
私は、そう言うと足のギアを1つ上げてスピードを速める。
私が急ぐ理由。
単純に避難場所の1つだからというのもあるが、理由は他にもある。
それは、索敵でギルドに魔物が十数体位集まって居るとわかっているのだが集まって居る魔物が索敵の反応的に何体か進化個体っぽく感じるのだ。
強い個体だから、強引に突破してきたのかな?
それにしても、避難場所だから冒険者や兵士が防衛部隊として居る筈なのに倒せてない感じからしてもしかして手こずってる?
アカリが、索敵の反応から予想を立てていると冒険者ギルドの様子が見えてきた。
見えた。
あれは……うっわぁ。
目にしたものは、酷かった。
魔物が現れた事に半狂乱になり悲鳴をあげる多くの住民とそんな住民を宥め避難させようとしているギルド職員。
住民やギルド職員を守る為に囮になりながら戦っている冒険者。
そして、そんな冒険者に襲い掛かっているゴブリンキングにオークジェネラル、オーガ、スケルトンナイトにそれぞれの進化前の個体。
予想通り手こずってるというか劣勢状態になってる。
進化個体も紛れて暴れてるせいで上手く立ち回れない感じか。
このままだと、住民に被害が出るかも。
アカリは、爆走の勢いそのままに跳躍した。
なら、まず狙うなら進化個体から!
そして、落下する勢いそのまま一番近くの進化個体であるオークジェネラルに狙いを定め……
「シャオラアアァァーー!!!」
空中前方宙返りからの全力の踵落としを叩き込んだ。
「」
ドシンッ!!
「嘘!?」
以前の戦闘から踵落とし程度ではオークジェネラルを怯ませる事しか出来ないとアカリは予想していた。
しかし、その予想は良い意味で外れアカリの一撃は、オークジェネラルの頭蓋を砕き脳をグチャグチャに潰し即死させた。
マジか、不意打ちとはいえ一撃でか。
進化して強くなってる実感は、確かにあったけど。
実際は、私が思ってた以上に強くなってたんだね。
マジで進化って凄いや。
ん?
アカリは、自身の成長が思ったよりも凄かった事に驚いていると目の前でこちらを呆然とした顔で見ている女性に気付いた。
「えっと、大丈夫ですか?……っと、すみません。先に、周りを片付けなくちゃだから、貴方も気を付けて下さいね」
私は、女性にそう言うと収納から武器を取り出し側の敵に向けて振り抜いた。
※※※※※
自分が見たモノが信じられなかった。
私は、避難場所である冒険者ギルドを守る為に街に侵入しギルドを襲ってきた魔物を防衛部隊に指示を出しながら何とか凌いでいた。
主力となるC、Bランクや遠距離の弓使い、魔法使いは全て前線に出ておりDランクしかここには居ないとはいえ襲ってくる魔物は少数な為、問題は無さそうに感じていた。
その為、少し前に防衛部隊の冒険者を何チームか侵入した魔物を討伐する為に増援に出てもらった。
しかし、それが裏目に出てしまいギルドの守りが薄くなり今こうして危機的状況に陥ってしまっていた。
やらかした!
まさか、進化個体が同時に現れる何て予想しなかった。
私は、自身の判断ミスに酷く後悔した。
もっと、慎重に考えて増援の数を抑えていればこんなピンチになる事はなかった。
しかし、後悔した所で事態が好転する事はない。
こうなってしまったからには、私達で目の前の魔物を倒すしかなかった。
しかし、そう上手くいくはずもなく私達は劣勢に追い込まれていった。
どうすれば良い。
どうすれば、この状況を打破出来る。
誰かに隙を見て助けを呼んで貰う?
いえ、たとえ上手く助けを呼びに行けたとしても助けが来るまで守りきれるのかわからない。
それに、たとえ助けが間に合ったとしても……
「危ない!!後ろ!!」
こんな危機的状況下で、余計な事を考えていたのがいけなかった。
周りの警戒を僅かに怠ったその隙に、私の直ぐ後ろにオークジェネラルが立っており後ろを振り向いた時には、岩の棍棒が振り下ろされるのが見えた。
あ、間に合わない。
ごめんなさい皆。
私、先に死んじゃった。
振り下ろされる棍棒を見て避けるのが間に合わないと悟った私は、心の中で住民、ギルド職員、冒険者達に先に死ぬのを謝りながら目を閉じようとした。
その時…………
「シャオラアアァァーー!!!」
「え」
上空から雄叫びが聞こえたかと思った次の瞬間、私が潰されるのではなく、オークジェネラルの頭がドグシャッ!!!と生々しい音をたてて潰れていた。
それを見て、私は自身の真横すれすれを通った棍棒に反応する事なく頭の中を疑問が埋め尽くした。
え?何で?
何で、私生きてるの。
何で、ジェネラルの頭が潰されてるの。
何で、さっきまで居なかった女の子が私の目の前に居るの。
「嘘!?」
女の子は、何故か自身が倒したジェネラルが倒れたのを見るとまるで、倒したのが信じられないみたいな表情を浮かべて驚いていた。
何が、嘘なの?
私の方が嘘って言いたいよ。
そんな事を思っていると目の前の女の子が、私が自分の事を見ているのに気付いたのか声を掛けてきた。
「えっと、大丈夫ですか?……っと、すみません。先に、周りを片付けなくちゃだから、貴方も気を付けて下さいね」
「え、あ、ちょっ!」
慌てて声を掛けるが、女の子は私の声に反応せずに何処から出したのか自身の身の丈近くありそうな大剣を取り出すと側に近付いて来ていたオークを一太刀で斬り倒した。
「凄い」
私が、その一太刀でオークを倒した事に驚いている間に女の子は、続け様にオーク、スケルトン、ゴブリン等の進化前個体をものの数十秒で倒した。
この女の子、いったい何者なの?
「これで、最後!!」
「ガ……ア"…ァ"ァ」
そして、気付けばスケルトンナイト、オーガ、ゴブリンキングまで倒しておりたった数分足らずで女の子は1人でほぼ全ての魔物を倒したのだった。
※※※※※
「これで、最後!!」
私は、ゴブリンキングが反応する前に一足飛びで眼前まで飛び大剣で眉間を貫いた。
「ガ……ア"…ァ"ァ」
眉間への攻撃がトドメとなりゴブリンキングは倒れ伏した。
良し。
全部倒せたね。
それにしても、試しに使ってみたけど大剣は使い勝手はそこそこ良いかも。
まぁ、ちょっと重いのは難点だけど。
アカリは、大剣の使い心地をそう評価した。
しかし、実際の所は身の丈近い大剣を軽々と持って走りゴブリン、オーク、スケルトンを一太刀で両断していた。
そして、進化個体であるスケルトンナイトを大剣をハンマーの様に使い横殴りのフルスイングで粉砕し、オーガの頭を縦に両断、ゴブリンキングの眉間を一撃で貫いて殺したのだ。
他者から見れば、そこそこ等ではなく十分に使いこなしていると評価されるだろう。
まぁ、せっかくだし今後も使ってみようかなぁ。
「少し良いかな」
「ん?どうかしましたか?」
横から声が聞こえそちらを向くと、先程の女性と冒険者達が側に寄って来ていた。
「貴方のおかげで、住民、ギルド職員、冒険者全員の命が助かったわ。代表してお礼を言わせて欲しいの。本当に助かったわ。ありがとう」
「俺もだ。ありがとう」
「本当にありがとう」
「私も、ありがとう」
冒険者達は、その後も口々に感謝の言葉を私に述べてきた。
私は、それを聞いて本当に危ない状況だったのだと思い助けが間に合って良かったと思った。
「助けられた様で私も良かったです」
「えぇ、本当に危ない所だったもの。所で1つ聞いても良いかしら?」
「何ですか?」
特に、何も問題無いので了承する。
「貴方何者なの?突然現れたかと思えばオークジェネラルを倒してるしその後も、ほぼ1人で魔物を倒してしまうなんて」
女性の質問は、私が何者なのかと言う至極当然と言えるものだった。
そりゃあ、いきなり現れた謎の少女が自分達が苦戦してた魔物を倒したら気になるに決まっている。
「別に、ただのDランク冒険者ですよ」
「嘘よ。Dランクが、進化個体含めたあの数を1人で倒しきれる筈が無いわ」
正直に答えたが、信じきれないのか女性は私の答えを否定し後ろに居る他の冒険者達も同じ様に頷いている。
う~~ん。
どうしたもんか。
あ、ギルドカード見せれば良いか。
ん?……あ。
「ほら、これ見れば本当だってわかりますよ」
「名前は、アカリ。ランクは、D。まさか、本当にDランクなんて。え、魔法使い?え?だけど、大剣を。え?」
女性や冒険者達は、私のギルドカードを見て驚き更に、魔法使いだと知ると??を浮かべて固まった。
「私こう見えて魔法使いですよ?ね、2人共?」
私は、そう言うと後ろに居るある2人に同意を求めた。
「え?」
「俺達?」
その2人は、何で自分達が声を掛けられたのかわからない様で頭に?を浮かべる。
「酷いなお前達。たった、1日でボスの顔を忘れたのか?」
「え?も、も、もしかして、ボ、ボス!?」
「は!?ボス何ですか!?嘘、ボスこんな美少女だったんですか!!?え?あのフード付きのコートは、どうしたんですか」
そう、2人とは護衛を共にしていたあの2人。
「戦闘で汚れた上に破れたんだよ。思い出してくれて良かったよ。ダイソン、エム」
「バーソンです」
「サムです。名前間違ってます。ボス」
やべ、間違えた。
「あ、ごめん。2人からも、私がDランクの魔法使いって言ってくれる?」
「YES、ボス。ボスは、確かにDランクの魔法使いで間違いないぞ」
「はい、ボス。あぁ、ボスが魔法使ってるのをこの目で見たから間違いない」
「ほ、本当なんだ」
「マジかよ」
「す、凄い」
2人が証言してくれたおかげで、女性と冒険者達が驚きながらも本当だと信じてくれた。
「あ、所でボス」
「ん?」
「俺も、1つ聞きたい事があるんですが」
「あ、そうそう。聞きたい事があったんですよ」
「何??」
2人に話を促すと話し始めた。
「ギルドで作戦会議をしてた時に、駆け付けてきた城門の門番からフード付きのコートを着た少女が1人で魔物の軍勢から城門を守ってるって報告があったんですよ」
「それって、ボスの事ですよね?」
「あ、うん。放送聞いて駆け付けたのに誰も居なくてさぁ。待てば良かったかもしれないけど、あのままだと、確実に城門破壊されてたから1人で突っ込んだんだよねぇ。死ぬかと思ったよ」
「「「「「「っ!?」」」」」」
2人の質問に答えた瞬間、聞いていた女性と冒険者達が驚愕の表情を浮かべて私の事を見てきた。
「あ、貴方が、アカリさんが、報告にあった少女だったの?」
「ですね」
「別の報告で、吸血鬼が前線に現れたって。フードを被ってる誰かが相手をしているってあったんだけど」
「それも、私ですよ。ザクト、吸血鬼は何とか撃退したので前線は後は、軍勢の残りの魔物だけですよ」
既に、多くの者達に見られているので変に誤魔化す事はせずに正直に肯定した。
「そ、そうですか」
「あ、出来たら何ですけど前線に増援を回してあげれませんか?何とか持ち直したとは言え、厳しそうで」
「回したいのは山々何ですけど、見ての通り厳しくて」
確かに、人数が14、15人位しか居ないし先の戦闘で全員体力も消耗していて前線に向かわせるのはとてもじゃないが無理そうだ。
「わかりました。無理なら仕方無いです」
「すみません」
「私は、他の場所を回ってくるのでそろそろ行きますね」
「はい。気を付けて下さい」
「そちらも、お気を付けて」
女性と冒険者達と別れた後、私は街に侵入した他の魔物を倒す為に次の反応がある場所を目指して再び屋根上を爆走した。
※※※※※
次は、この辺りに……ってあ。
あの後、再びしらみ潰しに街を爆走していた私は次の反応があった場所に向かっていると着いたと同時に反応が消失した。
丁度倒されたか。
ん?
今のって。
私は、仕方ないかと次の近くの反応に向かおうと思ったその時、視界の端にマルクスさんが見えた気がしてもう一度そちらを向く。
あ、やっぱりマルクスさんだ。
見えたのがマルクスさんであっていたのを確認すると屋根上から飛び降りてマルクスさんの元に走る。
「マルクスさん」
「ん?な!?アカリ君!?」
マルクスさんは、まさか私がここに居ると思わなかったのか物凄く驚いた表情と声を出した。
「ザ、ザクトは、どうしたんだ。アカリ君が、相手をしていたんじゃ」
「ザクトなら腕を斬り飛ばしてトドメ刺そうとしたら魔王が乱入してきて退場しましたよ」
「すまない。今何て言っただろうか」
マルクスさんは、私の言葉が信じきれないのか眉間を押さえながら聞き返してきた。
なので、わかりやすい様に言い直す。
「撃退に成功しました」
「…………マジか」
「マジです」
「すまない。少し待ってくれ」
マルクスさんは、そう言うと連れていた部下と数分程話すとこちらに戻ってきた。
「とりあえず、無事で良かったよ。それと、ザクトに関しては本当にありがとう」
「別に気にしなくて良いですよ。死ぬ気で戦闘してたら何とかなったって感じなんで。所で、前線に増援回せませんか?人数的に多分厳しいと思うので」
私は、マルクスさんにも増援を頼めないかと聞いてみる。
「了解した。おそらく、侵入した魔物もある程度片付いたと思われる。私達は、他の者達に声を掛けてから向かう。アカリ君も、出来れば前線を手伝ってもらえるか」
「了解です。それじゃあ、私は先に向かってますね」
マルクスさん達と別れ私は、前線に戻る為に城門に向けて屋根上を爆走した。
「戻ってきたね」
城門に着いた私は、1度戦況を確認しようと城壁上に上り戦場を見渡す。
こちらに被害は、そこまで出てなさそうだね。
魔物の数もあの時に比べて減ってるし順調と言えるかな。
軽く見渡したアカリは、そう判断すると気持ちを切り替える。
「良し。行くか」
そうして、前線に戻った私は再び魔法と剣で魔物を殲滅していった。
そして、私が前線に戻ってからしばらく経った後、マルクスさん率いる援軍が到着し魔物を倒す速度は格段に早くなり朝日が昇る頃には、全ての魔物を倒し終え私達は無事カラクの街を守り抜けたのだった。
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