第26話 調査報告

 グズダスは、森の中を走りながら笑うのを何とか堪えようとするがあの忌々しい女がこれで死ぬ事、女の最後の表情が傑作で笑いを堪えるのに苦労していた。


 あの、痛み悔しさ恐怖を滲ませた顔が傑作過ぎて思い出すだけで今にも吹き出して大笑いしてしまいそうで我慢できねぇ。


「クッ、ククッ!!フフッ~~!!!だ、駄目だ。我慢しねえと」


 グズダスが何とか笑うのを我慢しようとしたその時


『嫌あァァァァァァァァ!!!!!』


 先程自分が囮として刺した女の恐怖に染まった悲鳴が聞こえグズダスは、我慢の限界に達した。


「ククッ!!!フッフフ!!!…アヒャヒャヒャ!!!!ギャハハハハハ!!!あ~~死んだ死んだ!!最ッ高!!に愉快な気分だぜ!!」


 本当なら殺すんだったら俺が直接この手でなぶり殺してやりたい所だったが。

 状況が状況だからまぁ、仕方ない。


「しかし、勿体無かったなぁ」


 あの糞女は、顔と身体は好みのタイプだったから今回の事が無ければ復讐も兼ねて隙を見て拐った後、飽きるまで犯して闇市で売るつもりだったんだが。

 あんだけ、見た目が良いならそこそこ良い値がしただろうに。


「色々と準備してたってのに無駄になったな。まぁ、殺せてスカッとしたんだし良しとするか」


 とりあえず、サイクロプスと遭遇する前にザックとイリアの野郎共を探して合流するか。

 また、遭遇したら逃げれる気がしねえし囮は多い方が良いだろ。

 しかし、まぁ今回の調査は本当に面倒だ。


 元々、普段の俺なら今回の調査は参加しなかった。

 だが、あの糞女に大衆の前で負けた事でその後、何時もなら言う事を聞いてた連中が女に負ける様な弱い奴の命令に従うかと調子に乗る様になった上にギルドに次問題を起こせばランク降格処分にすると言われた為に従うしかなかった。

 だが、これを上手く利用して素直に従えば俺はギルドに改心したと思わせられ謎の大型魔物を討伐すれば調子に乗ってた連中も俺の実力を再認識してまた言う事を聞くと考えた。

 そう考え調査に参加したがそのメンバーの中に俺が今こんな見下される様な目にあう原因を作り出した糞女が調査に参加すると聞き酷く殺意が沸いた。

 しかし、どうにか我慢し糞女と再会しても改心した様に振る舞い調査に出た。

 まぁ、結局サイクロプスなんて化け物に遭遇して糞女が背中を晒したから囮にして殺す事にしたんだがな。

 ギルドに戻って説明する時は、俺は止めたが糞女が勝手に突っ込んで自滅したとでも適当に言えば良い。

 そうすれば、ギルドや他の冒険者の連中も糞女は調子に乗って自分の実力を過大評価してた馬鹿な女と思うだろ。


 さてと、確かアイツらは、この方面に逃げてたはずだが何処に居るのやら。


 ※※※※※


 2人を探し始めてから数十分経ち周りの気配を探りながら目を凝らして探していると離れた場所から聞き覚えのある声が聞こえてきた。


「やっと見付けたぞ」


 俺は、声のする方向へ向かい走る。

 すると、段々と聞こえてくる声が鮮明になり探していたメンバーの姿が見えてきた。


「早く街に戻ってギルドに報告しないと!」

「ええ!サイクロプスなんかが街に来たらとんでもない被害がでるわ!それにしても、今回の調査の大型の魔物ってジェネラルだったの?それとも、サイクロプスだったの?」

「知らねえよ。ただ、報告にはサイズのばらつきが幾つかあった。結局はどちらも正体だったんだろ」


 見付けた。あいつらだ。

 何か、調査の事について話をしてるがそれは、どうでもいいな。

 とりあえず、合流しよう。


「おい!待ってくれ」


 俺が、声を掛けると2人とも酷く驚きながらこちらに振り向く。


「グズダス!無事だったのか!ん?」

「え!グズダス!あれ?アカリちゃんは?」


 2人は、俺が1人なのに気付き糞女が居ない事に疑問を浮かべている。

 とりあえず、死んだ事を伝えるか。


「アイツは、死んだ」

「は?おい、冗談はよせ」

「そうよ!アカリちゃんが死ぬなんて質の悪い冗談はやめて!」


 俺の言葉に2人は、そう言ってくる。

 だが、死んだのは間違いないだろうしギルドで説明する時コイツらの言葉もあれば信じられ易いだろうから上手く騙すとしよう。


「本当だ!あの後、逃げてたらアイツ「このままじゃ逃げられない!」とか言って急にサイクロプスに突っ込んで行ったんだよ!俺は、無茶だと思ったから何度も止めろと叫んだが止められなくて。それで、その後直ぐにアイツの悲鳴が聞こえて。きっと、もうアイツは」

「…………そうか、アカリの野郎。俺は、生き延びろって言ったんだぞ!……チクショウ」

「嘘……嘘よ!アカリちゃん、アカリちゃん、ああぁぁぁぁ!!!」


 ザックは、顔を俯かせ悔しそうにし、イリアは、悲しみに耐えきれず膝から崩れ落ち泣き出してしまった。


 あったばかりの奴の事を随分と悲しむなコイツら。

 まぁ、殺したのはサイクロプスだがその原因は目の前の俺何だがな。

 これなら、ギルドでも上手く話が信じられそうだ。


 その後、2人は何とか落ち着きを取り戻し3人で話し合い調査は、これで止めて街へと戻る事にした。


 ※※※※※


 あれから、俺達は何度か魔物と戦闘したりしながら森で野宿し次の日の夕方に街へと戻ってきた。


「ギルマスを呼んでくれ!!今すぐにだ!!」

「ザックさん!?調査からもどられたんですね!!待って下さい。今すぐ呼んできます」


 調査に出てたはずの俺達がいきなり只事じゃない雰囲気で現れたものだから受付嬢のカリナ?だったかは大慌てでギルマスを呼びに行き数分してギルマスと共に戻ってきた。


「お前達戻ったか……?只事じゃなさそうだな。ひとまず、別室へ行こう。カリナも同席してくれ」


 俺達は別室へと案内されギルマス、カリナ、俺達の5人で調査について話していく。


「ザック早速何があったのか話してくれるか?」

「はい。まず、初日に報告のあった方角の森に入ったのですが森の浅い辺りまで多くの魔物が縄張りを移動させていました。次の日、森の奥手前辺りでオークジェネラルとオーク2体に遭遇し戦闘して何とか勝てました」

「何!?ジェネラルが居たのか!!だが、その様子だとそれだけではなかったのだな?」


 ギルマスは、ザックの言葉に驚いたが俺達の雰囲気から察したのか直ぐ様真面目な顔に戻った。


「はい。問題は、ジェネラルを倒したその後、俺達の前にサイクロプスが現れたんです」

「何だと!?それは、本当なのか!!」

「間違いないかと。黄土色の巨体に1つ目、裂けた口等間違いなくサイクロプスの特徴でした」

「間違いない。すぐ討伐隊を領軍と組んで向かわなければ。カリナ領主様に連絡して領軍の手配を頼んでくれ。それと、D、C、Bランクの手の空いてる冒険者を調べておいてくれ」

「はい!!」


 ザックの口から話されたサイクロプスの出現にギルマスは、慌ただしくカリナさんに指示を出していく。


「悪い。それで、その後は」

「逃走を図りました。ですが、直ぐに追いかけられ直後に別れて逃げたのですが……」


 ザックが、こちらを見てきたので言葉を引き継ぐ。

 さて、上手く騙せるとよいのだが。


「別れた先でアカリが逃げきれないと判断してサイクロプスに1人で戦闘を仕掛けたんです。止めようと思い何度も叫んだのですが間に合わずその直ぐ後、背後からアカリの悲鳴が聞こえて。恐らくアカリは、死んでしまったかと思われます」

「ふぅ~~………………本当何だな」


 流石のギルマスも、アカリが死んだのは予想外だったのか一度深く息を吐き落ち着き再度確認してくる。


「遺体は確認出来てませんがアカリは、ジェネラルとの戦闘で攻撃を喰らい怪我をしていました。それを考えると」

「そうか、わかった。報告は十分だ今日は休め。お前達にもサイクロプス討伐に参加して貰う。明日再びギルドに来てくれ」

「了解しました」


 そうして、俺達は部屋を後した。


「アカリお前は、本当に死んだのか?」


 1人部屋に残ったギルマスが呟いた言葉に返ってくる言葉は何も無かった。


 ※※※※※


「ククク!!!完全に信じてやがった。これで、後は調子に乗った雑魚共が身の程を弁えれば元に戻る。これも、サイクロプス討伐に適当に参加して戻ってくれば直ぐに済むだろ」


 あと少しで元に戻る。

 雑魚共が俺の言う事を何でも聞く俺の世界が。


 グズダスは、自分が絶対である生活を想像しニヤニヤと笑いながら拠点である家へと帰るのだった。


 ※※※※※


「う……うぅ…ここ、何処?」

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