第17話 吸血鬼さん新しい友達が出来る

「ふぁ~~ムニャムニャ…良く寝た」


 転生5日目の朝、アカリは窓から射し込む朝日を浴びながら爽やかな気分で目を覚ました。


 まぁ、吸血鬼が朝日を浴びて爽やかとかどうなんだと思う所だが。


「顔洗って来よっと」


 確か昨日入った浴場の着替えスペースに洗面台があったのでそこを借りようと思い私は、部屋を出て1階へと降りて行く。

 すると、1階に昨日宿泊の対応をしてくれた女の子が居たので挨拶する。


「おはようございます。……え~と」


 あれ?そう言えば、この子の名前何だっけ?

 そもそも名前を聞いて無い様な?

 てか、そもそも私もこの子もお互い自己紹介自体してない様な。


 名前がわからず困ってるとその子が私の挨拶で此方に気付き挨拶を返してくれる。


「あ!おはようございます。それと、まだ自己紹介してませんでしたね。私はフィールって言います。気軽にフィーって呼んで下さいね!それと、この宿屋を経営してる父と母の娘です」


 女の子もといフィールさんも私同様に挨拶してて自己紹介をしてなかった事を思い出した様で自己紹介してくれた。


 そんな、自己紹介してくれたフィールさんだが、肩甲骨辺りまで伸ばされてる少し赤みがかった明るい茶髪に大きくくりっとした綺麗な緑色の瞳をしてて目鼻立ちも整ってて可愛いと思える見た目をしてる。


 まさに、宿屋の人気な美少女看板娘って感じだね。

 って!いけない自己紹介してくれたんだから私も自己紹介しなきゃ。


「私はアカリって言います。よろしくお願いしますねフィールさん」

「ム~~」

「え?フィ……フィールさん?」


 何故か私が自己紹介仕返したらフィールさんが頬を膨らませてむくれてしまった。


 え?何か私気に障る様な事言ったかな?

 だけど、普通に自己紹介しただけだし。

 それにしても、不謹慎だけど美少女が頬を膨らませてるのって物凄く可愛いね。


 私が、内心そんな馬鹿な事を考えてたその時、フィールさんが話し出した。


「フィーって気軽に呼んでって言いましたよね」

「え?」

「私もアカリさんも見た感じ同い年位なんですからフィーって呼んで下さいよ」

「だけどフィールさ「フィーです」

「でも、私の事さん付「私は、従業員ですから仕方ないんです」……」

「いや、でも合ったばか「フィーって呼んで下さい!!」……はい…フィー」


 反論しようにも言いきる前にフィールさんにより全てぶった切られ私は素直にフィーと呼ぶ事にした。


「でも、何でそんなにフィーって呼ばせたがるんです?」


 呼ぶのは別に正直構わないがせめて理由は聞こうと思い聞いてみる。

 すると、少し言い淀みながらも話してくれた。


「じ……実は…ですね、私小さい頃から宿の手伝いしててだから、同い年の子とあまり遊んだり出来なくて仲の良い友達が居ないんです。だから、同い年の子にあだ名で呼ばれるのに何と言うか憧れがあって」


 つまるところボッチだったが故に友達が居なくて同い年ぽい私に対して少々?暴走したと。


 と言うか、え?フィーまさかボッチだったの!?

 嘘でしょ!?と、とりあえず、確認してみよう。


「要するに友達が欲しい。だけど、居ないからせめてあだ名で呼んで欲しい的な?」

「うぅ~~的なです」

「Oh…………マジだったよ」


 フィーは、恥ずかしそうに私の言葉を肯定した。


「ハァ~~フィー」

「は、はい」

「はい」

「?」


 フィーは私がつき出した手を頭に?を浮かべながら見つめる。


「これから友達として宜しくって意味の握手。フィーは私が友達なのは嫌?」

「!!い、嫌じゃないです!!こちらこそ宜しくお願いします」

「ハハハ……これから友達なのにそんな畏まらなくていいよ」

「うぅぅ~~~」


 その後、恥ずかしさと嬉しさに顔を赤くしていたフィーだったがしばらくして立ち直り私は、元々の目的であった洗面台の利用の許可をフィーに確認し了承をもらったので顔を洗う事が出来た。

 その際に、フィーが朝食の事を聞いてきたのでお願いして部屋へと運んで貰い朝食を食べた。

 因みに、朝食はパンと焼きベーコンモドキ、野菜スープのザ洋食といった内容で全部美味しかったです。


 ※※※※※


「それでは、行ってらっしゃい」

「うん、行ってくるね~~」


 朝食後、私は昨日同様ギルドに向かうべく宿屋を出た。

 因みに、何で行ってらっしゃいと言われてるのかと言うと追加で1週間宿泊する事にしたからだ。

 宿泊費が銀貨1枚を越えるが幸い手持ちはまだ多少余裕があるので問題ない。

 それに、無くなりそうになれば依頼を受ければ良い。


「意外ともう開いてる店が多いね。ギルドに行く前にちょっと寄って行こうかな?アレあるかな?」


 アカリは、急ぎの用も無いから良いかなと寄り道しながらギルドへと向かう事にするのだった。


「う~~ん……流石にそんな都合良く見つかる訳ないか。気になってたんだけどなぁ」


 あれから、ギルドまでの道すがら目に付く冒険者が使いそうな店屋を覗いたが目的のモノは残念ながらどこにも無くギルドに到着した。


「あ、結構空いてる」


 ギルド内は冒険者が依頼で出ていった後なのかガランとしており今までのガヤガヤ具合が嘘の様に静かだった。


「まぁ、騒がしいよりは良いか。寧ろ個人的には都合が良いしラッキーかな?え~~と、カリナさんはどこかな~~居た」


 昨日聞きたかった事を聞こうと思いギルドホール内を見渡すと窓口に座るカリナさんを見つける。


「カリナさ~ん」

「うん?あ、おはようございます。アカリさん」

「おはようございます」

「どうされました?依頼の受注でしょうか?」

「いえ、実はカリナさんに聞きたい事がありまして。今大丈夫ですか?」

「大丈夫ですよ。特に急ぎの仕事もありませんし今は他の冒険者も依頼でほとんど居ませんので」


 カリナさんは、そう言うと私と共にホール内のテーブル席へと場所を移して向い合わせで席に座った。


「それで、聞きたい事って何ですか?」

「昨日資料室で調べ物したんですけどわからない所があって。あの……オーレストってどの国にある街なんですか?」

「…………え?」


 うん。

 多分こうなると思ってたよ。

 誰が聞かれると思うよここ何処の国の街なんですかってさ。

 だけど、私的にも流石にここが何処の国なのかは知っておかないと今後の冒険者生活に支障が出るから知っておきたい。

 もし、森以外の遠い場所での依頼を受けたりしてよし行こうとなっても現在地自体知らなければ行き先を調べ様がないのだから。


「本当に知らないんですか?」

「訳アリの身でしてここが何処なのか知らずにオーレストまで来たので」


 嘘ではない。

 転生したからこの世界の事はまだ、ほとんど知らない。


「そ、そうですか。因みに訳を聞けたりは」

「ちょっと……遠慮したいですね」

「わかりました。えっと、どの国かでしたね。因みに地図で具体的な国の配置は見られました?」

「あ、それは見ました」

「それなら、説明もしやすいですね。それでは、説明しますね」


 カリナさんは、私に分かりやすくオーレストの位置を教えてくれた。

 オーレストはアストレア王国と呼ばれる国にある街だそうだ。

 それで、オーレストの街のある位置だが隣国のスレイブ帝国との国境近くにあるみたいで王都自体からは離れた場所にある。

 それでも、隣国等から国を守る防衛の要でもある為とても重要視されてるのだそう。


「こんな所でしょうか。他にも帝国以外に隣国はありますがオーレストからは離れた場所ですので関係はありませんし」

「いえ、お陰でわかりました」


 本当、お陰でようやく街の具体的な場所を知れた。


「他にも、聞きたい事はありますか?」

「あと1つ聞きたい事が……あの、"スキルオーブ"ってどこで売ってたりするんですか?」


 スキルオーブ……私が昨日資料室で知った興味深い魔法アイテムの名前。

 何でも、スキルオーブはスキルの力が宿った宝珠だそうで使用すればオーブに宿るスキルを取得する事が出来るのだそうだ。

 つまり、武器系のスキルオーブを使えば武器系のスキルを使える様になり、魔法系のスキルオーブを使えば魔法が使える様になる。

 そんな、ヤバい位のバグアイテムなのだ。


 私が、ギルドに来る前に店屋を覗いてたのもこのスキルオーブが置いてないかなぁと思って寄り道してたのだが流石に置いてる筈もなく何処にもなかった。


 ワンチャンそこまで珍しくはないスキルのスキルオーブならもしくはって思ったんだけどそんな都合良く置いてる訳ないよねぇ。

 資料を読んだ感じスキルオーブ自体が貴重な魔法アイテムみたいだし。


「スキルオーブですか。そうですね。まず確実に言えるのは普通の店では売っていませんね」

「ですよね~~」

「良くて街で一番大きな商人が運良く手に入れてる事もありますがその後に貴族に売ってる事が大抵です。と言うよりもほとんどのスキルオーブは貴族、王族が手にするのがほとんどです」

「そうなんですか?」

「はい、スキルオーブは誰でもスキルが手に入る魔法アイテムです。仮に雑用系のスキルでも使用人に使えば良いですし強力なスキルや珍しいスキルなら自身が使うもしくは鑑賞用にでもして自慢する感じですね。なので、スキルオーブは発見された場合どんなスキルでも高値で取引されるので使わず売られる事が多いんです」

「見つけた本人は使わないんですかね」


 もし、強力なスキルなら誰だって自分が使おうと思う様な気がするんだけど。

 そうでもないのだろうか?


「使う人も勿論居ますよ。ですが、大抵の人は買い取り額の高さに売る事が多いですし、そもそも強力なスキルのスキルオーブ自体が滅多に出ないですからね」

「なるほど」


 それもそうか。

 そんな簡単に強力なスキルを宿すスキルオーブが出るなら勇者召喚なんて馬鹿な真似せずに自分達で解決してる筈だよね。


「それにしても、どうしてスキルオーブについて聞かれたんですか?」

「昨日資料室で知って気になったんですよ」


 だってスキルが手に入るアイテムだよ!?

 オタクとしては、超気になるアイテムだから是非とも一目見てみたいのが道理と言うものだ。

 それに、もし光属性、闇属性魔法のスキルオーブが存在するなら目標のフルコンプに近づけるしね。


「それと、知ってるかもしれませんがスキルオーブは、大体がダンジョンで発見されますよ」


 そう、この世界にはダンジョンがある。

 資料を読んでわかったダンジョンの内容としては、ゲームや漫画であるようにダンジョンコアを核としたダンジョンがこの世界の様々な場所に存在してそのダンジョン内に魔物やトラップが存在している。

 そして、 時々そのダンジョン内でアイテムが見つかる事があるのだ。

 それは、普通の剣や防具、魔道具珍しい物で魔剣だったりそして、今話してたスキルオーブ等。


「スキルオーブも実物見たいけどダンジョンにも行って見たいなぁ」

「ダンジョンは、ある程度活躍して力量を認められたDランクから入るのを認められるのですが、アカリさんはDランクですが登録して一度しか依頼を受けてないのでまだ無理ですね。なので、頑張って依頼を沢山受けていきましょう!!つきましては、まずこれらなんてどうでしょう」

「うぇ~~~」


 アカリは、カリナさんに見せられた依頼を見て顔をしかめながら呻いた。

 何故なら、それはどう見てもめんどくさいゴブリン、角兎、コボルトの群れの討伐と言う群れシリーズの依頼だったからだ。

 正直、ウルフの群れとの戦闘で群れ系の依頼はしばらく遠慮したい。


 けど


 うぅぅ~~~!!!

 し、仕方ない。これも、ダンジョン及び実物のスキルオーブを見るため。


「わ、わかりました。受けます」

「はい!では受注してきますので待ってて下さい」


 オタクとしての好奇心を満たす為に渋々受けるのだった。


「ハァ~~頑張るか」


 まぁ、どのみち昨日調べた魔力制御や身体強化の練習の為に外には行くつもりだったしいっか。


 ※※※※※


 あの後、私は依頼を受けて外に出た。

 因みに受けた依頼はあの時出された3つ全て。


 えぇ、何故か全て私が受ける事になってましたよ。


「クソ~~カリナさんめ!!確かに受けるとは言ったけど3つも受けるなんて言ってないんですけど~~~!!」


 幸いなのは、これら全てを今日中に達成しないといけない訳ではない事。


「ハァ~~本当はどれか1つだけ受けて練習の合間合間に倒すつもりだったのに。……まぁ、いっか。別に急ぎじゃないし気ままにやってこ」


 さしあたって今日は、魔力制御と身体強化の練習でいっか。


「明日から半日を魔力制御と身体強化の練習で残りを依頼で良いかな?」


 そうして、アカリは魔力制御と身体強化の練習を始めるのだった。

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