愛について書いてみる
昔、『愛』って言葉に異常反応していました。フギャァァって。
J-POPとかの歌詞で必ず愛が入ってて、歌うのがしんどかった。照れくさい、って言うのもあったと思うのですけど、恐怖もあったんだと思います。
多分、親からは言われたことが基本なくて、かつ、ドラマとかで教師や親が「愛してるからお前のために怒ってるんだ」みたいに怒鳴っていたから、なのかなあ。
愛してたら怒鳴っていい、それを受け入れなければならない、愛してもらっているんだからノーと言っちゃダメ、みたいな感じが、多分恐ろしくて堪らなかったんだと思う。
そもそも愛ってなんぞや、好きじゃダメなんか、とか。具体的でもなく、親子愛も恋愛も師弟愛も友愛も含まれているのが、幼心にますます混乱しちゃったのでしょう。
で、カクヨムで貰ったレビューで初めて「愛」って書かれた時、
「あー、他所の人からしたらこれが愛なんだ」
っていう納得と、
「あー、愛って表現されてしまった」
っていう気持ちが半分。
それでも読んでくれた人がそう思えたらそれでいいか、と思っているうちに、そこまで抵抗感も無くなってきたのであります。
全然それでも構わなくなって来た自分が、今になって思うのは、従妹のあとその母(叔母)の関係。
うちの叔母はすんごくヤバい人でして、のあが我が家に逃げてきたことは、ちょいちょいエッセイやコメントで残していたと思います。
叔母がのあを愛していなかったかと言えば、それは違うでしょう。ただ、のあにとっては要らなかった。
叔母は感情を理性持って伝える技術がなかったし、何よりも叔母にとって全てが敵だった。都合の悪いことは全部人のせい。毎日コロコロ、どんな人でも、「殺したいほど憎い」と「この世で一番愛している」に変わる。それは娘でも夫でも親でも姉でも他人でも森羅万象でも変わらない。そういう人です。
ぶっちゃけ思うのです。愛って、=信頼ではない、と。
信頼は変わらないからこそ信頼ですが、信頼なき愛はそうでもないのです。
そしてのあにとって欲しかったのは、「信頼」でした。
今でものあは、人を信頼することが出来ません。多くの人と繋がっていても、「私には友達がいない」が口癖です。だってどれだけ好きであっても、次の日には「殺したいほど憎い」と言われているかもしれませんから。
で、それを育ててしまった祖母というのも、叔母を愛していなかったわけではありませんが、叔母を否定し続けました。この人もなんと言うか、「自分は悪くない、悪いのは人」なので。
で、これでなんとか生き抜いたのが母です。祖母のやり方も母にとっては歪むほどではなかったのかもしれないし、ただ単に母が自分を教育できただけかもしれない。多分後者。
母は知的障害者の支援の番組を見て、度々言います。
「もう少し〇〇(叔母の名前)のことをわかっていれば、今ほどにはならなかったかもしれないのに……」
母は、叔母が持っているのは後天的に病んだ精神病だけではなく、何らかの知的障害もあったのでは、と思うそうです(人の表情がわからない、表情で表現出来ない、等)。
真相が何にせよ、祖母に足りなかったのは愛ではなく、叔母に合わせる技術だった。
愛は万能薬ではない。
母は今、それをよく噛み締めるようです。
しかし、もう遅い。叔母は祖母を信頼しませんし、祖母は己を省みる人ではありません。
そんな想いをつらつらを考えて出来たのが、
『きつねにつままれた13年でした。』
https://kakuyomu.jp/works/16816927859137625684
と、
「食堂から愛を込めない 佐藤花子の話」
https://kakuyomu.jp/works/16816700429210899166/episodes/16816927859154474292
でした。
前者は「信頼ある愛」であり、後者は「愛なき信頼」です。
子供は、親を愛して生きるのではなく、親を信頼して生きます。その筆頭が、「この人はちゃんとご飯を食べさせてくれる」という信頼です。
どんなに手作りでご飯を作ってくれると言っても、気まぐれに、たまにしかご飯をあげなかったり、異物や毒を入れていたら、子供は全く信頼しません。親どころか、人そのものを信頼しなくなります。それはとても、恐ろしいことです。
信頼がないということは、後ろ盾がないということ、社会的繋がりがないことです。その弱みは、「この子を簡単に支配できる」と考える悪意を、簡単に招いてしまいます。
守ってくれるはずの社会から落とされ、被害者として押し付けられ、ついには叔母のように加害者になるのです。
そうならないためには、どうすればいいのか。親ではない人に愛されるか、ふさわしい報酬で必ず助けてくれる人と繋がりを持つか、二択となるでしょう。
前者になるのは難しい。でも後者なら、どうでしょう。なれるかもしれません。
そうやって私の頭の中で現れたのが、食堂のおばちゃんでした。
長くなりましたが、2作ともに読んでくださりありがとうございます。
今年も残り少なくなってきました。長い付き合いのある方も、カクヨムコンで知り合った方も、どちらにも大きな感謝と信頼と愛を。
来年も、よろしくお願いします!
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