第7話 ノンノ・レム・ルムレム3世
一方、こちらは夢の世界。
ノンノ・レム・ルムレム3世は
いつものように身支度をしようと鏡を見る。
悲鳴がなりひびく。
「ご主人様、いかがされました?」
従者のカミュがあわててやって来て
心配そうに顔をのぞききこむ。
「私の美しい顔が……」
レムが押さえている手をのけると、
ほっぺたがふくらんでいる。
「ははぁ、虫歯ですよ。
だから甘い夢ばかり食べると
良くないと申し上げたのに」
カミュが指でふくらんでいる部分を触る。
「ぐぬう!痛いぞ!何をする?」
涙声でレムは後ろにのけぞった。
「相当悪くなってますね。
歯医者に行かれた方が良いのでは?」
レムはとんでもないと
言うように首をふった。
「バカなことを言うな。
歯医者だと?
わざわざ痛くしに行くこともあるまい」
カミュは、きりっと眉毛をつりあげる。
「歯医者の治療は確かに痛いです。
ですが、その痛みに耐えて治療しなければ
さらに悪くなりますぞ。」
レムは聞こえないふりをして身支度を始める。
「ご主人様!
私はご主人様が心配で
申し上げているですよ。
好き嫌いをして
あの娘の夢ばかり召し上がるからです。
他のバク達を見習ってださいまし。」
「あの味音痴どものどこを見習えと?
虫歯など、心配ご無用。」
そういうとさっさと馬車に乗り込む。
この時は、カミュの心配が的中するとは思ってもいなかった。
馬車が猛スピードで駆け抜けていく。
馬車にはエンブレムが描かれていた。
バクがむかいあう絵だった。
バクはそれぞれ手にステッキを持っていて、
交差させていた。
夢の世界の町人たちが振り返る。
「あのエンブレムは……!」
「怪盗ルムレム3世よ!」
「夢を盗みに行くのかしら」
「きゃあ!伯爵様!」
黄色い歓声が飛び交う。
馬車からぬっと手が伸びる。
手には、白手袋。
そして、金のステッキが握られていた。
手の後から上半身がずずいっと出てきた。
マントがはためく。
もう片方の手で
しっかりとシルクハットをおさえていた。
白ずくめ。
純白のタキシード。
人々を見渡す。
片眼鏡が、お日様の光を反射して光る。
「ご婦人方!
我が名はノンノ・レム・ルムレム3世。
怪盗などではありません。
美食家ですぞ。お忘れなきよう。」
町人たちは白ずくめの姿を見ると、
ため息まじりに
へなへなと地べたに座り込んだ。
小さくなっていく馬車を見つめる。
「はぁ、なんてすてきなの」
「私も伯爵様に夢を盗まれたいわ。
私の夢をささげたい」
「だめだめ。
今、伯爵様は現実世界の女の子の夢に
夢中らしいわよ」
馬を操っている従者が振り向いて叫ぶ。
「ご主人様、まもなくつきますよ」
レムと名乗ったバクが
馬車の中に身をひっこめる。
「アリス嬢、今参りますよ」
レムは静かにほほえむ。
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