レッスン24「水 (3/6)」
「わたくし、貴方に興味がございますのよ、クリス君」
巨乳美人エルフのAランク冒険者でお姫様のノティア様が、僕に迫ってくる。
「ぼ、僕に!?」
「そう――キミの
「あ、あぁ……それは」
僕はちらりと、隣のお師匠様を見る。
「僕の――僕だけの力じゃあない、です。お師匠様の支援魔法があったから、お師匠様がいて下さったから、できたことです……すべて」
「それも、存じておりますわ。何でもそこの
ノティア様がお師匠様を見て、くすりと笑う。
「ですが、【
「いや、でも……【
「すべて得意魔法ですわ」
「――――……」
「お前さん……ノティア
お師匠様が珍しく、不機嫌そうに尋ねた。
「聞いたまんまですわ。――ねぇクリス君、キミ、この
――お師匠様が攻撃魔法を使えないって、どこで聞いたんだ!?
…………いや、考えても見れば、一緒に狩りをしたエンゾたちはお師匠様が攻撃魔法を一切使わなかったのを見ていたし、このごろは西の森で戦闘訓練をしていたのに、お師匠様はただの一度も攻撃魔法を使わなかった。
森では他の冒険者たちも活動していて、みな他の冒険者のことをよく見ているものなんだ。
「ふんっ、
「あら、それは
ノティア様がずずいと胸を強調しながら迫ってくる。
「え、あ、ちょっ……」
思わず椅子を引きながらお師匠様の方を見るも、お師匠様は居心地悪そうに腕組をしてそっぽを向いている。
……駄目か。
胸を強調するお師匠様が見れるかと期待したのだけれど、そういう
「その…………すみません!」
僕はノティア様へ頭を下げる。深々と、テーブルにこすりつけるようにして。
「申し訳ございませんが、ノティア殿下とパーティーを組むことはできません。お師匠様は……アリス師匠は、僕の命の恩人で、人生の恩人なんです。だから、お師匠様から『お前はもう要らない』って言われるまでは、僕はずっとずぅっとお師匠様について行くつもりなんです……だから、……申し訳ございません」
「………………………………」
ノティア様は無言だ。
恐る恐る顔を上げると、ノティア様は残念そうな、それでいて吹っ切れたような表情をしていた。
「仕方ありませんわね。
言って立ち上がる。
そこから、ふと思いついたように僕の顔をのぞき込んで来て、
「――あ、パーティーメンバーがダメなら、伴侶としてならどうです?」
「ぶっふぉっ!!」
飲みかけていた水を、正面にいたお師匠様の顔に思いっ切りぶちまけた。
■ ◆ ■ ◆
……怒られた。それはもう。
その代わりに、【
お師匠様曰く、これも『マスター』とやらが使う【
ますます、お師匠様の『マスター』が誰なのか気になる……。
「そ、それで……午後からは何の依頼を受けますか、お師匠様?」
お師匠様が掲示板の依頼書を眺めながら、
「ゴブリンの次と言えば定番のオーク、いや一足飛びにオーガなんてどうだい?」
「こ、これ! これにしましょうよ!」
僕は適当な肉体労働任務の依頼書をお師匠様に見せる。
オークとかオーガなんて、今度こそ死んでしまう!
「ん~なになに? 水汲み……供給先は西の森に急に発生した謎の街道……依頼主は商人ギルドの若手有志!?」
お師匠様が急に目を輝かせて、
「
「へ? どういうことです?」
「ほら先日、西の森で思いっきり木を伐採して西の王国に続く道を作っただろう?」
「あぁ、そう言えば」
あの時に作った大量の薪は、ギルドではとても引き取り切れないと言われ、僕の【
「それが?」
「急に出来た交易路を、商人たちが捨て置くと思うかい? この街の商人ギルドが、行商に必須の水を売りつけようとしているってわけさ」
「水? 水なんてマジックバッグにあらかじめ大量に入れておけば、わざわざ買わなくっても」
「バカだねぇお前さん、大容量のマジックバッグがタダ同然の値段で手に入るのなんて、世界広しと言えどもここ、魔王国くらいなものさね」
「えっとつまり――…商人っていうのは、西の科学王国の!?」
「そりゃ、休戦から100年も経っているんだ。交易くらいあるだろうさ」
「言われて見れば……」
この街でも、取っ手を回したら音楽が流れる機械とか、雷魔法を流し込んだら明かりがつくランプとか、これまた雷魔法を流し込んだら壁に映像が流れる謎の機械とか……というよく分からないものが、たまに骨董品店に出回っている。
「よし、じゃあ訓練がてら北の山で大量に水を汲んで、そいつを【
「はい!」
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いつもご愛顧ありがとうございます!
本作は完結まで毎日投稿致しますので、何卒、最後までお付き合い下さいませ。m(_ _)m
次回、クリス、美女エルフに猛烈アタックされる。
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