第32話
「ひ、博人! 大変だぞ~!」
曲を作っていると、いつの間にか帰ってきていた父親がそう言って叫んでいた。
そんなに大声を出されるようなことをした記憶はないのだけれど……。
「どうしたんだよ父さん、そんなに慌てて……」
「博人すごいじゃないか! とりあえず、これを見てくれ!」
そう言って父親は今日投稿した動画を見せてきた。
たしか、うちの父親って個人情報とかにものすごくうるさかったかなぁ?
まあ、俺は悪いことをしたわけじゃないから、多分怒られないだろう。
「すごいじゃないか博人! 一日でこんなに再生数が取れるなんて大手の人と同じくらいの再生数じゃないか!」
そう言いながら、父親は思いっきり抱き付いてきてくれた。
おおげさだなぁ……30万再生くらい大手の人なら簡単に超えられてるよ……
父親の反応があまりにも大げさだったので、もう一回そこを見てみるとさっきよりも数字が跳ね上がっていた。
「再生数500万回、チャンネル登録者数100万人?!」
確かに、最近の大手の人たちとあまり変わらない数字じゃないか?
なんだろう……ここまで数字が大きいとよくわからなくなってきてしまった。
まさか適当にアップした動画がここまで伸びるなんて……。
そう思って感心していると、父親が思い出したかのように話しかけてきた。
「そういえば、部屋にこもって何やってたんだ?」
「あっ、作曲してたの忘れてた!」
それを思い出した俺は、直ぐにスマホをしまって部屋にこもった。
とりあえず、今日中に一曲は作りたいんだ……!
それから一週間。
俺はひたすら作曲をして、依頼されたものをすべて納品できた。
後は口座に金を振り込んでもらうだけ……!
そうすれば俺はちょっとしたお金持ちだ!
だけれども、やはり家にいてばかりだと退屈だし、何よりも息抜きがなかったのえ学校へ向かった。
振り込まれたお金で何をしようか考えながら登校していると、後ろから声をかけられた。
「川崎君、お仕事お疲れさま~!」
その声の持ち主は平井さんだった。
「ありがとう、毎日朝から晩までパソコンとにらめっこだったけどね。何とか終わらせられたよ!」
「そう言いながら、本当は遊んでたんじゃないの?」
「違うよ、作曲してたし……後、たまに動画作ってたり……」
そんな話をしていると、もう校門の前についてしまった。
久しぶりの学校だな……っ!?
これからのことにちょっと期待をしていたのだけれど、玄関の前に宮口がいた。
あの玄関以外からは行内には入ることはできないので、どうしてもそこは通らなければいけない。
しかたがない、できるだけ相手のことに気が付いていないふりをしよう。
それに、俺を待ち伏せしていると決まったわけではないし……。
そいう自分に言い聞かせながら校門をくぐった。
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